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“多国籍化”が進む韓国Kリーグに日本人選手はどれだけいるのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
今季から釜山アイパークに所属している安田理大(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

韓国でもサッカー・新シーズンが到来している。Kリーグは現在、1部リーグに相当するクラシックと2部リーグに相当するチャレンジの1部・2部構成で、クラシックは12チームで構成されており、開幕節となった3月4日と5日の2日間6試合で、9万8353名の観客を動員に成功。開幕戦の観客動員数としては最多記録更新(これまでは2015年の8万3871名)となるが、個人的にちょっぴり残念なのはKリーグでプレーする日本人選手が少なくなってしまったことだ。

■Kリーグ・クラシック外国人選手国別分布を調べてると

昨季開幕時は4人の日本人選手がKリーグでプレーしていた。蔚山現代には元鹿島アントラーズの増田誓志がいたし、リーグ優勝したFCソウルには高萩洋次郎が活躍していた。

(参考記事:日本人Kリーガー高萩洋次郎が語る「日本と韓国の違い」)

しかし、増田誓志は今年1月に中東UAEのアル・シャールジャに移籍。高萩洋次郎は1月25日にFC東京に移籍してしまったことで、日本人選手が少なくなってしまった。昨季Kリーグでプレーした日本人選手で今季もKリーグに残ったのは、ヴィッセル神戸ジュニアユース出身で昨季から光州FCに所属している和田倫季だけなのだ。

和田倫季の昨季成績は5試合に出場したのみ。韓国のサッカー専門誌『FourFourTwo KOREA』が実施した「Kリーグ外国人選手格付け評価」でも、「URGENT(活躍至急)」ともっとも低い評価を下された。今季はKリーグ3年目を迎えるが、まさに正念場だろう。

ちなみに今季Kリーグ・クラシックの外国人選手国別分布をみると、ブラジル勢がもっとも多い18名。それに続くのがクロアチアとオーストラリアで、それぞれ5名ずつとなっているが、そのほかはスペイン、スウェーデン、ハンガリー、ポルトガル、キプロス、オーストリア、セルビア、モンテネグロ、イラク、ベトナム、東ティモール、ニジェール、ギニアビサウが1名ずつ。

まさにKリーグでは「多国籍化」が進んでいるが、日本が1名のみになってしまったのは、ちょっぴり残念だ。

もっとも、Kリーグ・チャレンジでは新たな日本人選手が韓国挑戦を始めている。ひとりはソウルEランドFCの和田篤紀。前出した和田倫季の実の兄だ。

和田篤紀と和田倫季は、ヴィッセル神戸や京都サンガを指揮した和田昌裕の息子だが、韓国では「和田兄弟、Kリーグに挑む」(『イルガン・スポーツ』)という見出しで記事にもなっている。

■安田理大、ついにKリーグ・デビュー

もうひとりは安田理大。ガンバ大阪などで活躍し、2007年にはナビスコカップのニューヒーロー賞とMVPをダブル受賞、日本代表歴もある安田のKリーグ入りは現地メディアも、「日本代表出身DF安田、Kリーグ入り」(『スポータル・コリア』)、「Kリーグ釜山、日本リーグカップMVPの安田を獲得」(『MKスポーツ』)と報じている。

安田が入団したのは釜山アイパーク。今はチャレンジ・リーグに甘んじているが、その前身となる釜山大宇(プサン・デウ)ロイヤルズは、80年代にはアジアクラブ選手権を制し、90年代にはKリーグ史上初の3冠を達成した名門クラブである。今やすっかりタレント化してしまったあのアン・ジョンファンも、所属していた。

そんな名門クラブがクラシック昇格を目指して獲得したのが安田だが、釜山は近年、なかなか思うような結果を得られていない。昨季は元大宮アルディージャの渡邉大剛を獲得したが、彼はわずか数か月で釜山を離れてしまった(現在はJ2のカマタマーレ讃岐に所属している)。

Kリーグでの生活はわずかな期間だったが、日本と韓国の違いに戸惑いもあったのだろう。実際、本人もそれを認めている。

(参考記事:日本人Kリーガー渡邉大剛が見て感じた“日韓サッカーの決定的な違い”)

そんな釜山で安田がどんな活躍を見せるか。3月11日のチャレンジ第2節・安山(アンサン)戦でKリーグ・デビューを飾った安田には、日本人Kリーガーが少なくなっているだけに、経験豊富なベテランとしてぜひともその存在感を示してほしい。Kリーグにおける“日本人選手の価値”を高めてもらいたい。

振り返れば過去にKリーグでは、海本幸治郎(東京ヴェルディ)が2001~2003年に城南一和(現・城南FC)、前園真聖が2003年に安養LG(現・FCソウル)、2004年に仁川ユナイテッドでプレー。アジア枠が導入された2009年には戸田和幸が慶南FC、大橋正博が江原FC、岡山一成が浦項スティーラーズでプレーし、2010年には高原直泰が水原三星で活躍した。2011年には馬場優太が大田シチズンで、2012年は家長昭博(蔚山現代)、島田裕介(江原FC)、エスクデロ競飛王(FCソウル)がKリーグでプレーしている。

そして、そういうった延長上に前出の増田や高萩がいて、今度はその系譜を安田などが紡いでいくのだ。

「私たちがJリーグでプレーしたとき、韓国人選手が日本にもたらした肯定的要素があったように、日本人選手がKリーグでプレーすることによって韓国サッカー界が受ける刺激もあるはずです」とは、ホン・ミョンボ監督がインタビュー時に語っていた言葉だが、日本人選手がKリーグで活躍すれば、“日韓サッカー交流”もより活発化していくことだろう。

(参考記事:洪明甫インタビュー「カリスマが語る日韓中サッカー比較」)

2017年Kリーグ。今年もこの場を借りて、日本人選手の動向などを随時紹介していきたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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