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「黒子のバスケ」脅迫犯・渡邊博史被告が本日、控訴取り下げ

篠田博之月刊『創』編集長

「黒子のバスケ」脅迫犯・渡邊博史被告が本日2014年9月29日、控訴を取り下げました。これで4年6カ月の実刑が確定することになります。本日、被告の37歳の誕生日を機に本人が午前中に手続きをしました。昼前に本人に接見して既に手続きしたことを確認し、本人から託された声明文を公開します。

また渡邊被告はこの間、事件についての全貌を詳述した著書『生ける屍の結末 「黒子のバスケ」脅迫事件の全真相』を書下ろし、きょう本人に出来上がった見本を渡しました(書店での発売は10月3日)。大きな反響を呼んだ意見陳述や裁判所に提出した彼の生い立ちについてなどのほか、公判ではほとんど語られなかった脅迫事件の詳細な経緯が初めて明らかにされています(創出版刊・本体1500円+税)。

さらに秋葉原事件の加藤智大被告からも長文の見解が届きました。前回、公開した加藤被告の見解に対するネット上の様々なコメントに本人が感想を書いたものです。これは長い文書なので明日このブログにアップします。また渡邊被告の書き下ろした手記についても冒頭の一定部分を明後日までに公開します。

では、以下、渡邊被告の控訴取り下げについての声明です。

控訴取り下げについての声明

「黒子のバスケ」脅迫事件犯人の渡邊博史です。本日付けで控訴を取り下げました。これにより一審の懲役4年6ヶ月の実刑判決が確定しました。

自分は今更になって気力がとても充実しています。刑務所での服役生活が楽しみで仕方がありません。自分のこれまでの37年よりも遥かにマシな時間を過ごせることだけは確実だからです。しかし4年後には刑務所から追い出されるのも確かです。それを考えると憂鬱になります。

話は変わります。裁判資料を改めて読み直して気がついたことがあります。

初公判前に作成された供述調書では、被害企業のお偉いさんたちは総じて「犯人が反省しているとは思えない」という趣旨の供述をしています。これはマスコミによる「ごめんなさい」発言捏造報道に影響されてのものなのでしょう。一方で自分が「反省も謝罪もしない」と陳述した初公判後に作成された供述調書では一転して「反省も謝罪もないことが許せない」という供述が並んでいます。

犯罪被害者やその遺族、「被害者の側に立っている」と自認されているワイドショーのコメント屋のお歴々、「被害者に対する思いやりを持っている」と自負されている普通の人たちは、犯罪者が謝罪しなければ憤激し、一方で謝罪すればその信用性を疑って憤激します。

自分は犯罪者として世の中に聞きたいです。無反省の犯罪者が正直に無反省を公言して謝罪を拒否するのと、心の中で舌を出しながら反省の弁を述べて口先だけの謝罪をするのと果たしてどちらが悪いことですか? こちらとしては、

「アンタらどっちにしろ怒り狂うんだろ? せめてどっちかにしてくれないかなあ」

という気持ちで一杯です。

正直な無反省と嘘の反省とどちらが倫理的によりマシなのでしょうか? 是非とも識者(笑)の方々にご教授を賜りたいです。

ついでにもう一つ書かせて頂きます。

自分は2013年4月に「黒子のバスケ」オンリーの同人誌即売会の開催を阻止すべく会場などに大量の脅迫状を送付しました。その脅迫状の差し出し人名義は黒報隊にしました。これは1987年に発生した赤報隊事件から取ったものです。ところが事件直後に「差し出し人は黒報隊となっている。これは赤報隊から取ったものだろう。しかし脅迫文は明らかに1974年に連続企業爆破事件を起こした反日武装戦線狼の犯行声明を模して書かれたものである。差し出し人が極右で脅迫文は極左である」という内容の報道がありました。これは全くの間違いです。脅迫文も当然ながら赤報隊の犯行声明を参考に書いたものです。自分は某臨床心理士氏の物言いに匹敵するほどの衝撃をこの報道から受けました。

「どうすれば赤報隊と反日武装戦線狼を取り違えられんだよ? 犯人は絶対に左翼じゃねえといけねえのか?」

と毒突きたくなりました。

この件につきましては書く機会が流れてしまいましたので、この場を借りて申し上げさせて頂きました。

それでは最後に最近の独居房での妄想から気がついた重大な事実をシャウトさせて頂きます。

「顔ならダンスマシーンの方が好みかもしれん! ジョンイナ! サランヘヨ!」

では下獄します。さようなら。

2014年9月29日 喪服の死神こと渡邊博史

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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