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『ふかひれスープ』販売中止運動に対する無印良品の毅然とした反論が素晴らしい

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門
株式会社良品計画によるプレスリリース

無印良品が販売している『ごはんにかける ふかひれスープ』への販売中止運動に対して、運営会社の良品計画が6月7日に発表した反論が素晴らしかったので紹介します。

良品計画|ニュースリリース(2013年6月7日)

販売中止運動は2013年3月ごろよりインターネット上で行われ始めたもので、「ふかひれスープの材料に使用しているヨシキリザメは準絶滅危惧種であり、フカヒレ目的にヨシキリザメを殺してはいけない」と訴えています。

キャンペーン | 無印良品:本物の人と環境にやさしい企業へ “フカヒレスープの販売を中止して下さい!” | Change.org

上記署名サイトには「フカヒレスープの需要により殺害されるサメの数は年間1億匹にのぼり、このままでは20年以内にすべてのサメが海から姿を消してしまう可能性がある」と中止を求める理由が書いてあります。

たしかに、一見すると準絶滅危惧種を獲るのは良くないことであり、サメをフカヒレ目的に殺すのはやめるべきだと思ってしまうのですが、これに対する無印良品の反論はそれが事実とは全く異なるものだと納得させてくれる素晴らしいものでした。

この気仙沼港で水揚げされるヨシキリザメは、主にマグロ延縄漁の‘混獲魚’として水揚げされたものであり、その混獲されたサメは水揚げされたのち、その身は各種練り物製品へ、また軟骨は健康食品、皮革は工芸品等にと、さまざまなものへ利用されています。このことは、弊社商品開発担当者が現地の港にて、サメの水揚げから加工までの工程を実地検分にて確認が済んでおります。すなわち、弊社製品に使用されているふかひれの入手方法は、一部の地域で行われているようなFinning(ヒレだけを取るためにサメを殺戮し、その他の部分は海上で投棄する)によるものとは明らかに一線を画す手法であり、同一視されるべきものでもありません。

出典:良品計画|ニュースリリース

無印良品の反論によると、同社のふかひれスープに使用しているヨシキリザメはマグロ延縄漁の仕掛けに引っかかるなどして意図せず漁獲されてしまうものであり、サメ自体を目的として獲っているものではないとのことです。つまり、販売を中止しようがしまいが消費者がマグロを食べるのをやめないかぎりサメは獲れ続けてしまうわけです。

また、そうして獲れたサメはフカヒレだけではなく、身はかまぼこやはんぺんなどの練り物製品、軟骨は健康食品、皮革は工芸品など多くのものに利用されており、決してフカヒレだけを獲って捨ててしまうわけではないそうです。

これを読んだとき、ボクは捕鯨問題のことが頭に浮かびました。欧米は18世紀ごろから油だけを目的としたクジラの乱獲を行い、結果として特定のクジラを絶滅寸前まで追い込みましたが、日本では「クジラは捨てるところがない」と言われるほど肉はもちろん、内臓、ヒゲ、骨までも利用し、大切な海の資源として共存してきました。

海外ではフカヒレを切り取ったあとサメを捨てるような“もったいない”漁、Finningが行われているところもあるのでしょうが、少なくとも気仙沼港で行われているサメ漁はそれらとは違うわけです。

Finningに対して「こんなひどいことはやめさせなければ」と思うのは素晴らしいことですが、事実と違うのであれば無印良品に抗議するのは矛先が違うでしょう。

サケやアユ、ウナギも準絶滅危惧種

また、ヨシキリザメが国際自然保護連合(IUCN)の準絶滅危惧種であるという指摘に対しては、無印良品は保全状況の評価リストにおいて低リスクに位置していることを表で分かりやすく説明しています。

無印良品プレスリリース内の表
無印良品プレスリリース内の表

準絶滅危惧種と聞くと「保護しなければ」と言う気持ちになりますが、調べてみたところ日本で準絶滅危惧種に指定されてる魚類にはハゼ、サケ、アユ、ウナギ、サクラマス、ドジョウなど普段ボクらが食べている魚も多く含まれています。

日本のレッドデータ検索システム

また、準絶滅危惧種とは環境省のウェブサイトによると次のような意味なのだそうです。

準絶滅危惧 (NT) 現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種

出典:絶滅危惧種情報

絶滅の可能性のある種に対して保護を訴えることが間違っているとは言いませんが、だからといってマグロ漁業の副産物として獲れてしまうサメを材料として利用するなと訴えるのはおかしいのではないでしょうか。

なお、この反論に対して相手側は聞く耳を持たない模様です。

私たちの署名運動はフカヒレ漁(finning)の残酷性・生産性の低さではなく、常にサメの個体数減少という点に言及しているのです。

出典:[BREAKING NEWS] 無印良品が私たちのキャンペーンについて声明文を発表しました... - Amazing Oceans Japan

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。スマホ、ネットの話題や炎上などが専門。ファクトチェック団体『インファクト』編集員としてデマの検証も行っています。最近はYouTubeでの活動も。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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