【川内原発】避難計画を病院等に丸投げ、酷すぎる「再稼働ありき」の鹿児島県、原子力規制委の怠慢
今月16日、原子力規制委員会は、九州電力による川内原発の再稼働申請に対して、「新規制基準に適合している」として、事実上の「合格証」を与えた。だが、川内原発直下の活断層疑惑、日本中の火山学者が懸念する火砕流リスクなど、解決していない問題は山積み。中でも、周辺住民が危惧するのは、いざ原発事故が起きた際の避難計画が全く不十分であることだ。
原発事故が起きた際、住民を安全なところに避難させるのは、当初、原発再稼働の要件とされていた。ところが、いつのまにか、避難計画が不十分のまま、再稼働だけがゴリ押しされている。川内原発でも避難計画の不十分さが問題となっている。「原子力規制を監視する会」の阪上武氏は、鹿児島県の避難計画について、こう指摘する。
「今年6月13日、伊藤祐一郎知事は、川内原発の重大事故を想定した10~30キロ圏の老人や身体障がい者などの要援護者の避難計画に関し『作らない』『どうせ実現性はない』等と発言。当初、要援護者の避難は優先的に行われるとされましたが、実際には後回し。本来は自治体が策定するはずの避難計画を鹿児島県では、病院や介護施設に押し付け、避難後、県に報告するということにされている。つまり、丸投げした上、原発再稼働の前提条件にもなっていないということなのです。さらに、通知の表現がわかり辛く、病院や介護施設の管理者も自分たちが避難計画を立てないといけないということを把握していなかった、という事例も多々有ります」。
阪上氏と共に鹿児島県を訪れ、社会福祉施設への聞き取り調査を行ったFoE ジャパンの満田夏花氏も「当事者達だけでは、避難は無理」と語る。
「現地の病院・福祉施設の責任者らに聞くと、30人規模の避難でも受け入れ先を見つけるのは難しいし、身障者用の車も全く足らない。ピストン輸送するにしても、いったん避難先に行った車両が、避難指示がでている区域に帰ってくることができるのか疑問です。また、通いの利用者は自宅に送り届けるということにされていますが、家が原発に近かったり、頼れる家族がいなかったりと、人道的に無理というケースが少なくないそうです」(満田氏)。
原発事故の様な非常時にこそ、社会的弱者への救済が必要にもかかわらず、結局は、病院や社会福祉施設にまる投げ。こうしたお粗末な避難計画に原子力規制委は問題視せず、再稼働に「合格証」を出した。事故から3年以上たってなお、12万人以上が、避難生活を余儀なくされている、福島での悲劇がまるで生かされていない状況なのだ。
- 写真提供 FoE Japan 満田夏花さん