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【ガザ侵攻現地ルポ】「イスラエル軍撤退」報道の裏で地獄と化すガザ南部ー17人中12人死亡の家族も

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

イスラエル政府は、3日、「地上軍をガザとイスラエルとの境界まで引き下げた」、と発表。だが、ガザ南部ラファでは、凄まじい攻撃が繰り返され、筆者も近づくに近づけない状況であった。ラファに近いハンユニスの病院には、次から次へと負傷した人々が運び込まれてきた。

ラファから搬送されたマフムードくん(奥)とハニンちゃん(手前)。
ラファから搬送されたマフムードくん(奥)とハニンちゃん(手前)。

ガザ南部の街ハンユニス。イスラエル政府の「地上軍撤退」報道とは裏腹に、この街のナセル病院には、隣町のラファからの負傷者が緊急搬送されてくる。写真の少年マフムード・アルグーリくん(10歳)と、ハニン・アルグーリちゃん(4歳)は、3日の朝、イスラエル軍の攻撃を自宅に受け、緊急搬送されてきた。中東の家庭は往々にして大家族であるが、アルグーリ家は17人の内、マフムードくんら3人が負傷、彼らの両親や祖父母など12人が死亡、2人が行方不明、と悲惨すぎる被害を被った。マフムードくんの親族は、「ラファは地獄そのものだ。雨あられのように砲弾が降り注ぎ、けが人や死人が続出している」と訴える。

「動くものは何でも爆撃される」という状況の中、筆者もまだラファ現地入りできていないが、筆者の通訳の友人である現地の若者と連絡がついた。曰く、「ラファの主要病院であるアブユセフナジャール病院はイスラエル軍から総員移動する様に指示され、閉鎖されてしまった(つまり病院も攻撃範囲になり得るということ)。負傷者は近く民間病院に移送されている。電気は24時間前から寸断されており、電話もほとんど通じない。攻撃される可能性が高いので、救急車も赤十字のコーディネートが無い限り、動くことができない状況。自分も家から出られないのでラファ全体の詳しい状況はわからないが、何人もの隣人が殺された」。さらに、またも国連管理の学校に避難していた人々が攻撃を受けたという。ベイトハヌーン、ジャバリア難民キャンプに続く、3度めの暴挙だ。

イスラエルがもし本当に地上軍をガザから撤退させるなら、それは歓迎すべきことだが、少なくともラファの状況を観るに、イスラエル政府の発表と現地の状況はまるで正反対である。また、他の「境界線付近」の地域でも砲撃や爆撃は続いており、一部日本のメディアで報じられているような、「ハマスだけがロケット弾攻撃を続けている」というのは実態と異なる。

現地の知人に、「イスラエルは本当に軍を撤退させると思うか?」と聞くと、知人は顔をしかめ、こう答えた。「どうせ、国際社会に向けたポーズに決まっている。今までの『停戦』でもイスラエルが砲撃や爆撃を止めたことなんてなかった」。

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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