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拉致問題、TPP、ガソリン代…マスコミが報じない安倍首相の辞任級スキャンダル

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
安倍首相の胸には拉致被害者救出を求めるブルーリボンバッジがつけられているが…(写真:Motoo Naka/アフロ)

マスコミが報じない安倍首相のスキャンダルがネット上でいくつも話題となっている。拉致問題をめぐり、「私の言っていることが違うなら辞任する」と啖呵を切ったが、やはりウソをついていた疑惑や、「TPPに反対したことはない」という発言にまつわる矛盾、民進党の山尾志桜里議員の倍以上の地球13周分のガソリン代疑惑、だ。

〇安倍首相「バッジをかける」発言に疑惑―自民党市議のブログから発覚

2002年10月、拉致被害者5人が「一時帰国」した際、当時、官房副長官だった安倍首相が「帰国した被害者5人を、北朝鮮に戻さないように体を張って必死に止めた」というのはウソ―「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(家族会)元副代表の蓮池透さんが、その著書『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(講談社)で指摘した問題は、国会でも追及された。これに対し、安倍首相は激昂、今年1月12日の衆院予算委員会で「ウソはついていない」「私の言っていることが違っていたら国会議員を辞める」に言ってのけたのだった。

「私は、この問題について、利用したことも、うそをついたこともございません。ここに平沢議員がおられますが、当時は、この五人の被害者を北朝鮮に戻すということがいわば流れだったんですよ、実際。流れだったわけでありますが、私は断固として反対をしました。当時、平沢さんも反対をいたしました」

「私が申し上げていることが真実であるということは、バッジをかけて申し上げます。私の言っていることが違っていたら私はやめますよ、国会議員をやめますよ。それははっきりと申し上げておきたいと思います」

出典:平成28年01月12日 衆議院予算委員会

ところが、安倍首相は当初、「とにかく一度北朝鮮に戻って、子供を連れて帰国するべきだ」と主張していた、つまり上記の国会答弁と矛盾するということが、自民党札幌市議・勝木勇人氏の過去のブログの記述から発掘され、追及記事動画がネット上で拡散されているのである。勝木氏は2003年1月30日のブログで、安倍首相から聞いた話として、以下のように書いている。

拉致被害者の話になり、地村さんたちには、最初、「とにかく一度北朝鮮に戻って、子供を連れて帰国するべきだ」という話をしたそうです。しかし、地村さんたちは、この申し入れを断固拒否したそうです。「一度、戻ったら、二度と帰国はできない」ということだったそうです。「私(安倍)他、政府の人間がたくさん同行すれば、変なことにはならないでしょう」と言うと、「みんなで一緒に行っても、突然銃をもった者が部屋に入って来て、我々を引き離そうとしたら、どうしますか? 安倍さんたちは、その場で何ができますか?自衛隊も一緒に行ってくれるなら話は別ですが、」と言われ、結局、彼らの言うとおりにしたそうです。

出典:勝木勇人氏のブログ

現在、上記の部分は勝木氏のブログから削除されているが、ネットユーザーらによってウェブ魚拓で問題の部分は保存されており、前出の「家族会」元代表の蓮池さんも「やっぱり」と、これらの投稿を自身のフェイスブックでシェアしている。安倍首相は、蓮池さんのことを陰謀論者呼ばわりした上、上記のように「自らがウソをついているならば、議員辞職する」と息巻いたのだが、そこまで言ったのならば、その責任を取るべきではないだろうか。

〇TPPをめぐる発言でもウソ

安倍首相の信頼性を疑うべき発言は他にもある。今月7日、衆院TPP特別委員会で民進党の柿沢未途議員の質問に対し、安倍首相は「私自身はTPP断固反対と言ったことは一回も、ただの一回もございませんから、まるで私が言ったかのごとくの発言は謹んで貰いたい」と答弁した。だが、平成25年2月23日、安倍首相は記者会見で以下のように発言している。

画像

平成25年2月23日 内外記者会見

http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/naigai.html

これだけでも、少なくとも、「TPP反対と言ったことは、ただの一度もない」というのは、無理があるだろう。自民党のポスターでも、過去「TPP断固反対」と書いていた。生活の党の山本太郎参議院議員もこのポスターを今月3日のNHKの日曜討論で紹介。「自民党は毎日エイプリルフール」と批判した。

〇安倍首相も、地球13周分のガソリン代を請求

安倍首相の「天敵」山尾志桜里・民進党政調会長が長を務める「民主党愛知県第7区総支部」ガソリン代計上問題で、攻勢を強める自民党だが、一方で安倍首相が代表を務める「自民党山口県第4選挙区支部」も2011年から2014年にかけ、500万円から600万円近くものガソリン代を計上していたことを、今月6日、日刊ゲンダイが報じた。同紙が自民党山口県第4選挙区支部収支報告書をもとに調査したところ、2011年と2012年分のガソリン代は、地球13周分に匹敵するものだったのだという。山尾議員のガソリン代計上問題を報じた週刊新潮も、今月7日発売の同誌で、菅義偉官房長官のガソリン代を追及。さらに安倍首相のガソリン代にも「注目している」という。

〇マスメディアは追及を

これらの一連の問題は、以前ならば、マスコミも連日、テレビ等で追及するような爆弾ネタである。ところが、高市総務大臣の「停波」発言に象徴されるような、安倍政権の露骨なメディアへのけん制もあってか、ネットや週刊誌、夕刊紙での追及にくらべ、あまりに大人しい。テレビの昨今の及び腰について、民放キー局の関係者は「とにかく、必要以上に『バランス』をとることに、報道局上層部は神経を尖らしている。自民党だけを批判することは難しい状況です」と、筆者に話してくれたが、追及すべき問題を追及することは、「政治的公平性」とは別問題だ。むしろ、追及すべきことをしないならば、それこそ「政治的公平性」が失われる。マスコミ関係者らは、安倍政権のウソやスキャンダルについて、大いに追及すべきである。

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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