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懲りない都民とマスコミ―都知事選で問われない「政治とカネ」、二度あることは三度ある?

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
優勢が伝えられる小池氏にも一部報道で「政治とカネ」の疑惑が…(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

今週末31日に迫った都知事選。報道もそれなりに多いが、ここにきて、やはりマスコミの弱腰ぶりが目立つ。また都民ももっと学習すべきじゃないか、と思わざるを得ない。都知事選でもっとも問われるべきテーマは「政治とカネ」だろう。この間、猪瀬直樹元都知事、舛添要一前都知事ともに任期を終えることなく、贈収賄疑惑や政治資金の公私混同などの金銭スキャンダルで、辞任してきた。都知事選には、一回あたり約50億円もの費用がかかるという。二度も立て続けで都知事が「政治とカネ」で辞任したというのに、候補者へのマスコミの追及はあまりに甘いのではないか。

二度あることは、三度ある―猪瀬氏、舛添氏に続いて、次の都知事も「政治とカネ」の問題で追及されるかもしれない。現在、マスコミ各社で優勢が報じられる小池百合子元防衛相だが、週刊誌や夕刊紙で、早くも金銭スキャンダルが報じられている。例えば、今月6日付けの週刊文春では、政治資金パーティーをめぐる疑惑をスクープしている。同記事によると、2012年3月と6月に行われた小池氏の政治資金パーティーについて、小池氏の収支報告書の収入欄に、2つのパーティの記載はなく、政治資金規正法違反の不記載であるというのだ。

都知事候補、小池百合子氏に新たな政治資金疑惑

http://shukan.bunshun.jp/articles/-/6330

日刊ゲンダイも、小池氏の政治資金疑惑について報じている。それによると、小池氏が代表を務める「自由民主党東京都第十選挙区支部」の収支報告書には、「不可解な領収書が山のようにある」「宛名もただし書きも『空白』の領収書がザラ」だと追及している。記事中にも指摘があるように、これは舛添前都知事がやっていたことに酷似する。

小池百合子氏の政治資金 使い道はあの“号泣県議”ソックリ

http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/186204

日刊ゲンダイはさらに小池氏の「裏金づくり」疑惑も抉り出している。その記事によると、実態不明の会社に「調査費」として約210万円を支出していたというのだ。

小池百合子氏「裏金疑惑」 都議補選に出馬“元秘書”の正体

http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/186324/1

こうした報道が事実と異なるのであれば、小池氏側は反論すれば良いのだが、今のところ小池陣営はダンマリ。小池氏の都知事選の特設ページを見ても、これらの批判記事への反論は掲載されていない。また、名誉棄損で週刊文春や日刊ゲンダイを訴えるということもしていない。

これらの週刊誌や夕刊紙の「スクープ」に、マスコミ各社が後追いで報道をする気配がないことのは、いかにも怠慢だ。傍目に見て少し気の毒になってしまうほど、舛添氏の政治資金の公私混同をあれだけ問い詰めたマスコミが、今回の都知事選では、「政治とカネ」を争点にすらしない。都民も、都民だ。二度も都知事が任期中に金銭スキャンダルで辞任したというのに、マスコミが争点にしなければ、「政治とカネ」を意識しない。結局のところ、政治家がだらしないのは、マスメディアや有権者がだらしないからである。舛添氏が都知事になったばかりの頃、筆者は「舛添氏は任期を終えることはないだろう。金銭スキャンダルでその地位を追われることになるだろう」と指摘(関連記事)、実際その通りになったが、今回も「二度あることは三度ある」ということにならないことを願うばかりだ。

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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