強大化する台風に直面する日本―史上最も暑い世界平均気温が影響か
台風9号、10号、11号が、3つほぼ同時に日本を襲っている。気象庁によると、台風が連続発生した原因は、フィリピン東側の海域での水温が例年に比べ高く、大量の水蒸気により台風が発生しやすくなったからだという。世界全体の平均気温も関係あるのだろう。米海洋大気局は、今年7月の世界の平均気温は陸上・海上とも「観測史上最も暑い一ヶ月だった」と、今月17日に発表している。昨年も「過去最高」とされた地球の平均気温だが、それを更新するかたちとなった。地球温暖化は進行しており、日本も含め、今後ますます、激しい気象災害に見舞われる可能性が高い。
◯激化する台風、大雨の被害
温暖化の進行で、懸念されるのは、台風や大雨の被害増大だ。気候変動リスクに詳しい、鬼頭昭雄・筑波大学生命環境系主幹研究員に、以前、筆者がインタビューした際、鬼頭氏はこう指摘していた。「気温が1度上がると7%水蒸気が増えます。大気中の水蒸気が増えることが、大雨の原因であり、台風を生むエネルギー源となります」。実際、アメダスが導入されてから現在までの40年間のデータでも、「1時間の降水量が80mm以上の強い雨が有意に増加している」(鬼頭氏)という。今後、強大化していくであろう、台風の脅威は、大雨だけではない。温暖化が進行すると、風速67メートルを超える、いわゆる「スーパー台風」が発生しやすくなると予測されている。名古屋大や気象庁気象研究所などの研究グループが2009年に発表した報告によると、このまま温暖化が進行した場合、今世紀後半には、スーパー台風が日本を襲うようになり、風速は最大で、88メートルに達するという。これがどれくらい強いものであるかというと、木造の住宅が破壊され、車が数十メートルも飛んだり、列車が脱線するほどのレベルだ。割れた窓ガラスなどが、ミサイルのような勢いで飛び交い、人々を死傷させることになる。台風によって気圧が下がることで、海水面が膨張、さらに強風で煽られることによって、発生する高潮も甚大な被害をもたらすだろう。伊勢湾台風(1959年)では、死者・行方不明者数は5,098名に及んだが、その被害の83%は高潮によるものだった。
◯温暖化対策は急務
温暖化は確実に進行しつつあり、放置すれば人類の存亡も左右する大問題だ(関連記事)。最大の温室効果ガス排出国は中国と米国だが、これらの国々に温室効果ガス排出削減を働きかけるためにも、日本が自らの襟を正す必要がある。今年4月に公表された2014年度の温暖化ガス排出量では、基準年となる1990年に比べ、日本の排出量は7.3%増加してしまっている。日本の排出量の中でも、3割以上を占めるのが電力会社であるが、石油、天然ガスに比べてもCO2排出量の多い石炭火力発電を削減し、太陽光や風力、地熱などの自然エネルギーをこれまで以上に推進していくべきだろう。日本では温暖化対策への人々の興味関心は低下し、政治家達の熱意もあまりないのが実情だが、温暖化による災害は、人々の感心に関係なく、現実として迫ってくる。もっと危機感を持つべきだろう。