安倍トランプ会談で世界にさらした恥―ドイツ・メルケル首相が見せた格の違い
安倍晋三首相は、次期米国大統領とされるドナルド・トランプ氏と、本日の朝(日本時間)に会談した。日本の政治史から観ても、首相がまだ就任もしていない次期大統領に会うことは異例だが、そもそも、移民やイスラム教徒の追放や温暖化対策の世界的な枠組みであるパリ協定からの脱退など、その発言が物議を醸しているトランプ氏に、先進国のリーダー達はやや距離を置いて様子を見ている。そんな中、真っ先にトランプ氏に会い、握手して「トランプ氏は信頼できるリーダーだ」とまで言った安倍首相は、いかがなものか。
〇安倍首相は独裁者がお好き
90分間に及んだ安倍トランプ会談はトランプ氏がまだ大統領就任前なため(会談後の会見で安倍首相は「トランプ大統領」と連呼していたが)、その内容の詳細は明らかにされていない。だが、世界のメディアは、安倍首相がトランプ氏とにこやかに握手し、「彼は信頼できるリーダーだ」発言したことを大きく報じた。これまで、トランプ氏の勝利を大歓迎したのは、フランスのマリー・ルペン国民戦線党首など極右政党のリーダー達で、先進諸国の首脳たちは形式的な祝辞は送ったものの、大統領選前は名指しでトランプ氏を批判していた。そんな中、安倍トランプ会談は世界の人々の目にどのように映ったのだろうか。興味深いのは、米大手テレビネットワークのCNNが紹介したコメントだ。アジア研究が専門のジェフリー・キングストン教授(テンプル大学)は、次のように述べたという。
キングストン教授や彼のコメントを取り上げたCNNは、痛烈に安倍トランプ会談を批判した、と読むべきだろう。
〇安倍首相の軽薄、メルケル・ドイツ首相の威厳と自負
こうした軽薄さが目立つ安倍首相に対し、正反対の、国際的なリーダーの一角としての威厳と自負に満ちた姿勢を示したのが、ドイツのアンゲラ・メルケル首相だ。大統領選後のコメントで、メルケル首相は次のように述べている。
つまり、差別的で人権を軽視するような姿勢を、大統領になった後も続けるのであればトランプ氏には協力しないと、メルケル首相は強くクギを刺したのだ。また、メルケル首相は、米国とドイツが取り組むべき、大きな課題の一つとして「気候変動(地球温暖化)への対策」を上げた。これも、トランプ氏が地球温暖化対策の国際的な枠組みであるパリ協定からの脱退を公言していることへのけん制であろう。
〇似たような状況と、異なる「格」
米国の圧倒的な軍事力をアテにしたいのは、中国を潜在的な脅威とする安倍政権と、ロシアを潜在的な脅威とするメルケル政権も状況的には似ている。だが、両者の間で、決定的に違うのは、人権や地球環境といった、普遍的な価値感を堅持するか否か、という姿勢の明確さだろう。その点において、安倍首相はトランプ氏との会談で世界に恥をさらし、メルケル首相はリーダーとしての格の違いを見せつけた、と言える。
(了)