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「ラスト五輪」に挑む世界最速の男

林壮一ノンフィクションライター
五輪で6つの金を獲得。人類最速は、間もなく自身最後のオリンピックへ向かう。(写真:ロイター/アフロ)

アディダスの創立者であった実弟と訣別し、立ち上がった社がPUMAである。旧西ドイツのサッカー代表、ブンデスリーグをサポートしながら巨大産業になっていったAdidasに対し、後発のPUMAは、超一流選手に絞って契約を結んだ。

サッカー界だけでも、ペレ、クライフ(先日他界された。ご冥福をお祈りします)、ケンペス、マラドーナ…と"超一流"にどこまでも拘った。

そして、今、PUMAの代名詞となっているのがウサイン・ボルト(29)である。

プーマ社社員は言う。

「ボルト選手のスパイクに関する一番の拘りは、フィッティングです。非常に細かい感覚ですね。そのため、足型を取り、フィッティングの要望に応えて改良を加えた木型を使用しています。アッパーに使用する素材は、素材メーカーから特別にボルト選手のためのオリジナル素材を提供いただいたものです。

シーズン中でも、ボルト選手のコンディションによって、フィッティングの要望が変わるので、コンディションに応じたいくつかの素材を使い分けています。

リオに向けてもさらにフィッティングに改良を加えつつ、またボルト選手にふさわしいインパクトのあるスパイクを準備しています」

世界最速の男とPUMAの契約は、ボルトがまだジュニアの選手だった2003年に交わされた。以来、彼は10年以上、プーマのスパイクを愛用している。

日本人がボルトに強い関心を持ったのは、2008年の北京オリンピックであろう。彼は世界記録をマーク。そして、同記録を自ら更新した2009年ベルリンの世界陸上でも大きな話題となる。

日本各地の小学校の運動会では、勝利した後、"ボルトポーズ"をする児童が増えた。

「ベルリンでボルト選手が着用していたスパイクと同じカラーリングのスニーカーは、当時あっという間に売り切れるほどの話題となりました。日本におけるボルト選手の認知度は非常に高いですが、彼がどこのブランドと契約をしているかという点では、プーマだとご存知でない方がまだ多いのも事実です」

人類最速の男が、リオでPUMAのように走り抜ける様、そして彼を支えるスパイクにも注目だ。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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