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被災地で出会ったサッカー少年の夢

林壮一ノンフィクションライター
熊本県上益城郡益城町

「野田裕喜選手みたいになりたい! プロになりたい!」

熊本県上益城郡益城町。なぜ、私がこの地に関する文を書くかは、説明する必要もないだろう。

何箇所か避難所を回りながら、ボールを追いかける少年たちに出会った。写真の家から徒歩10分の場所にある、総合体育館の陸上競技場で、数名の小学生がサッカーをしていた。

避難所生活で心身ともに疲れているであろうに、彼らからは強い生命力を感じた。

地元のクラブチームに所属する小5の男児たちのアイドルは、ガンバ大阪の背番号32、野田裕喜だった。野田は熊本県上益城郡益城町の出身で、彼らの憧れだ。U19日本代表選手である。

「ここでは、超有名人。皆で応援してるんだよ。僕もあんな風になりたい!」

シュート練習を繰り返していた少年は、ロアッソ熊本の下部組織に行くか、地元の強豪で野田の母校でもある大津高等学校で活躍してプロを目指すと言った。

キラキラした彼の眼差しに、こちらが元気をもらった。

野田裕喜は、高校2年でロアッソ熊本の指定選手となり、プロでビューを果たしている。高校卒業後、ガンバ入りした。181センチのセンターバック。身体能力を生かした魂のプレーで、故郷を勇気付けてもらいたい。

そして、月並みではあるが…被災された方々が笑顔になることを祈る。

「私だけじゃない。誰もが辛いんです。へこんだり、落ち込んだりする暇も無い。無事だったことを感謝したい。皆で乗り越えないと…」というタクシードライバーの言葉が印象的だった。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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