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「サッカー史上、最高の男」の物語

林壮一ノンフィクションライター
世界中の選手が背番号10に憧れるようになったのは、彼がいたからだ(写真:岡沢克郎/アフロ)

1375ゲームに出場し、1283得点を挙げたサッカー史上最高の男、ペレ。

ワールドカップで優勝すること3度。彼の存在が無ければ、ブラジルサッカーは、ここまで傑出したものにはならなかったであろう。背番号10に誰もが憧れるようになったのも、ペレがいたからこそだ。

そんな「ペレ物語」が映画化され、本日より公開される。『ペレ 伝説の誕生』。

本人もちょっと出演しているが、役者たちの演技で制作されている。それも、ブラジルの母国語であるポルトガル語ではなく、英語で。

ボールもスパイクも買えず、スラムを裸足で走り回っていた少年、ペレ。元選手だった父は、大成できず、誰もが嫌がる仕事に就き、糊口を凌いでいた。ペレもその仕事を手伝うことがあったーーー。

無論、ペレは天賦の才に恵まれていたであろう。が、この作品を目にした折、ペレは才能以上に「もう、こんな暮らしを続けたくない」との思いでボールを蹴り続けていたであろう、と感じた。それこそが、ペレの原動力であったに違いない。

因みにブラジル代表の監督役に抜擢された俳優は、ヴィンセント・ドノフリオ。「Law & Order クリミナル・インテント」で観て以来、彼の演技にはハマっていた。

心に響く作品に仕上がっている。サッカーファンなら、是非、ご覧になることをお薦めする。

栄光の裏にある「孤独」そして、「もがき」が伝わって来る良質の映画だと思う。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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