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クリスティアーノ・ロナウドの新たな可能性

林壮一ノンフィクションライター
Finalでは、プレーでなくピッチ外からチームを引っ張ったクリロナ(写真:aicfoto/アフロ)

EUROが終わった。不利とされながらも12年前の雪辱に燃え、決勝の舞台に立ったポルトガルのキャプテン、クリスティアーノ・ロナウド(31)。

前半25分、左足を負傷し、涙でピッチを去ったエースが、Vの瞬間までサイドラインからチームメイトを鼓舞し続けた姿が印象的だった。

「いいものを見せてもらった。素晴らしいスピリッツ。クリスティアーノ・ロナウドが抜けて、ポルトガルはチームがひとつになったね。クリスティアーノ・ロナウドの為にも、勝つ、という気持ちが一人ひとりから伝わったよ」(イタリア人記者,リビオ・ミネラ)

クリスティアーノ・ロナウドは、延長後半4分に投入され決勝点を決めたFWのエデルに対し「ウイニングゴールを決めるのは、お前だ」と声をかけて、送り出している。エデルは試合後に「強さ、エネルギー、生命力を注入された」と振り返った。

ミネラ記者は言った。「もちろん、自分がゴールして優勝したかっただろうけれど、サイドラインの彼も本当に美しかった。クリスティアーノ・ロナウドは指導者向きではないと思っていたけれど、監督をやらせてもうまくいくと思うね。ジダンみたいにさ、いや、ジダン以上の可能性があるかもしれない」

私も同感だ。

ミネラとの国際電話を切った後、私の脳裏を過ぎったのは次の一文である。

名声とはまるで靄(もや)のようだ。人気もほんの一瞬に過ぎない。財産は羽が生えたように飛んで消えていく。いつまでも人の心に残るのは、選手の人間性だ。

巨匠デイビッド・ハルバスタムが、『The Breaks Of The Game』の中で綴った言葉だ。

ファイナルのクリスティアーノ・ロナウドに、指導者としての可能性を私も感じる。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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