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コロンビアのサッカーと聞いて思い浮かぶもの

林壮一ノンフィクションライター
リオ五輪サッカー  コロンビア代表(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

初戦を落とした五輪日本代表にとって、コロンビアはかなり厳しい相手だ。

コロンビアのサッカーと聞いて、まず思い浮かべるのはアンドレス・エスコバルである。1994年W杯において、コロンビアは1-2で開催国・アメリカに敗れた。このゲームでオウンゴールを献上してしまったエスコバルは、帰国後、銃殺された。それも、3人の男に12発もの弾丸を撃ちこまれての凄惨な死に方であった。

犯人の一人は「オウンゴール、グラシアス!」と吐き捨てたそうだ。

1990年イタリアW杯が終わって間もない頃、FIFAはコロンビアの代表チームやクラブチームが国際試合をする折、必ず、AWAYで試合をするようにと、通達を出している。無論、血を避けるための処置であった。エスコバルの氏は、コロンビアサッカーと暗黒社会との結び付きを世界中に知らしめた。

時代が違うとはいえ、コロンビア代表のユニフォームを纏う選手は、こうした"危険性"を理解したうえでピッチに立つ。

また、A代表の背番号10。レアル・マドリードでも10を背負うハメス・ロドリゲスは、ホルモン療法を受けている。彼が頭角を現した際に、プロサッカー選手だった実父の体型や遺伝子を鑑みると、170cm以上にならないというデータが出た。それでは大成しないと判断した所属チームが費用をもち、ホルモン治療を施して、180cmの体に育て上げたのだ。

才能のある選手には、あらゆる策を試して育成するのがコロンビア流である。

こうしたサバイバルを潜り抜けた格上の相手に対し、サムライブルーはいかなる戦いを挑むのか。不利であることは否めない。ブラジルW杯の二の舞となる可能性もある。

ボクシングの元WBAジュニアミドル級チャンピオン、輪島功一は「負けるにも負け方がある。プロは何を見せられるかだ」と話したことがある。是非、魂のこもった戦いを見せてくれ!

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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