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専門家に訊く。「サッカー日本代表選手の走り方は、このままでいいのか?」

林壮一ノンフィクションライター
専門家曰く「日本代表選手の走り方には、改善の余地がある」(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

イラクに辛勝、オーストラリアにドローと苦戦を強いられているサムライブルー。

日本代表選手の走力に問題は無いのか?

高校3年生にしてロス五輪に出場し、100Mの記録保持者であった不破弘樹氏にTV観戦後、コメントを頂戴した。

「基本的に代表選手の走り方がダメだとは思いません。ただ、足を引き上げてしまっている選手が多い。そこが勿体ないです。岡崎慎司くんの動きを皆が見習えればいいと思いました。陸上の専門家から言うと、動き出しのスピード、“初速”が肝心です。直ぐにボールに追いつかなきゃいけない訳ですから、ボールに向かって直ぐにTOPスピードにならなければいけない。100M走のように、だんだんスピードを上げるなんてことではダメなんです。

岡崎くんの走りは、言ってみれば<省エネ走法>。抜くところは抜いて、全力を出すところは出す走法を身に着けていますね。僕の大学の後輩である杉本龍勇に徹底的に鍛えられていますからね。

初めの3歩くらいで力を出せる走法。股関節周りの使い方で、前に進む走りで、決して地面を蹴らない走り方を理解しています。岡崎くんの場合は、自然にそれができています。足が遅かった岡崎くんを速くしたということは、杉本の教え方がハマったのでしょう。体の中心を動かして1なんですよ。

今回、日本代表戦を見ていて閃いたのですが、海外の選手のように柔らかく速く動いて、技術を駆使できる。TOPスピードで技術を使えているのは岡崎くんだけだったように見えました。彼は、ちょっと力を抜いた状態でのプレーができています。

リオ五輪でレース中にボルトが笑顔で横を向いたでしょう。100%全力じゃなく、ちょっと力を抜いてもTOPスピードのままなんです。フルスピードにのってしまえば、落ちないですからね。サッカー選手も、力を抜いて走りながら高いスキルを出せるようにしたいですね。

浅野拓磨くんは、元々高いポテンシャルを持っていますから、もっと飛び出しの方法を教えてあげたいです。彼も地面を蹴っている部分があります。そこをもっと速く動ければ、更に速くなりますよ。

本田圭佑選手はトレーニング次第で、もっともっと速く走れます。ただ、体の動かし方が分かっていないと思います。足の遅い選手を速くすることって、実は簡単なんです」

岡崎慎司は杉本龍勇コーチの教えを受けて走り方が身に着いた。不破弘樹氏も「サッカー選手を手掛けてみたい。トレーニング法のイメージはある」と語った。かつて、日本最速のスプリンターだった不破氏の言葉に耳を傾けてはどうだろうか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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