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狙え! 日本代表正GKの座を

林壮一ノンフィクションライター
J1昇格か否かは最終戦までもつれた(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

「今の日本代表ですが、ハッキリしないサッカーですよね。香川にしても、本田にしても、所属チームで出ていなければコンディションは上がらないですよ。HOME初戦を落とすとか、ハリル監督自身、予想外の展開だったと思うんです。予選で指揮を執って、気になるところがGKだったということなんじゃないですかね。それで無理やりというか、急遽、GK合宿をを作ったんじゃないかな。ハリルが最初からGK育成に着手していたら、今、彼は代表としてW杯予選に出ているかもしれません」

国学院大学サッカー部ヘッドコーチの白須真介はそう語った。白須が期待を寄せるGKとは、中央大学監督時代の教え子、シュミット・ダニエルである。

「僕は、ダニエルという選手は、代表に定着する男だと思います。2014年に中大を巣立った時、代表に入るだろうと感じていました。ですから、先月GK候補に選ばれた際には、来るべき時が来たなと」

選手時代GKだった白須は、2010年春のシュミットとの出会いを振り返る。

「スーパーな選手として大学に入学して来た訳ではなかった。でも1年生から、川崎フロンターレの強化指定選手になって、色々学んだことが大きかったですね。週に2回くらいフロンターレのGKコーチだったイッカさんに鍛えられていました。

1学年上に現ヴァンフォーレ甲府のGK岡西宏祐がいて、レギュラーを奪うまでにはいかなかった。最初はシュートの反応、アジリティーも低かった。セービングのスピードも無くて、ボールに追いつけないような感じでした。新入生の頃は、見切ってしまうところも多かったんですよ。

当時はアマチュアのなかでも意識の低い選手だったんです。岡西の他にも、同級生でプロになった高瀬優孝、皆川佑介といった選手がいましたが、ダニエルは彼らよりもプロになりたいという気持ちが低かった。やはり、イッカさんのトレーニングと、強化指定選手いう立場、そしてプロと練習できる環境に身を置いて、本人にスイッチが入ったのでしょう。

中大でレギュラーに定着したのは、最上級生になってからです。ダニエルが2年の時に、総理大臣杯で準優勝しましたが、その時は岡西と代わる代わる出ていた感じです。岡西は186センチと、ダニエル程大きくは無いのですが、シュートブロック、1対1の強さがありました。ダニエルは197センチと大きいのですが、岡西のような強さが無かったんです。

ハリル監督から<日本のノイアー>みたいに謳われていたので、彼なら現代サッカーに相応しいビルドアップができるな、と感じますね。スイーパーの後ろみたいに足を使えるところがありますから。浦和レッズの西川も上手ですが、ハリルが求めている足でのビルドアップというのはダニエルが一番適していると思います」

白須は続ける。

「GKになったのが高校からなので、技術的なものが足りませんでした。イッカさんに技術を学び、中大とJで経験を積んだのです。仙台から熊本にレンタル移籍してJ2で活躍しながら、徐々にGKとしての素質が開花されたんだと思います。

今、伸び盛りでしょう。楽しみですね」

今日のゲームが終われば、次の日本代表戦は3月だ。狙え! サムライブルーの正GKを!!

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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