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200年に一度のボクサーが語る、内山高志の懸念材料

林壮一ノンフィクションライター
リターンマッチまで4日、内山はリベンジを果たせるか(写真:ロイター/アフロ)

引き続き、元日本ウエルター級王者&同ジュニアウエルター級王者、そしてWBAジュニアウエルター級1位の指名挑戦者として、当時のPound For Pound アーロン・プライアーに挑んだ亀田昭雄の言葉をお届けしたい。

先日のインタビューから数日後、亀田昭雄は内山高志の調整について気になる点があると言った。

「内山は練習メニューをすべて自分で決めているでしょう。現役時代の僕と同じなんだよ。それはボクサーとしてあまりいい事だとは思えない。トレーナーによって、選手は大きく変わるから…きちんとした教えを請うことは不可欠です。自分で自分を客観視することは、本当に難しいから」

マニー・パッキャオにフレディ・ローチがいるように、フロイド・メイウェザー・ジュニアに叔父のロジャー・メイウェザーが付いているように、あるいは若きマイク・タイソンにカス・ダマトがいたように、時に選手を追い込み、叱咤激励する参謀の重要性を亀田は説くのだ。

タイソンの最後の世界タイトルマッチの相手、時の統一ヘビー級チャンプ、レノックス・ルイスは、初めてWBCタイトルを手にした後、4度目の防衛に失敗している。しかもKO負けであった。その相手であったオリバー・マコールのセコンドだったエマニュエル・スチュワードを招きいれ、引退までコンビを組んだ。

私はルイスを6年ほど取材したが、亀田の台詞を受け、次の言葉が蘇る。

「俺が3度ヘビー級王座につけたのは、エマニュエルの教えだ」(ルイス)

スチュワードは綿密なファイトプランを立て、ルイスと共にリングに上がった。

亀田は話す。「内山のトレーナーは、確か彼の後輩ですよね。うまくノセることはできるでしょうが、手綱を引っ張ったり、緩めたりは難しいんじゃないかな。リターンマッチという舞台で、すべてを自分で背負う内山がちょっと心配です」

一方、亀田の友であるロス五輪選手、荻原千春は違った見解を述べた。

「内山はその状態でV11という結果を出したのだから、本人はそのやり方が合っているのだろう。今回、どういう展開にもっていくか、期待したいね」

おそらく内山は、やるだけのことをやって、リングに上がるだろう。

その闘いに注目だ。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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