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2015年・このK-POPがおもしろかった![ガールズ編・前編]――NC.A、少女時代、AOAなど

松谷創一郎ジャーナリスト
シャノン・ウィリアムズ1stミニアルバム『Eighteen』(2015年)

やっぱりおもしろいK-POP

2016年も1ヶ月が終わろうとしているなか、いまさらですが昨年のK-POPを振り返りたいと思います。日本では一時ほどの勢いをなくなりましたが、K-POPは昨年も順調に推移しているという印象です。

一昨年は、少女時代・ジェシカの脱退やKARAの再編などがありましたが、昨年はWonder Girlsの復活など意外なこともありました。そんなこんななかで私が楽しんだK-POP(ガールズ編)トップ20を2回に分けて記しておきたいと思います。それぞれ公式のミュージックビデオを貼っておきますので、興味ある方はご覧ください。

なお、あくまでも音楽の専門家でもなんでもない私の趣味であることは、ご了承ください。これらの曲をきっかけに、それぞれのアーティストの他の曲を聴いてみたり、あるいはご自身の趣味を開拓されたりなど楽しんでいただければ嬉しいです。まずは、20位から11位までです。

▼第20位:シャノン・ウィリアムズ「Why Why」

1998年生まれのシャノン・ウィリアムズは、もともとオーディション番組出身だけありかなりの実力派です。その片鱗は、2014年のソロデビュー曲「Daybreak Rain」でもよく表れていましたが、その大人っぽい雰囲気とは一転、この曲ではアイドル路線にシフトしました。MVも学校生活をモチーフとしたポップな内容です。でもこの曲のイントロは、どこかノスタルジックなサウンドとメロディ。彼女の所属が、T-araなどが所属するMBKエンターテイメントだと知ると(過去にはFive Dollsのメンバーだった時期もあります)、なるほどと思わされます。NC.Aとともに「ポストIU」にもっとも近い存在だと言えるでしょう。

▼第19位:tユン・ミレ、Boys Noize「#Capture The City」

ユン・ミレは、ベテランのヒップホップ+R&Bの歌手。日本と異なり、K-POPではヒップホップがメジャーシーンでも中心にありますが、どちらかと言えば強めなものが多いのもたしか。そんななか彼女のこの曲は、非常にメロディアスでフワッとしています。このMVもその曲に合うイメージ。なんというか、トリップしてる感じでしょうか。心地よいラップなのです。

▼第18位:クレヨンポップ「FM」

昨年、「ラリルレ」で日本デビューも飾ったクレヨンポップ。戦隊イメージと子供向けアプローチは相変わらずですが、「FM」はMVと曲がまったく合ってない変な作品です。ヴィジュアル的には、戦隊イメージにさらにセーラームーンを重ねてきたあたりが臆面もなくて逆に清々しいのですが、ぜんぜん曲と合ってない。曲は単調なサビにマイナーコードでどこかしら物悲しい雰囲気を漂わせています。だから変でおもしろい。このグループは、とにかく曲ごとにコンセプトありきなので一発屋志向も強いのですが、いまのところいろんな弾をあらゆる方向に撃っていて、いずれもそこそこ成功しているように思います。

▼第17位:HELLOVENUS「I'm ill」

いつの間にかセンターのメンバーが脱退して存続が危ぶまれたHELLOVENUSですが、なんとか復活できた2015年でした。方向性としてはデビュー時のアイドル路線はあっさり捨て、AOAやEXIDなどを中心とするセクシー路線にシフトチェンジ。K-POP界のセンターフォワード的美人のナラをはじめ、体躯に恵まれた選手も多いチームなので、路線変更は成功したと言えるでしょう。ちなみにこの曲の英題は「私は病気」という意味ですが、本当のタイトルは「私は芸術(ナン イェッスリヤ)」。イメージとしては、クラブで女性が自らを強くアピールする感じです。「アゲアゲ」でも「ノリノリ」でもなく、「イケイケ」な印象です。なお、この前に発表された「Wiggle Wiggle」は、あまりにもお尻を強調したエロさによって、YouTubeでは閲覧規制となりました(笑)。

▼第16位:NC.A「Coming soon」

一昨年の「I'm different」も名曲だったNC.Aですが、この「Coming soon」もポップスの王道のような名曲です。そのヴォーカリストとしての力量も踏まえると、シャノンとともに“ポストIU”と呼べる存在です。ただ、現在のK-POPにはNC.Aのようなタイプのアイドルはあまり多くないのも確か。グループアイドルやヒップホップが主流ですから、そこをIUのように開拓できるかどうかがポイントです。昨年は、後半に「Vanilla Shake」というアイドルソングも発表しましたが、おそらく彼女は日本のほうが受けるタイプかもしれません。

▼第15位:IU「Twenty-three」

韓国では「国民の妹」とも言われたソロアイドルのIUも、今年で23歳になります。現役なら大学を卒業する頃で、この曲はより大人っぽさを際立たせたアップテンポなポップスです。この曲は非常によくできていて、完成度はかなり高いです。IU本人が手掛ける歌詞は、そのタイトルどおり23歳の女性を描いたもの。大人っぽい部分と子供っぽい部分をアピールするというコンセプトは、MVにも上手く表れています。ただ、これまで彼女が見せてきた伸びやかかつ高音のヴォーカルは、こうしたアップテンポの曲では活かしきれないのもまた事実。しかし、それもまた挑戦なのでしょう。

▼第14位:少女時代「Lion Heart」

韓国では音楽でも映画でもドラマでも、ここ5年くらいずっとレトロブームが続いています。これは韓国社会の成熟による過去の見直しですが、主にその対象は70~90年代でした。しかし、そんななかで少女時代が出してきたのがこの曲です。これは完全にオールディーズで、ザ・クリスタルズあたりがモデルでしょうか。時代で言えば50年代後半から60年代前半くらいで、韓国はその頃朝鮮戦争から間もなく、庶民の間でどれほどこうした曲が浸透していたかは不明です。完成度としては高い曲ですが、これを表題曲とした少女時代のアルバムはそれまでよりも明らかに人気の減退が感じられました。曲はいいのだけど、やはりジェシカの脱退は痛かったです。

▼第13位:AOA「Heart Attack(胸キュン)」

一昨年、「Like a Cat」で大ブレイクしたAOAですが、この曲はそのセクシー路線を維持したままさらにパワーアップした感があります。サビの部分ではチョアの独特な声質が冴え渡っています。スクールライフ、しかもJOCKS(体育会系)なMVも日本では観られないものでいい感じですね。なお昨年は、日本デビューも果たし、この曲は「胸キュン」というタイトルでリリースされました。この歌詞がけっこう合ってるんですよね。手がけたのは、少女時代の「GEE」や「GENIE」の日本語詞も手がけた中村彼方さん。さすがです。

▼第12位:Red Velvet「Ice Cream Cake」

伸び悩んでいたRed Velvetですが、昨年は3つMV曲を発表し、どれもかなりクオリティが高く、同時に少女時代やf(x)とは明確に異なる方向性を明示した感があります。やっと離陸したかな、という感じです。とくにこの「Ice Cream Cake」はかなり転調を繰り返すめまぐるしい曲にもかかわらず、とてもまとまっています。すごく変で、かつおもしろい曲です。また、同時発表された「Automatic」はすごくしっかりしたバラードで、こういうのを若手なのにサラッと出してくるあたりはSMエンタはさすがだな、という印象があります。先進的なのでどれほど受け入れられるかはわかりませんが、こういうのは中長期的に効いてきます。

▼第11位:PIPPI BAND「チグチグ」

あまり私はバンドサウンドを好まないのですが、この曲はおもしろかったです。パンクバンドなんですが、すごく90年代的なそれ。具体的には、あの当時一瞬ブレイクしたDaisy Chainsawの「Love Your Money」(1992年)を思い起こさせるものでした。実際、PIPPI BANDは95年に結成され、それからほどなくして解散。それが2014年末になって再結成されたそうです。でも、20年経ったので逆に新鮮にも聴こえます。なお、この後に「Over&Over(Feat.Zion.T)」という曲も発表しているのですが、こちらはうってかわってメロディアスな曲。球種は多いタイプなんですね。

【⇒後編に続く】

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ジャーナリスト

まつたにそういちろう/1974年生まれ、広島市出身。専門は文化社会学、社会情報学。映画、音楽、テレビ、ファッション、スポーツ、社会現象、ネットなど、文化やメディアについて執筆。著書に『ギャルと不思議ちゃん論:女の子たちの三十年戦争』(2012年)、『SMAPはなぜ解散したのか』(2017年)、共著に『ポスト〈カワイイ〉の文化社会学』(2017年)、『文化社会学の視座』(2008年)、『どこか〈問題化〉される若者たち』(2008年)など。現在、NHKラジオ第1『Nらじ』にレギュラー出演中。中央大学大学院文学研究科社会情報学専攻博士後期課程単位取得退学。 trickflesh@gmail.com

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