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2016年・このK-POPがおもしろかった![ガールズ編:2]──I.O.I、TWICE、AOAなど

松谷創一郎ジャーナリスト
2016年のK-POPでもっとも躍進したTWICE

【⇒2016年・このK-POPがおもしろかった![ガールズ編:1]──宇宙少女、Red Velvetなど】

【⇒2016年・このK-POPがおもしろかった![ガールズ編:3]──Oohyo、BLACKPINKなど】

20~16位

▼第20位:CL「LIFTED」

11月に解散を発表した2NE1ですが、その背景には中心メンバーであるCLのグローバルデビューがありました。すでに去年、プレデビュー曲「HELLO BITCHES」を発表していましたが、これが正式なデビュー曲です。CLも作曲に参加したこの曲は、Wu-Tang Clanの「Method Man」をサンプリングしたヒップホップ。ラップが中心ですが、メロディアスでもある美しい一曲です。CLというと、韓国における「ガールクラッシュ現象」の代表格だったほどにその力強さが目立ってきましたが、2NE1の「Ugly」が悲しくも美しいメロディであるように強さと柔らかさが同居してもいました。この曲は、そんなCLの魅力を抽出した洗練された一曲です。欲を言うならば、もうちょっと早いペースで活動してほしいですね。

▼第19位:I.O.I「Whatta Man」

2016年のK-POPをもっとも席巻したガールズグループのひとつは、間違いなくI.O.Iでしょう。オーディション番組『プロデュース101』の101人から視聴者の投票によって11人で構成された期間限定のグループなので、厳密にはユニットと言ったほうが正確かもしれません(詳しくは、「AKB48を超えた! メンバー101人のK-POPグループが誕生!……と思ったら」/2015年12月22日を)。2015年末に101人で歌った「PICK ME」は圧巻でした。いろんな事務所が参加した番組だったので、メンバーにはPLEDIS GIRLZとgugudanのメンバーが各2人ずつ、DIAと宇宙少女がひとりずつ含まれています。5月4日にデビューした後、「DREAM GIRLS」、この「Whatta Man」、そして「Very Very Very」と確実にヒットを飛ばしました。しかし、活動期間は2017年1月31日までとされており、ちょっともったいない印象もあります。来年以降は、グループに所属していない5人がどのような活動をするのかに注目です。

▼第18位:ティファニー「I Just Wanna Dance」

2016年は少女時代のメンバー/旧メンバーのソロ活動が目立ちましたが、5月にソロデビューしたのがティファニーです。曲名どおりダンスミュージックですが、ミディアムテンポなのでティファニーの伸びやかなヴォーカルもしっかりと活かされています。さらに、ちょっと80年代を思わせるレトロな雰囲気もあり、このあたりのクオリティはさすがSMエンタと言ったところでしょう。残念なのは、ちょっとミュージックビデオがシンプルなこと。ティファニーは少女時代のなかでもダンスが上手いほうじゃないし、もっとドラマ仕立てのもので良かったのではないかと思います。まぁでもこれはさすがの一曲です。

▼第17位:SISTAR「One More Day」

SISTARの新曲はダンスミュージックの巨匠ジョルジオ・モロダーがプロデュースした一曲。EDMではありながらも、ヒョリンを中心とするヴォーカルの良さがしっかりと発揮されている名曲です。聴くと、一瞬で凡百の曲とは一線を画すことがわかります。以前、少女時代がテディ・ライリーのプロデュースを受けたことがありましたが、こういうチャレンジを当たり前のようにすることもK-POPの良さでもあります。その一方で危惧してしまうのは、SISTARの今後です。ヒョリンの実力がメンバーのなかで頭ふたつ分ほど抜け出てしまったために、グループで活動する意義が問われています。

▼第16位:Bolbbalgan4「ケンカした日」

「ボルパルガン・サチュンキ」と読むこのグループは、2016年4月にデビューしたばかりのデュオです。21歳にしてすごい実力です。アコースティックサウンドですが、その曲はカーディガンズを思わせる洋楽っぽさ。もっともヒットしたのは「宇宙をあげる」ですが、これはインディーズレーベルにもかかわらずチャートのトップに入る人気となりました。12月21日にも新曲「良いと話して」を出しましたが、これも素晴らしい。来年以降、さらなるブレイクをしそうな気配があります。

日中に根を下ろすK-POP

K-POPは、アジア各国でいまだに根強い人気がありますが、ここ数年見られるのは“K-POP”が各国に根を下ろして、ローカルな活動を見せることです。それはK-POPの海外進出といったものではなく、「K-POPのJ-POP化」、あるいは「K-POPのC-POP化」と言えるものでしょうか。以下、具体的に見ていきましょう。

▼番外編:JY「RADIO」

まず挙げなければならないのは、日本で女優業を中心とする元KARA・知英(ジヨン)の音楽活動です。2016年、彼女はJYの名前でソロデビューし、「最後のサヨナラ」「好きな人がいること」、「フェイク恋をしていたこと」と4曲のシングルを発表しました。「好きな人がいること」をはじめ、J-POPシーンを意識したポップスになっています。ただ、その一方でグローバル活動を見据えてゴリゴリのEDMもやっています。他の曲とのギャップがかなり激しいのですが、J-POPをやりながらもこういう曲を紛れ込ましてくるあたり、将来的に日本の音楽シーンに面白い影響を与えるかもしれません。

▼番外編:モン・ジア「Drip」

一方、中国でもK-POP出身の歌手がソロ活動を始めています。それが元miss Aのモン・ジア(孟佳)です。11月に中国でソロデビューしました。ゴリゴリのヒップホップでしかも中国語というのが、なんとも新鮮です。ちなみに彼女、香港出身ではなく湖南省出身です。この曲が中国でどのように受け入れられているかはわかりませんが、おそらく中国だけを目的とするいうことももちろんないのでしょう。YouTube時代ですから、このようにどこでも曲を楽しめます。そしてK-POPがこのようにC-POPに姿を変えたというのも面白い現象ですね。

▼番外編:CHERRSEE「白いシャツ」

CHERRSEE(チェルシー)は、2016年5月に「Mystery」でデビューした5人組です。その特徴を完結に説明すると、「J-POPなのに曲はK-POP」ということ。メンバーは日本人4人、タイ人1人で、曲も日本語ですが、BIGBANGなどに楽曲提供をしている「勇敢な兄弟(カン・ドンチョル)」がプロデュースし、日本と韓国で2年以上のレッスンを重ねたそうです。楽曲もコンセプトワークも十分なレベルです。ただ気になるのは、ふたつのシングル両曲ともミディアムテンポということ。もっとアップテンポでいけば、大ブレイクもあるかもしれません。

このように、K-POPは日中韓の音楽の国境をどんどん越え、それぞれの国に根を下ろしつつあるのです。

15~11位

▼第15位:ガイン「Carnival (The Last Day)」

実力派グループ・BROWN EYED GIRLSのメンバーで、ここ数年ソロ活動に積極的なのがガイン。2015年は「Paradise Lost」のMVで黒いレオタード姿でクネクネしていましたが、2016年はピンク色のレオタード姿でミュージカル調の曲で踊り歌っています。ガインの良いところは、やはり堂々としているところです。気取らず、いつも全力です。この曲はレトロなミュージカルっぽいポップスですが、このコンセプトを正面からやりきるところに、ガインの強さを感じます。ひとつ間違えれば大惨事なのですが、力で制圧した感があります。さすがガインさんです。

▼第14位:Matilda「You Bad! Don't Make Me Cry」

K-POPには、ときどき新人で人気も出ない無名グループがビックリするくらいいい曲を発表して驚かされることがあります。2016年にデビューした5人グループ・Matildaのこの曲はまさにそれです。これはとても変な曲で、クルクルと曲調が変わります。要素としてはレゲエとEDMなんですけど、いろんなメロディをつなぎ合わせたら、面白い曲になったという典型でしょうか。Matildaは、他にデビュー曲の「Macarena」(なぜかYouTubeから公式MVが削除)と「SUMMER AGAIN」を発表していますが、方向性としては迷走しています。この曲が良かったですが、今後はあまり期待出来ないかもしれません。

▼第13位:AOA「Good Luck」

日本で精力的に活動を続けるAOAですが、2016年は夏に発表した「Good Luck」が素晴らしかったです。K-POPはセクシー路線もかなり強まっていますが、AOAはそのなかで頭ひとつ抜け出ている印象があります。やはりそれはチョアの力強いヴォーカルによるところが大きいのかもしれませんね。なお、2016年は日本でH Jungle with tの「WOW WAR TONIGHT~時にはおこせよムーヴメント」をカバーしたり、メンバー3人のユニット・AOA CREAMの「I’m Jelly BABY」を発表したり、多角的な活動をするようになってきました。

▼第12位:アンバー×ルナ「Heartbeat (Feat. Ferry Corsten, Kago Pengchi)」

f(x)のアンバーとルナによる「Heartbeat」は、これまで幾度か登場してきたSMエンタの音源発表企画「STATION」から生まれた一曲。オランダのフェリー・コーステンと韓国のKago PengchiによるEDMですが、これは楽しい! EDMは、テクノロジーだけでなく音楽シーンがグルーバル化するなかで広がってきたものですが、韓国ではもっとも大手の音楽制作会社がこういう水準のチャレンジをしているというところが素晴らしい。そして羨ましい。なお、ミュージックビデオはライブを撮っただけですが、アンバーのタトゥーが凄いなと思いました。

▼第11位:TWICE「TT」

2016年のK-POPでもっともブレイクしたガールズグループは、間違いなく9人組のTWICEでしょう。2015年10月のデビューも鮮烈な印象を残しましたが、2016年は4月に「CHEER UP」、そして10月にこの「TT」を発表し、ともに大ヒットしました。音楽番組『ミュージックバンク』では、「CHEER UP」が計5週、「TT」が5週連続で1位を獲得したほど。同番組では、両曲が2016年の1位獲得では最多でした。この「TT」はハロウィンモチーフではありますが、「TT」とは涙を表す絵文字です。ダンスのなかにこれを取り入れているあたり、さり気なくいいアイディアです。コンセプトワークも完璧で、さすがJYPといったところです。この人気は当面続くことでしょう。

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ジャーナリスト

まつたにそういちろう/1974年生まれ、広島市出身。専門は文化社会学、社会情報学。映画、音楽、テレビ、ファッション、スポーツ、社会現象、ネットなど、文化やメディアについて執筆。著書に『ギャルと不思議ちゃん論:女の子たちの三十年戦争』(2012年)、『SMAPはなぜ解散したのか』(2017年)、共著に『ポスト〈カワイイ〉の文化社会学』(2017年)、『文化社会学の視座』(2008年)、『どこか〈問題化〉される若者たち』(2008年)など。現在、NHKラジオ第1『Nらじ』にレギュラー出演中。中央大学大学院文学研究科社会情報学専攻博士後期課程単位取得退学。 trickflesh@gmail.com

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