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2016年・このK-POPがおもしろかった![ガールズ編:3]──Oohyo、BLACKPINKなど

松谷創一郎ジャーナリスト
今年のMVP&新人王は、間違いなくBLACKPINK

10~6位

▼第10位:ヒョナ「How's this?」

4 minute解散前からソロ活動が絶好調だったヒョナですが、2016年もその勢いはとどまりませんでした。CLがアメリカで活動する現在、韓国における“ガールクラッシュ”のアイコンを一手に引き受けているのは彼女だと言っても過言ではありません。その強めかつエロい姿は、女性のみならず霊長類すべてを魅了するものです。2017年以降に期待されるのは、海外での活動です。本人がどれほど乗り気かは不明ですが、この勢いのまま海外に出ていくことを願ってやみません。

▼第9位:テヨン「Why」

2015年に続きソロ活動を継続している少女時代のテヨンですが、LDN noiseプロデュースのこの曲は本当に素晴らしいものです。この曲はダンスミュージックではありますが、テンポを切り替えることによって、K-POPでもトップクラスのテヨンのヴォーカルの良さを活かしています。ティファニーやヒョヨンのソロ曲も良かったですが、やっぱりテヨンすごいなぁと感心させられました。プールや砂漠で撮影しているこのミュージックビデオも、明るい雰囲気でとてもいい気持ちになれます。なお、2016年のテヨンは「Starlight (Feat. DEAN)」も発表していますが、こちらもいい曲でした。

▼第8位:OH MY GIRL「LIAR LIAR」

2015年の新人王だったOH MY GIRLですが、2016年も堅調に推移しました。人気はTWICEやI.O.Iほどではありませんが、その楽曲はどれも高い水準です。彼女たちのコンセプトはフェアリーテイルですが、曲調が実はけっこうヒップホップで、ラップが入るところも面白いのです。このミュージックビデオもオモチャの家に紛れ込んだのようなイメージで、途中にダンスシーンを入れることなく一貫しています。コンセプトワークが非常にしっかりしているのです。2016年は他にも「WINDY DAY」「Listen to my word」を発表しましたが、前者もかなりおもしろい曲です。最初は可愛いアイドルソングから出発するのに、最後は南アジアのオリエンタルな曲調に変化します。K-POPの若手ガールズグループでは、もっとも個性的だと思います。

▼第7位:f(x)「All Mine」

2015年にソルリが脱退して以降、f(x)は逆に勢いを増した印象があります。この曲は、たびたび登場してきたSMエンターテイメントの音源配信企画「STATION」で発表されたもの。プロデュースはテヨン「Why」などと同様にイギリスのLDN noiseで、非常に気持ちいいEDMとなっています。メンバーに自撮りさせたこのミュージックビデオは、安上がりですがこれはこれで親しみが湧いていい感じ。なお、よく見るとわかりますが、撮影地はどうも日本のようです。4人の個性がわかって面白いですよね。

▼第6位:4minute「Hate」

4 minuteは、2NE1やT-ARAと同じ2009年デビュー組ですが、契約更新を迎えた7年目の2016年に解散してしまいました。この「Hate」は、結局最後の曲となりました。しかし、この曲は素晴らしい。悲しげなバラードから始まり、徐々にテンポアップし、最後には「I Hate You!(君が嫌いだ!)」と歌い叫びます。入口と出口でまるでべつの曲になるんです。しかもサビの部分も、ほとんどは踊っているだけですからね。すごいなぁと感心しました。とは言え、これでも解散するということは、事務所のCUBEエンターテインメントとしてはヒョナひとりで十分という判断なのでしょう。実際、他の4人は事務所を離れたし。たしかに昨年から4 minuteはヒョナがひとりで目立っていたのは間違いないのですが……。

世界に出ていくJ-POP

2016の日本の音楽シーンは、ピコ太郎の「PPAP」が海外で注目されたもののお笑いとしての評価という側面もあり、やはり停滞気味な状況は変わりません。いや、停滞というか、閉鎖的で自国のみでぐるぐる動いているという、相変わらずの状況です。いまだにミュージックビデオの短縮版しか公開していないところばかりで、国際的に見ると日本だけ時間が止まったままという印象も受けます。

ただそのなかでも果敢にグローバル展開を目論むグループがいます。なかでも私が非常に感心したのはFEMM(フェム)です。グループ名はFar East Mention Mannequinsの略称で、RiRiとLuLaによる二人組です。マネキンモチーフなところが特徴ですね。

▼番外編:FEMM「PoW!」

Icona Popを手がけるブライアン・リーとも手を組んでるように、このグループは最初から海外志向です。マネキンモチーフがアンドロイド的で、曲調もテクノ寄りなので、日本の音楽ファン(というかPerfumeファン)をまったく意識していないわけでもないでしょうけども、けっこうゴリゴリやっているという印象です。

海外ではちょっと注目されているようですが、どうなりますか。デビュー4年目となる2017年は勝負の年かもしれません。

5~1位

▼第5位:Wonder Girls「Why So Lonely」

2015年に80年代ニューウェイブ調の「I Feel You」でまさかの復活を遂げたWonder Girlsですが、2016年はレゲェでした。完全にバンドになっていますが、これが面白い曲なんです。曲調はレゲェなんですが、ユビンがドラムを叩きながらラップをするという驚きの展開です。「I Feel You」でもやってましたが、ドラムやりながらラップするひと、ほかにいるのでしょうか。しかも、この曲はメンバーのソンミとヘリムが作曲に加わっています。なお、この曲にはダンスバージョンもあり、音楽番組では両パターンを披露しています。Wonder Girlsは、少女時代やKARAと同じく2007年デビュー組ですが、少女時代がソロ活動ばかりとなり、KARAも実質的に解散状態となっているなか、ここにきて一気に大復活しているという印象です。初期メンバーはふたりだけですが、これからも活動を継続してほしいものです。

▼第4位:コ・ナヨン「Whom」

このランキングで、もっとも無名なのは彼女でしょう。韓国でも知っているひとは多くないかもしれません。まだほとんど注目されていないことは、YouTubeの再生回数が3万7000回程度であることからもわかりますが、しかしこれはとてもいい曲です。コ・ナヨンは、オーディション番組を経て2015年にデビューしたソロシンガー。オーディション番組の多い韓国には、こういう実力派の歌手が次々と登場しますが、彼女もその一人です。最初聴いたときは、なにかのカバーかなと思ったのですが、完全なオリジナル。いい曲に出合うと、まるでむかしからずっとあるかのように感じることがありますが、この曲はまさにそうでした。2016年は「Bucket List」「I Like (feat. Microdot)」の2曲を発表しましたが、ダンスミュージックもけっこうイケる気配があります。来年以降のブレイクに期待したいところです。

▼第3位:ジェシカ「Fly (Feat. Fabolous)」

2014年に少女時代を脱退したジェシカが、ソロで帰ってきました。デビュー曲がこれです。これはとても完成度が高いです。ゆったりとしたスタートから、サビへの盛り上がり、そしてFabolousのラップパートのインサートなど、非常にバランスが良いのです。しかもやっぱジェシカ歌上手いわー、とあらためて感嘆する美声。文句のつけようがないのです。この曲は、ジェシカ自身が作詞作曲に携わっていますが、なるほどジェシカはこういうことがしたくて少女時代を辞めたのかな、と正直思いました。2016年はテヨン、ティファニー、ヒョヨンと少女時代のメンバーがソロ活動を熱心にしていますが、セルフプロデュースに力を入れたジェシカが勝ったという印象です。なお、12月に発表された2曲目の「Wonder Land」も、甲乙つけがたいほど素晴らしい出来です。雪のなかで踊るジェシカが綺麗なんです(ちょっと鼻が赤いけど)。

▼第2位:Oohyo「青春/Youth (Day)」「青春/Youth (Night)」

Oohyo(ウヒョ)は、アメリカ育ちでロンドン在住のシンガーソングライターです。インディーズですが、防弾少年団やf(x)のクリスタルなど多くのK-POP歌手が仕事を熱望しているほどの実力派です。2016年に発表したこの「青春」は、アレンジが異なるDayバージョンとNightバージョンのふたつがあります。青春の明るさを歌ったものではなく、不安と寂しさが入り混じった心象を歌ったエレクトロポップになっています。これを聴くと、多くの歌手が彼女と仕事をしたがるのは、非常に納得出来ます。タイプは異なりますが、その孤高さと実力は、日本ではコトリンゴの存在感と似ているかもしれません。

▼第1位:BLACKPINK「PLAYING WITH FIRE」「STAY」「BOOMBAYAH」「WHISTLE」

2016年のK-POPは、上半期まではその前年と比べてちょっとパワーダウンした印象がありました。しかし、その状況をガラッと変えたのが夏にデビューしたBLACKPINKです。YGエンターテインメントは2NE1が2016年末に解散となりましたが、このBLACKPINKの力を見るとそれは十分に納得できます。2016年に発表した4曲はすべてミュージックビデオが発表されましたが、全曲はずれなし。メンバー全員すごいのですが、なかでも青い髪をしたリサ(タイ出身)は10年にひとりの逸材です。彼女はCLの力強さとダラの美貌を兼ねそなていますから、これは間違いなく強い! 彼女たちを見ていて思い出すのは、イチローです。突然現れて200本以上ヒットを打ち、そこから連続首位打者を続けまくるという感じです。来年以降、BLACKPINKを中心にK-POPシーンが組み立てられていくのは、間違いありません。

というわけで、ここまで30組30曲のミュージックビデオを観てきましたが、やはりK-POPは豊かですね。2017年もK-POPから目が離せません!

ジャーナリスト

まつたにそういちろう/1974年生まれ、広島市出身。専門は文化社会学、社会情報学。映画、音楽、テレビ、ファッション、スポーツ、社会現象、ネットなど、文化やメディアについて執筆。著書に『ギャルと不思議ちゃん論:女の子たちの三十年戦争』(2012年)、『SMAPはなぜ解散したのか』(2017年)、共著に『ポスト〈カワイイ〉の文化社会学』(2017年)、『文化社会学の視座』(2008年)、『どこか〈問題化〉される若者たち』(2008年)など。現在、NHKラジオ第1『Nらじ』にレギュラー出演中。中央大学大学院文学研究科社会情報学専攻博士後期課程単位取得退学。 trickflesh@gmail.com

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