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来週から東京が寒くなります?

杉江勇次気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
12月2日(火)東京の観測地点が大手町から北の丸公園へと移転される予定

東京の観測地点が変わる

東京の観測地点の移転について(気象庁)

東京の観測地点の移転について(気象庁観測部)

大手町にある気象庁本庁舎の虎ノ門への移転計画により、現在大手町にある露場では観測に適した環境の長期的な維持が困難となったため、12月2日(火)に東京の観測地点を千代田区大手町から北の丸公園へ移転する予定です。(予備日は12月3日)

移転する観測要素は、降水量、気温、蒸気圧、露点温度、相対湿度、雪(降雪・積雪)、気圧となっています。

東京の最低気温が30年前に戻る?

気象庁では今回の移転に先立ち、平成23年から北の丸公園と大手町との比較観測を実施してきました。この結果、両地点では最高気温の差は比較的小さい一方、最低気温は北の丸公園の方が年平均で約1.4℃低くなる観測結果が得られました。なかでも11月~1月にかけての晩秋~厳冬期には、大手町より約1.6℃低い値が観測されています。

大手町と北の丸公園の気温比較 東京の平年値が変更になる
大手町と北の丸公園の気温比較 東京の平年値が変更になる

これは大手町がオフィス街で暖房などの人工廃熱や夜間にコンクリートなどから放出される熱の影響により朝の気温が下がりにくくなっているのに対し、北の丸公園は緑地のため、これらの影響が少ないためと考えられます。

東京の冬の最低気温は都市化や温暖化などの影響により、1980年代以降1.5℃~2℃程度上昇していますが、今回の移転により最低気温が約1.6℃下がることになり、あたかも東京は約30年前に戻ったかのような最低気温が頻発することになりそうです。

例えば、12月としては33年ぶりの寒い朝、12月に氷点下を5日記録するのは40年ぶりのこと、などなど。(あくまでも例です。)

12月2日(火)17時予報から北の丸公園の予想に

予定通りにいけば、12月2日(火)午前9時までは大手町の観測データですが、その後移転処理を行い、北の丸公園のデータに切り替わることになります。

この日の17時予報から東京の気温予想は北の丸公園にすべて変わるため、最低気温の予想はそれまでよりおそらく毎日1℃~2℃程度低く予想されることになるでしょう。

時を同じくして、2日以降は東京にも冬将軍が到来しますので、ことさら、気温が低めの傾向になるかもしれません。

北の丸公園の最低気温の特徴は?

では、天気や曜日により、北の丸公園と大手町の最低気温の出方には何か特徴があるのでしょうか?気象庁が公開している北の丸公園の試験観測データと大手町のデータから、冬の期間(12月、1月、2月の2年分)計180日間の最低気温の比較をしてみました。

北の丸公園試験観測データ

2012年12月 大手町と北の丸公園の最低気温比較
2012年12月 大手町と北の丸公園の最低気温比較
2013年1月 大手町と北の丸公園の最低気温比較
2013年1月 大手町と北の丸公園の最低気温比較
2013年2月 大手町と北の丸公園の最低気温比較
2013年2月 大手町と北の丸公園の最低気温比較

スペースの関係上90日分だけを載せますが、驚くことに180日間の最低気温は例外なく北の丸公園の方が大手町よりも低い結果となりました。

ではどれ位低いのか?毎日の最低気温の差を0.5℃間隔で区切ってみてみましょう。

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1.0℃~1.9℃の間に111日(約6割)が入っており、気象庁が発表している値とほぼ一致しています。では、2.5℃以上の大きな差が生じていた7日間の気象条件はどうたったのでしょうか?

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ご覧のように、ほとんどの日が快晴の朝を迎えた日となっており、これは北の丸公園の方が放射冷却で冷えやすいことを表していると思います。

更に、曜日に注目すると、木曜日が3日あり、これは大手町が都市気候の影響で週の後半(木曜日~金曜日)に気温が高くなる傾向があるのに対し、北の丸公園ではその影響をあまり大きく受けないため、より大きな気温差が生じてしまう可能性があるかもしれません。

ただ、北の丸公園で-1.0℃以下まで下がった16日間を調べると土曜日と日曜日で半分の8日間を占めており、実際に最も冷えやすい日は大手町と同様週末となるようです。

一方、0.5℃~0.9℃とあまり差がなかった30日間は多くの日で曇りや雨となっており、やはり放射冷却の効かない日は大手町と北の丸公園で気温差が少なくなる傾向です。

ちなみに、差が0.4℃以下だった3日間はいずれも今年2月の大雪の降った日となっています。この時、大手町では27センチの積雪でしたが、北の丸公園では最大39センチの積雪となっており、わずかな気温差が積雪に大きな差を生じさせているようです。

東京の観測地点が北の丸公園に変更になったあと、どのような影響が出てくるのか?注意深く見守りたいと思います。

(気象庁発表資料より抜粋、作成いたしました。)

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

人の生活と気象情報というのは切っても切れない関係にあると思います。特に近年は突発的な大雨が増えるなど、気象情報の重要性が更に増してきているのではないでしょうか? 私は1995年に気象予報士を取得しましたが、その後培った経験や知識を交えながら、よりためになる気象情報を発信していきたいと思います。災害につながるような荒天情報はもちろん、桜や紅葉など、レジャーに関わる情報もお伝えしたいと思っています。

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