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コンパクトでも台風12号が非常に危険な理由

杉江勇次気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
小さいながら活発な雨雲が密集している台風12号(気象庁HPより)

日曜日~月曜日に九州に上陸の恐れ

台風12号は強い勢力で九州に接近、上陸の恐れ(3日午前9時)
台風12号は強い勢力で九州に接近、上陸の恐れ(3日午前9時)

最新の台風情報(気象庁発表)

強い台風12号は奄美大島の東を北上し、3日午前9時現在、九州の南海上を時速15キロのゆっくりとした速さで北寄りに進んでいます。

最新の予報円では、台風の東側に位置する太平洋高気圧が強まる影響で、少し西側に膨らむように北上したあと、あす(日)~あさって(月)午前中にかけて、九州の北部へ向かう予想となっています。

もし高気圧の勢力が予想より少し弱まれば、早めに鹿児島県や熊本県に上陸する恐れがある一方、高気圧の勢力がわずかに強まれば、更に西側に膨らむように押し出されて、九州には上陸せず、対馬海峡から日本海へ抜けていく可能性も十分にある予報円となっています。

また日本海へ出たあとは一気に衰え、月曜日の夜には熱帯低気圧に変わる予想です。ですから台風のまま東日本や北日本へ進む可能性はほとんどないと思われますが、台風から変わった低気圧の雨雲が通過していく可能性はありますので、低気圧に変わっても、雨の情報には注意をして頂きたいと思います。

台風12号の特徴は「コンパクトで強い」こと

大型の台風とコンパクトな台風の比較図
大型の台風とコンパクトな台風の比較図

台風12号の最大の特徴は、何と言っても、非常にコンパクトなことです。

3日午前9時現在で、暴風域の直径わずか80キロ、強風域の直径も280キロしかありません。それにも関わらず、中心気圧955hPa、最大風速40メートルとかなり強い勢力に発達しています。

中心気圧がここまで下がる台風の中では、過去最も小さいサイズの台風と言っても過言ではないほどです。では小さいサイズの台風なので、大型の台風よりも安心かというと全くそんなことはありません。

上図は大型の台風とコンパクトな台風との簡単な模式図です。

例えば、先日北日本に大きな災害をもたらした大型の台風10号のような場合、比較的ゆっくりと時間をかけて大荒れの天気に移行していくのに対して、非常にコンパクトな台風の場合、台風の中心が近づくと短い時間で急激に天候が悪化し、突然の暴風や大雨などに見舞われることがあります。いわば竜巻の襲来を受けるような感じでしょうか。

今回の台風12号はコンパクトな上に勢力もかなり強いので、なおさらこのような性質があるものと思われます。(ただし、台風の速度によっても変わるので注意。)

台風12号が九州のどこへ、いつ接近し、上陸するかはまだ定まっていません。ただ台風の中心が近付く所では急激な天候の悪化が予想されますので、最新の台風進路にくれぐれもご注意下さい。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

人の生活と気象情報というのは切っても切れない関係にあると思います。特に近年は突発的な大雨が増えるなど、気象情報の重要性が更に増してきているのではないでしょうか? 私は1995年に気象予報士を取得しましたが、その後培った経験や知識を交えながら、よりためになる気象情報を発信していきたいと思います。災害につながるような荒天情報はもちろん、桜や紅葉など、レジャーに関わる情報もお伝えしたいと思っています。

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