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菊池風磨のしなやかでHappyな挑発。『風 is a Doll?』

杉谷伸子映画ライター

Sexy Zone/A.B.C-Zによる夏の祭典「Summer Paradise in TDC」。8月30日まで1か月にわたり開催が続くなか、Sexy Zoneメンバーのソロ公演も開催された。その先陣を切ったのが菊池風磨。初めてのソロメイン公演で演出も担当し、8月2日からの4日間で計6公演約15000人を動員した。最終日8月5日の13時公演を取材。終演後には囲み会見も行われた。

菊池風磨、その高いポテンシャル

菊池風磨がアーティストとして高いポテンシャルの持ち主であることは知っているつもりだったが、エンターテイナーとしてのポテンシャルも想像以上に高いものだった。演出も手がけた初のソロ公演で、彼はその事実を印象付けたのではないだろうか。

公演タイトルにもなっている『風 is a Doll?』(読み:フウ イズ ア ドール?)という人形たちの怪盗団(菊池風磨、安井謙太郎森田美勇人真田佑馬田中樹半澤暁萩谷慧悟増田良)が、人間になるために必要な心をお客さんから盗むというコンセプトのもと繰り広げられるコンサートは、今回のソロコンサートのために作詞した新曲『Hello』を加えた計7曲のオリジナルソロ曲や、先輩たちのナンバーも披露し、歌とダンスのみならず、バンドスタイルでも魅せるというバラエティに富んだ構成。

さらには、怪盗団のメンバーが繰り広げる日替わりコントを交えたり、8人がソファにかけてくつろいだ雰囲気のなかで繰り広げるMCなど、全編に溢れるリアルな男子感でも楽しませる。メンバー3人のソロ公演に先立って行われた『Sexy Zone~ファン感謝イベント & Show~』後の囲み会見で、「飛びます」と予告していた『SUMMARY』のフライングを、甚平姿の8人がステージ上で円陣を組んでぐるぐる回るという斬新なエアフライングで沸かせるあたりは、放課後にはしゃぐ男子たちを見ているような賑やかさ。歌声そのものからしてアーティストとしてのポテンシャルの高さを感じさせる菊池だが、観客を楽しませるエンターテイナーとしての意識もポテンシャルも高いことを証明したのだ。

ジャンルにとらわれない世界

しかし、なにより素晴らしかったのは演出を考えるだけで2キロ痩せたというこだわりが詰まった構成のもと、菊池自身が選んだ先輩たちのナンバーのかずかずをも、「風 is a Doll?」が自分たちのものにして観客に届けていたということ。

菊池はヒップホップやクラブミュージックがハマるイメージだが、先の会見で「いろんな音楽を聴くので、自分の音楽というのはジャンルにとらわれないものにしたい」と話していたように、特定のジャンルだけにこだわっているのではないことが、TOKIOKAT-TUNをはじめとした先輩たちのバラエティに富んだナンバーを通して、彼らへのリスペクトとともに伝わってくる。菊池自身がこのライブにふさわしい曲を歌詞から選んだという楽曲のかずかずを、「風 is a Doll?」が歌い踊るとき、そこには耳馴染みのあるヒット曲が流れたときの嬉しさというのを超えて、その楽曲の魅力に改めて気づかせてくれる幸福なエネルギーが漲っていたのだ。

「誰が人形だよ」という意味の挑発的なタイトル「風 is a Doll?」には、菊池自身を含め、社会に出たばかりの若い世代が抱く思いを込めつつ、そんな同世代の背中を押す意味合いもあるストーリーに。終演後の囲み取材で「自分もまんなかを走ってきたタイプではないので(笑)。ときにいろいろ言われることもありますけど、でも、やっぱりこの道はこの道で負けずにやっていこうよっていう思いがずっとあったので、それを初ソロで示せたらなと」と話した菊池。

ちょっとクールに見えながらその奥に優しさがのぞくのが菊池の魅力だが、この言葉に滲む強い想いが、「記者のみなさんも全員が「風 is a Doll?」のメンバーですからね」と口にして、「うちの某メンバーみたいなこと言っちゃいました(笑)」と見せた照れ笑いや、「このソロ公演で、お客さんもそうですし、スタッフさんも(「風 is a Doll?」の)メンバーも、みんなが僕をちょっとずつ大きくしてくれたので、その大きくなった菊池風磨でSexy Zoneにそうフィードバックできるか」という言葉とあいまって、菊池とSexy Zoneのこれからをますます楽しみにさせてくれた。

【Summer Paradise in TDC 菊池風磨ソロ公演「風 is a Doll?」】8/5セットリスト

M1.  Party up!(菊池オリジナル曲)

M2.  FaKe(菊池オリジナル曲)

M3.  THE D-MOTION

M4.  ひかりのまち

M5.  Will Be All Right

M6.  rouge(菊池オリジナル曲)

M7.  It's Going Down!(菊池オリジナル曲)

怪盗団コント

M8.  weeeek!

M9.  Jump'in Up

M10.  Lucky Man

MC

M11.  sugar and salt

M12.  Maybe

M13.  WONDER

M14.  Hello(菊池オリジナル新曲)

M15.  Love is...〜いつもそこに君がいたから〜

M16.  PARTY MANIACS

M17.  Believe

M18.  キング オブ 男!

M19.  SUMMARY

M20.  Oh Yeah!

M21.  ひとりぼっちのハブラシ

M22.  僕の恋愛事情と台所事情

M23.  リリック

M24.  20 ーTw/Ntyー(菊池オリジナル曲)

M25.  Lovin' Season

En1.   Ho!サマー

En2.   言葉より大切なもの

映画ライター

映画レビューやコラム、インタビューを中心に、『anan』『25ans』はじめ、女性誌・情報誌に執筆。インタビュー対象は、ふなっしーからマーティン・スコセッシまで多岐にわたる。日本映画ペンクラブ会員。

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