Yahoo!ニュース

過去、現在、そして未来 〜チャーリー太田、NY第2戦直前インタヴュー

杉浦大介スポーツライター

11月9日 @ブルックリン アビエイター・スポーツコンプレックス

スーパーウェルター級8回戦

東洋太平洋スーパーウェルター級王者

チャーリー太田(23勝(16KO)1敗1分)

WBF米大陸スーパーウェルター級王者

マイク・ルイス(17勝(9KO)7敗)

今戦は激しい打ち合いは必至か

Q 試合直前だけど、コンディションはどう?

チャーリー太田(以下CO):万全だよ。ニューヨーク入り直後は軽く風邪を引いて、予定していた(11月2日のゲンナジー・)ゴロフキンの試合観戦はキャンセルしてしまった。ただその後にゆっくり休んだおかげで、もう全く問題ない。ニューヨークでは弟の家に滞在しているんだけど、そこで味噌汁を飲んだりして、リラックスして過ごした。今週は日に日に体調が良くなり、体重調整も上手くいったしね。気分良く準備出来ているよ。

Q 相手のマイク・ルイスに関する知識は?

CO:彼がグレン・タピア(注/デヴュー以来20戦全勝(12KO)のプロスペクト。ルイスには2ラウンドKO勝利)と対戦した試合のフィルムは見た。なかなか良い試合をして、パンチも当てていたね。とてもアグレッシブな選手で、とにかく真っ向から向かって来て、打ち合いたがる。パンチ力もある。彼と僕との対戦となれば、観客に喜んで貰えるファイトになるんじゃないかな。

Q ファイトプランは?

CO:フックが得意な選手だから、距離を積めようとして来るに違いない。僕のリーチを生かしてアウトボクシングして、状況を見計らって打ち合いにも応じるつもりだ。僕のコンディションは最高だから、パワーで圧倒できるはず。ただ、彼も前の試合でマイナータイトル(WBF米大陸王座)を獲得して、今回も良いコンディションで臨んで来るだろう。この試合のためにトレーニングキャンプにまで行ったって話で、やる気も十分なはずだから油断はできない。

目標はビッグファイトの実現

Q 今年2〜3月にはニューヨークでの試合は2度に渡ってキャンセルという残念な結果となった。その後はモチベーションを保つのも簡単ではなかった?

CO:さっきも話が出たタピアみたいな若い選手が上がって来て、自分よりも注目される舞台に上がっていることをもどかしく感じたのは事実だ。自分も長いこと勝ち続けて、ビッグファイトを目指し続けて来たのにね。それが若手選手にも抜かれてしまったようで、とても残念に思ったことは否定しない。それでも集中力を途切れさせないように気を配ったよ。そして今回、ルイスとの試合が決まったんだ。

Q 今の目標は?

CO:ビッグファイトを実現させて、名前を売ること。この間もラスベガスで現地のプロモーターから「チャーリー太田だろ?」とか声をかけられたり、ボクシング界の人間は僕の名前を知ってくれている。今後は一般のファンにも覚えてもらいたいね。ボクサーというのはどんな選手が相手でも恐れはしないもので、それは僕も同じだ。そろそろ大きな試合をやってアピールしたいよ

Q ジャーメイン・テイラーからオファーが届いたこともあったんだったね。ウェイトが違うために実現しなかったという話だけど。

CO:当時の彼はミドル級で、僕はウェルター級でも戦えるくらいの体格だからね。結局はテイラー戦は流れて、あとはカルロス・モリーナ(IBF世界スーパーウェルター級王者)との対戦の話もあったんだよ。まだランカーだったモリーナと僕の勝った方が、イシェ・スミス対コーネリウス・バンドレージの勝者とのタイトル戦に進むという流れでね。それも条件面の不一致で結局はまとまらなかったんだけど。

Q そして今ではそのモリーナがIBFのタイトルホルダーだ。

CO:そう、そうだね。あの彼が世界王者だ・・・・・・うん、僕もしっかりやらないと。

Q 誰でも1人戦えるとしたら、誰と試合がしたい?

CO:やはりタイトルホルダーだな。となるとモリーナということになるかな。今週末にデメトリウス・アンドラーデとバーネス・マーティロシアンの間でWBO王座決定戦があって、残るはフロイド・メイウェザーだけ。現時点でメイウェザーは別リーグだという現実は理解している。だとすれば、目標はモリーナ挑戦かな。あとはウェルター級の王者たちも視界には入って来る。そんな目標を現実のものにするためにも、今は勝ち続けなければならないんだ。

言葉、生活の壁を乗り越えて

Q 現在32歳だけど、あと何年くらい現役でやりたいと思っている?

CO:どのくらいという年月は分からないけど・・・・・・身体に疲れや痛みみたいなものはまったく感じないんだ。より多くのお金が稼げるようになったら、身体が持つ限りは戦い続けたい。最近ではボクサーの平均寿命が上がってて、高齢のチャンピオンもたくさんいるからね。

Q 君はまだ言葉ももつれたりしてないし、話も上手だ(笑)。

CO:当たり前だろう?(笑)体調は本当に良くて、丈夫な身体に生んでくれた母親に感謝しなければいけないなあ。

Q チャーリー自身はまだ子供はいないんだよね?息子が生まれたらボクサーにしたい?

CO:いや、そうは思わない(笑)。自分がこれまで経験して来たことを考えれば、息子には他のことをやって欲しいかな。

Q “経験して来たこと”とは?

CO:他にも日本に来る外国人ボクサーはいるけど、自分は状況が少し違った。長いアマチュアキャリアがあった後に招待されて、生活面で好待遇を受けるボクサーもいる。彼らは家、練習環境など様々な面で世話をして貰える。それが僕の場合、単身で日本に行ったから女房以外に知り合いもいなかったし、最初は仕事探しも何もかもが容易ではなかった。トレーニングに集中するのも簡単ではなかった。

Q 言葉の壁があった上に、ボクサーとしても練習生から始める他の日本人選手たちと立場は一緒だった。

CO:仕事をして、学校に行って、ジムに行った。それをすべて一挙にこなす生活をしばらく続けた。最初は試合前でも仕事は休めなかったしね。楽な生活ではなかったよ。

Q それでも我慢して続け、日本、東洋王者になり、世界ランキングに入る位置まで辿り着いた。今ではタイトル挑戦が見える位置まで到達した。

CO:これまでは大変だったけど、僕の生活は徐々に少しずつ良くなっていると思う。そういう風に感じられるんだ。そして、もっともっと昇って行かなければいけない。今でも楽ではないけど、自分で選んだ道だからね。少しずつ、少しずつ、前に進んで、この場所にまで辿り着いたんだ。だからこそ、もうしばらく頑張って、必ずやり遂げてみせるよ。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

杉浦大介の最近の記事