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キース・サーマン対ショーン・ポーター戦はウェルター級強豪対決シリーズ開始のきっかけになるか

杉浦大介スポーツライター

Photo By Amanda Westcott/SHOWTIM

6月25日 ブルックリン バークレイズセンター

WBA世界ウェルター級タイトルマッチ

王者

キース・サーマン(アメリカ/27歳/26勝(22KO)1無効試合)

元IBF王者

ショーン・ポーター(アメリカ/28歳/26勝(16KO)1敗1分)

アル・ヘイモンの主催興行としては屈指の好カード

もともとは3月12日にコネチカット州のモヒガンサン・カジノで予定されたWBA世界ウェルター級戦は、6月にブルックリンで仕切り直しされることになった。

延期の原因となった2月のサーマンの交通事故も、幸いにも大事には至らなかった模様。26日にマンハッタンで行なわれた会見には両者が元気な姿を見せ、関係者、ファンを安心させた。

「先行発売の売り上げはバークレイズセンターでのボクシング興行では過去最高。チケットは飛ぶように売れているよ」

最近はアル・ヘイモン主催の興行でプロモーターを務めることが多いルー・ディベラはそう語り、今カードの人気を強調していた。

何度か書いてきた通り、ビッグイベント前のプロモーターの言葉のすべてを真に受けるべきではない。ただ、ウェルター級屈指の実力者同士の一戦がファンから好意的に捉えられているのは事実だろう。

サーマン、ポーターともにまだ全米レベルの人気ファイターとは言えないが、特にサーマンはヘイモンの“プレミア・ボクシング・チャンピオンズ(PBC)”でメイン格にフューチャーされてきた選手。これまでNBC、ESPN版のPBCの第1回で顔役に抜擢され、ここでCBSが1978年以来初めてプライムタイムに中継する興行のメインも務めることになった。

そんな背景を考えれば、最新のビッグイベントも様々な形でプッシュされ、盛り上げられていくに違いない。

時を同じくして、7月30日のWBA世界フェザー級王者レオ・サンタクルス対WBA&IBF世界スーパーバンタム級王者カール・フランプトンという注目のタイトル戦も、同じバークレイズセンターで開催されることが明らかになった。

「アメリカで行なわれる今夏最大の2つのイベントをプロモートできるのは名誉なこと。両方とも素晴らしいカードだ」

ディベラはそう語るが、実際に同じ会場で2カ月連続で行なわれる興行へのファンの反応は今のところ極めてポジティブだ。

相乗効果も期待できるだけに、今後もチケット売り上げは伸びそう。特に6月のアメリカ人対決は、最終的にバークレイズセンターでのボクシング興行史上最高の観衆を集める可能性は高い。

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凡戦の可能性はあっても

「素晴らしいファイトだ。今年度最高のマッチアップの1つだし、僕たちは年間最高の試合にするために全力を尽くすつもりだよ」

サーマンはそう述べていたが、他でも喧伝されているように“Fight of the Year”候補と呼べるような試合になるかは微妙なところだろう。

確かに両者ともに好戦的ではあるが、噛み合うかどうかは未知数。フィジカルの強さが売りのポーターに対し、必要に応じてアウトボクシングを見せるサーマンがスキルを生かそうとすることも考えられる。蓋を開けてみれば、ホールドの多い少々アグリーな乱戦になったとしても、筆者はまったく驚かない。

もっとも、例えそうだとしても、今戦が興味深い一戦であることに変わりはない。

6月25日の興行は、“PBCによって提供され、CBSで中継されるShowtime Championship Boxing”という複雑な形態のもの。3社の協力という形はPBCの資金難を裏付けるという声もあるが、いずれにしても、これまで平凡なマッチメークが多かったヘイモン傘下のトップ選手の直接対決は素直に歓迎したい。

サーマン対ポーター戦の勝者には、WBC王者ダニー・ガルシア、売り出し中のエロール・スペンス・ジュニア、あるいは4月30日に行なわれるアンドレ・ベルト対ビクター・オルティス戦の勝者といった他のヘイモン傘下選手との対戦も話題になってくるだろう。また、ヘイモン傘下ではないが、階級最強の呼び声高いIBF王者ケル・ブルックとの統一戦の機運も生まれてくるはずだ。

方向性はどうあれ、サーマン対ポーターの実現が1つのきっかけとなって欲しい。今後、層の厚いウェルター級勢の間で、世界的な潰し合いの機運が高まっていく流れを望みたいところである。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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