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アトレティコ・マドリーが象徴するCLの醍醐味。その歴史的な意味と背景について

杉山茂樹スポーツライター

チャンピオンズリーグ準決勝、アトレティコ・マドリー対チェルシーの第1戦は0─0だった。第2戦はホームのチェルシー有利。モウリーニョの計画通りに事は進んでいると考えるべきだろうが、内容を見る限り、アトレティコに余力を感じることも事実。両者ほぼ互角と考えていい。

だが、好感度という点では、断然アトレティコに軍配は上がる。もちろん僕的にはという話だが、そのサッカーは、何より目に新鮮だ。チャンピオンズリーグは、正直言ってここ何年かマンネリ気味だった。終盤の戦いは、ほぼ変わらぬ顔で争われていた。試合のレベルは高く、好試合も多かったが、本当の意味での目新しさに欠けた。

そこに既存の強者とは異なるサッカーをするアトレティコが現れた。バルセロナ型でもなければ、バイエルン型でもない。レアル・マドリー型でもない。もちろんチェルシー型でも全くない。にもかかわらず、サッカーに必要なあらゆる要素がふんだんに詰まっている。最近のサッカーが忘れかけていた要素もその中には含まれる。アトレティコを見ていると、サッカーがよりバラエティに富んだ奥の深いスポーツに見えてくる。サッカー観を、まさにいい感じで刺激してくれるのだ。

アトレティコが、もし決勝進出を果たした場合、相手はレアル・マドリーか、バイエルンだ。第1戦を1─0マドリーで終えているこちらの行方も可能性は五分五分とみていい。

アトレティコの相手がレアル・マドリーなら、決勝はマドリッドダービーだ。同じ町のクラブがCL決勝戦を争った過去はない。これは少しばかり大きなニュースだ。バルセロナ市民にとっては、これほど屈辱的な話もない。

バイエルンが相手なら、73〜74シーズン決勝以来の対戦になる。40年前、ブリュッセルで行われたこの戦いは、チャンピオンズリーグ及びカップ史上唯一の例外として記されている。理由は、1戦ではなく2戦行われたからだ。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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