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チーム作りの失敗が露わに。コートジボワール戦全選手採点

杉山茂樹スポーツライター

「いつもできていたことができていなかった」と述べていたザッケローニは、記者会見も後半にさしかかると、次のような言葉でまとめようとした。

「相手が良かったんですよ」

だが、相手のコートジボワールは本当に良かっただろうか。僕はそうは思わない。ある時まで、失敗してくれていた。番狂わせを起こすチャンスは十分にあった。だがそこを突けなかった。日本には突く力がなかった。

「いつもできていたことができていなかった」とザッケローニは言うが、その「いつも」とは、いつの話なのか。少なくともコートジボワール級の強者と、ザックジャパンは何度対戦したというのか。最後の成功体験はオランダに引き分け、ベルギーに勝利した昨年11月の欧州遠征まで遡(さかのぼ)らなければならない。その他を挙げるとすれば、1年前のイタリア戦(コンフェデ杯)ぐらいか。

何と言っても恐れ入るのは、ラスト7ヵ月における親善試合の少なさだ。ニュージーランド、キプロス。そしてブラジルに向かう途中、アメリカで行なったスパーリングマッチ2試合(コスタリカ戦、ザンビア戦)を含めてもたったの4試合。内容はいずれの試合も悪かった。弱い相手と戦っても。

「いつもはできていた」とは、いつを指すのか。もし7ヵ月前を指すなら、その間にチームの状態はすっかり変わってしまった。メンバーを固定して戦ってきた弊害を、ラスト半年で露呈させる結果となった。

そもそもこの試合で、自慢のパスワークは披露できたのだろうか。試合に敗れても、日本サッカーの魅力がふんだんに発揮されたなら、文句は控えようと思うが、そうではない場合、黙っているわけにはいかない。

今大会、開幕戦からここまで7試合が行なわれてきたが、この試合はその中で最も低調な試合だった。その責任はコートジボワールにもあるとはいえ、最大の原因は敗者の頑張り不足に見えた。

1対2。後半19分、21分に連続ゴールを許し逆転された後、日本はあまりにもアッサリと引き下がった。ほぼ無抵抗。そこに僕は一番腹立たしさを覚えた。ほとんどのチームはそこで怯まずに前に出て行った。負けるもんかと、逆に本領を発揮しようとした。今大会、面白い試合が多い理由はそこにあるのだが、日本は違った。試合が低調に見えた原因だ。

結果は1-2ながら、0-3で負けたような気分だ。日本は観戦者に感動を与えることができなかった。敗者の姿としても最悪だったのだ。

というわけで採点は自ずと厳しくなる(10点満点で平均5.5点)。

GK

川島永嗣 5.5 

2失点は仕方ない。相手のシュート下手にも助けられたが、もう2点ぐらい入れられてもおかしくないゲームだった。

DF

内田篤人 5 

前半、近距離から一本、惜しいシュートを放ったが、見せ場はそれのみ。以降、攻撃に有機的に絡めなかった。

森重真人 5

イエローをもらってから行けなくなってしまった。

吉田麻也 5

バックラインに心臓部があるチームは強そうに見えるが、このチームにはそれがない。今野泰幸がベンチに下がった中で、リーダーになるべきは吉田だが、現状ではそこまでの器に達していない。ただ守っているだけの守備陣ではW杯では勝てない。

長友佑都 5 

体格で劣る分を俊敏さでカバーできなかった。2失点に繋がる2本のクロスは、長友の守備力不足ではないが、やられてしまった印象は強い。

MF

山口蛍 5 

孤軍奮闘。良く動き回り火消し役を果たしたが、それ以上のモノは発揮できなかった。守備的MFとして90分出場可能な唯一の選手なのに、チーム内のヒエラルキーは高くない。そこにこのチームの構造的な問題がある。

長谷部誠 5

「あの時間での交替は予定通り」とは、ザッケローニの試合後のコメントだが、後半9分までしかプレイできない選手を先発させなければいけないところにこそ問題がある。

岡崎慎司 4,5 

専守防衛。今季のブンデスリーガで15点取った選手にはまったく見えなかった。

本田圭佑 5 

先制点を決めた瞬間は、さすが本田!と思わせたが、後半になると失速。コートジボワールに逆転され、日本が反撃する番に回った時、もはや頼りになる存在ではなくなっていた。そんな彼をフルタイム出場させなければいけないところにもこのチームの大きな問題がある。監督が従来の価値観に縛られ、現状を見誤っているといわざるを得ないのだ。

香川真司 3.5

選手の中では最大の戦犯。本田が満足な状態になければ、次にチームをリードするのは香川であるはず。2人は日本の両エースであるはずだが、香川にはその自覚がないようだ。何よりプレイにひたむきさがない。で、肝心なところで大きなミスを犯す。同点ゴールを奪われたのは香川のミスの直後。彼の軽率なプレイが、相手を勢いづかせる結果になった。奪われたら即、追いかける。この基本ができていない選手がピッチに立っていると、見る側の応援精神は失せるのだ。

FW

大迫勇也 4.5 

ゴールに向かっていく推進力が足りない。1トップなのだから、もっと勇敢にプレイすべし。

交代出場

遠藤保仁 4.5 

存在感を見せたのは、交替で入った直後だけ。ゲームをコントロールすることはまったくできなかった。中心選手として、周囲を鼓舞することもできなかった。いくら名手とはいえ、30、40分しかプレイできない選手を選んでしまったザッケローニの罪は重い。このチームの問題は、なにより逆境に強いリーダーがいないこと。遠藤の淡泊すぎるプレイを見ていると、なおさらそう思う。

大久保嘉人 5 

見せ場なし。香川に代えて先発で使うべし。

柿谷曜一朗 -

監督

ザッケローニ 3 

チーム作りの失敗が露わになった試合だった。従来の価値観を180度変えない限り、残り2試合、日本が良いサッカーを見せるのは難しいだろう。

(集英社・web sportiva 6月15日掲載原稿)

スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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