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来年の準備はウェディングドレスから

鈴木春恵パリ在住ジャーナリスト
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この写真にピンときた方は、かなりのファッション通か、あの映画のファンに違いない。『SEX AND THE CITY』のなかでキーアイテムになっているのがこの靴。ハッピーエンドの主人公キャリーが履いていたのが同じデザインのロイヤルブルーのものだった。というわけで、今回のテーマはマリアージュ、結婚。

クリスマスイルミネーションのオープニングイベント直後、パリのデパート『プランタン』から、ウェディングドレスのショーのお誘いがあった。マーケットは季節を先取りするもの、とはいえ、ウェディングとはまた気の早い…。

というのも、フランスの結婚シーズンといえば夏。日本とは違って湿気がないフランスの夏はかなり快適。しかも夜10時くらいまで明るいときているから、人々はがぜん開放的になる。そんな理由もあって、ヴァカンスシーズンと前後して結婚パーティーを行うカップルが多いのだ。

半年以上先のことを今から?

と思うのは、のんびり屋のわたしの第一印象。とはいえ、田園のシャトーを丸ごと借りきった結婚パーティーにおよばれしたとき、夏の時期は、1年前には予約しないと希望の週末がとれないと聞いていたのを思い出した。

衣装にしてもしかり。ドレスはレンタルが当たり前の日本とは違い、こちらでは買うケースがほとんどだから、品定めから仮縫いまで含めると、半年前からの支度でも決して早すぎるとは言えないらしい。

さて、『プランタン』でのショーは、このデパートのファッション・エディターであるマリア・ルイーザのセレクションによるもの。彼女はファッション業界で知らない人はいない存在だ。

photo/JF Carly
photo/JF Carly

パリの中心、カンボン通りに自身の名を冠したセレクトショップを開いたのは1988年のこと。後にビッグネームに成長するジャン・ガリアーノやリック・オーウェンらの才能をいち早く見いだした人でもある。昨年からはここ『プランタン』のファッション・エディターとして、よりグローバルに活躍の舞台を広げ、ウェンディングドレスのショーも今回が2回目になる。

会場はデパートの最上階。ここにランウェイをしつらえ、プロのモデルたちが35点のドレスを披露するという本格的なもの。

「選択肢をできるだけ広げたいと思ったの」と、マリアさんが言う通り、発表されたドレスはじつにバラエティにとんでいる。なかには(コレもあり?)と思ってしまうくらい、ウェディングドレスとしては斬新なものも。

「今日の結婚というのは、とてもパーソナルで自由。社会的な縛りがあまりないように思います。すでに一緒に暮らしていたり、ふたりの間に子どもがいたりするカップルが、あるとき決断して関係を公的なものにする。そのタイミングは人それぞれです。」

統計によると、初婚の女性の平均年齢は30.1歳(2011年)。1994年には26.8歳だったのが年々確実に上昇してきている。同性の結婚も認められた国であるから、事実婚などはごく普通。また、3組に1組、都市では2組に1組が離婚するといわれるくらいだから、当然再婚、再々婚のケースも多い。ということは、花嫁の年齢もさまざま。

さらにいえば、公な形の結婚は、絵に描いたような教会式ではなくて、役所で市長さんやその代理人の仲立ちによって成立するもの。教会式をせず、この手続きだけを踏むカップルの場合、結婚式の舞台はそれほど夢夢しいものではないのだ。

「コート風のは、年齢が上の女性にこそ似合いそうだし、丈の短いのはマリアージュ・シヴル(役所式)用ね。」とマリアさんが言うのには、そういったフランスの結婚事情がある。

「女性のキャラクターは十人十色、結婚の形もそれぞれの選択があるわけだから、ドレスのスタイルもそうあるべき。たとえば、今回のコレクションでいえば、『クレージュ』のようなモダンなものもあれば、『ローザ・クララ』のようなクラシックなものもある。ただし、いずれにしても魅惑的でロマンティックであることを尊重したわ。セクシーすぎたり、これみよがしな下品な感じには決してしたくないと思ったの」

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ところで、ショーの観客は、デパートの「リスト・ド・マリアージュ(結婚リスト)」に登録した人がメイン。このリスト、ただ単に結婚予定名簿というものではなくて、カップルがお祝いとして受け取りたい品物をリストアップしたものの意味で、これもまた日本と違う習慣で、結婚のお祝いにはお金ではなく、品物を贈るケースが多いフランスならでは。結婚式の招待状が届くと、それには「リスト・ド・マリアージュ」をどこのデパート、あるいはお店に置いているかの案内が同封されていて、招待客は事前にそのリストから自分の予算に見合った品物を選ぶというものだ。

また映画の話になるが、ヒュー・グラントとアンディ・マクドウェル主演の『フォー・ウェディング』にも、このリストにまつわるシーンがあるのをご記憶の方も少なくないかもしれない。つまりこれはフランスに限った習慣ではなく、おとなりのイギリスでも同様らしい。

さてさて、最後に気になるドレスのお値段をば…。35着の中の最高額は9030ユーロ(1ユーロ=140円として約126万円。一番お値ごろのは500ユーロ(7万円)、正方形のモチーフをつなぎ合わせた『クレージュ』の愛らしいミニドレスは980ユーロ(13万7200円)。いずれもレンタルではなく購入価格。念のため…。

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パリ在住ジャーナリスト

出版社できもの雑誌の編集にたずさわったのち、1998年渡仏。パリを基点に、フランスをはじめヨーロッパの風土、文化、暮らしをテーマに取材し、雑誌、インターネットメディアのほか、Youtubeチャンネル ( Paris Promenade)でも紹介している。

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