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「新しい働き方」における時間の考え方

鈴木崇弘一般社団経済安全保障経営センター研究主幹
「新しい働き方」における時間とは?(写真:アフロ)

先に紹介した、今後の日本に必要とされる多種多様な働き手による多様な働き方(注)においては、「時間」が重要である。しかしながら、ここでいう「時間」は、「長時間(労働)」や「生産性」のことだけではない。

そのような多様な働き手による働き方を考えた場合、私たちは、一般的に、その働き手の分類というか属性に焦点を当てがちだ。それらは、たとえば、女性、高齢者、障害者などのことを指している。

だが、同じ個々の働き手でも、その一日の中の状況や人生におけるステージや状況において、その働き手が、発揮できるスキルや能力、活動の質量や時間量などは実は異なるのである。

そのことは、働く人材の「時間」を、縦と横からも見ること、つまり多様な側面から見ることが必要であることを意味している。

ここでいう縦とは、その人材の「一日における時間(一日の時間軸)」であり、横とは「人生における時間(人生の時間軸)」のことである。その2つの時間軸の関係を簡単に示したのが、「図:『時間』の縦と横の軸(一つのイメージ例)」である。

より正確にいうと、ここでいう「縦時間」は、一日のうちの「ワーク(仕事)」とはどの時間にどこで働くか、自分のライフ(生活)をどの時間にどこでどのように過ごすかということに関するものである。

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ただし、ここでいう「ワーク」にも、実は少なくとも2種類あると考えられる(表「『ワーク』について」を参照)。一つは、いわゆる収入を得るためのもの(これを狭義の「ワーク」と呼ぶ)。もう一つは、収入的には制約があったりあるいは無給(ボランティア)でも、何らかの形で社会や地域のためのあるいはそれらに貢献するワーク(さまざまな議論はあろうが、家庭内の家事や育児等も「家庭」という最小単位のコミュニティ-に貢献するという意味でこの分類に属することとする)である。今後、特に兼職などが認められるようになれば、働きながら議員になるようなことも、この中に含まれるであろう。

なお、ここでいう地域は自分や家族が住んでいる場もあればそれ以外の場(シェアオフィスやバーチャル・コミュニティ-なども含む)も含めたものである。

仕事の自由度が増大したり、時間の柔軟性や短縮化などが進み、「働き方」が変わってくると、働いている者も、自宅や自分の地域などにいる時間が増え、それらに関する意識も強くなっていく可能もある。そうすると、ワーク・ライフのバランス以上に、トータルに時間や場所を考えていく必要が生まれてくるだろうと推測できる。

またここでいう「横時間」とは、個々人の人生をみた場合に起きるライフイベントや年齢の違いなど様々なステージや状況に関するものである。そのステージや状況は個々人によって多様であると共に、個々人も、同一人物ではあるが、ステージや状況で、「ライフ」や「ワーク」にかけられる時間などが変化するのである。

以上のように、多様な働き手による多様な働き方を実現していくには、個々人を、「縦」および「横」の時間軸の観点から、多様に理解していくことが必要になるのである。そして、この問題は、別記事でも論じた、組織の側の「マネジメント」と個人の側の「自律力(セルフ・マネジメント)」の問題にもつながるのである。

このように、今後予想される新しい働き方においては、「時間」に関して、複眼的に見ていくことが必要であり、より重要になると考えられる。

(注)新しい働き方に関しては、政策提言「新しい勤勉(KINBEN)宣言…幸せと活力ある未来をつくる働き方とは」を参照のこと。

また、同提言関連の鼎談「政策提言「新しい勤勉(KINBEN)宣言―幸せと活力ある未来をつくる働き方とは―」1政策提言「新しい勤勉(KINBEN)宣言―幸せと活力ある未来をつくる働き方とは―」2なども参照のこと。

一般社団経済安全保障経営センター研究主幹

東京大学法学部卒。マラヤ大学、イーストウエスト・センター奨学生として同センター・ハワイ大学大学院等留学。日本財団等を経て、東京財団設立に参画し同研究事業部長、大阪大学特任教授・フロンティア研究機構副機構長、自民党系「シンクタンク2005・日本」設立に参画し同理事・事務局長、米アーバン・インスティテュート兼任研究員、中央大学客員教授、国会事故調情報統括、厚生労働省総合政策参与、城西国際大学大学院研究科長教授、沖縄科学技術大学院大学(OIST)客員研究員等を経て現職。㈱RSテクノロジーズ 顧問、PHP総研特任フェロー等兼任。大阪駅北地区国際コンセプトコンペ優秀賞受賞。著書やメディア出演等多数

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