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メディアの中立性とは?

鈴木崇弘一般社団経済安全保障経営センター研究主幹
(写真:アフロ)

最近、政治とメディアの関係が話題になることが多い。その際に、政治や政権の方から、「メディアは中立性であるべきだ」といわれることがある。

だが、筆者としては、新聞やTVさらにネットなどのさまざまなメディアが、政治や政策について報道したり、語ったりする場合、個々のメディア自体が中立であることは不可能であると考えている。

それは、政治や政策は、取り上げるにしろ、取り上げないにしろ、あるいはまた説明や解説をするにしろ、何らかの政治的価値観がない限り、その選択や説明などはできないからだ。

もしメディアに中立性があるとすれば、それは、個々のメディアがそうなのではなく、さまざまな形態やさまざまな価値観に基づくメディアが社会に存在し、その多様性、多元性によって、社会全体としてさまざまない意見や考えが示され、多様な議論が行われ、全体としてメディアの「中立性」が担保されることであろうと考える。それこそが、社会に多様性があることを前提にした民主主義社会における「中立性」であるといえる。

また、そのような多様なメディアや多様な価値観・意見が存在するには、個々人や個々のメディアが個々に「独立」してことが必要である。それは、別の言い方をすれば、「独立性」こそが、メディアにおける「中立性」を担保するものであるということができる。そして、その「独立性」が担保されるためには、表現の自由、言論の自由、報道の自由などが必要である。それらの自由の権利は、人類の長い歴史の中から生み出されてきたものである。

私たちが、メディアにおける「中立性」を考えるときには、これらのことを思い起こすべきだ。特に影響力のある政治や政権の側は、それらの点に留意すべきであろう。

一般社団経済安全保障経営センター研究主幹

東京大学法学部卒。マラヤ大学、イーストウエスト・センター奨学生として同センター・ハワイ大学大学院等留学。日本財団等を経て、東京財団設立に参画し同研究事業部長、大阪大学特任教授・フロンティア研究機構副機構長、自民党系「シンクタンク2005・日本」設立に参画し同理事・事務局長、米アーバン・インスティテュート兼任研究員、中央大学客員教授、国会事故調情報統括、厚生労働省総合政策参与、城西国際大学大学院研究科長教授、沖縄科学技術大学院大学(OIST)客員研究員等を経て現職。㈱RSテクノロジーズ 顧問、PHP総研特任フェロー等兼任。大阪駅北地区国際コンセプトコンペ優秀賞受賞。著書やメディア出演等多数

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