テレビ“午後ナマ戦争”勃発!~NHK新番組の可能性は・・・?~

(写真:アフロ)

NHKは今月15日の総局長会見で、2017年度の新編成を明らかにした。

総合テレビの目玉としては、平日午後1時から3時間の生放送『ごごナマ』(午後1時5分~4時)が新設されることになった。また現在の『シブ5時』を1時間前倒して『4時も!シブ5時』とし、午後を生放送中心に一新してきた。

午後ナマ戦争は既に激烈!

現在民放の多くは午後帯に生放送を並べ、しのぎを削っている。

日本テレビは『ヒルナンデス』に続き、『情報ライブ ミヤネ屋』を放送。去年10~12月期の平均視聴率は7%ほどと横並び1位だ。

TBSは『ひるおび』に続き『ゴゴスマ』。フジテレビは『バイキング』から『直撃LIVEグッディ!』を放送している。両番組とも平均は3%台前半で互角の闘いとなっている。

ちなみに2~4時台をドラマの再放送枠としているテレビ朝日は、『相棒』『科捜研の女』など人気ドラマを並べ、安定的に5%以上をとっている。

そしてNHKは、『スタジオパークからこんにちは』1時が2%台、2時が1%台半ばと低迷、3~4時台にある再放送枠も数字が取れていない。

午後の勢いは夕方のニュースにも影響する。

日テレは『ミヤネ屋』に続く『news every』が好調だ。ドラマ再放送後のテレ朝『スーパーJチャンネル』も、首位争いに参戦。『ゴゴスマ』後のTBS『Nスタ』も気を吐いており、NHKの『シブ5時』は3~4位争いに留まることが多い。

かくてNHKは“午後ナマ戦争”参戦へと舵を切った。

木田総局長は会見で、「ずっとNHKにチャンネルを合わせてもらうことを目指します」と明言した。明らかに視聴率向上が狙いとなっている。

改編は不徹底!?

しかし視聴率の視点でみると、今回の改編には欠点がある。

まず『ごごナマ』は1時5分ではなく、正時スタートにすべきだった。

2010年春の改編を振り返ってみよう。

この時は朝ドラ開始時刻を8時15分から8時ちょうどに繰り上げ、『あさイチ』を朝ドラに直結させた。13%台まで落ちていた朝ドラの視聴率は、これを機に20%台を回復。続く『あさイチ』も10%超が当たり前となった。つまり、それまでの8時からの15分ニュースと朝ドラ後の5分ニュースが、視聴率を下げる要因になっていたのである。

結果として民放8時台のワイドショーが総崩れ。特にTBS『はなまるマーケット』に至っては、不振から終了に追い込まれてしまった。「民業圧迫!」と不満を露わにする人もいたくらいだ。

視聴率競争とは、裏番組との闘いだ。

2010年の春改編は、NHKとして今世紀最大の成功例だったのである。

この教訓を活かすのなら、朝ドラ再放送枠(12時45分~13時)が持つ5%以上の視聴者を、『ごごナマ』に直結させ囲い込むべきだった。5分のニュースが挟まれば、NHKからの一定の流出は避けられないからだ。

大胆さに欠けるMC配置

番組コンセプトも気になる。

“オトナの井戸端”を前面に出すようだ。「ゆったりと午後のおしゃべりを楽しむ」を演出するため、「広く親しまれ、幅広い話題を語れる」船越英一郎が抜擢された。そこに「予定調和にならない本音トークが期待できる」美保純と、NHK『おはよう日本』の顔・阿部渉アナウンサーが加わる。

こうした演出に、2010年スタート『あさイチ』の二匹目のドジョウ狙いを感ずる。しかし、そうなるかと言えば“イエス”と簡単には言えない。

『あさイチ』では、有働由美子アナ・イノッチ(井ノ原快彦)・柳沢秀夫解説委員(後に委員長)がMCに並んだ。

ご存知有働アナは、「脇汗」でも「セックスレス」でも怯まず立ち向かう。しかも生放送で「つけまつげ」が取れてしまうほどの女傑だ。“NHKのアナウンサーなのに”という付加価値までつく。

本音トークが少々炸裂したくらいでは、美保純は有働アナほどの話題にならないだろう。

イノッチの司会は、ジャニタレなのに安定感抜群で、“男前対応”“神発言”など数々の名シーンがあった。つまり意外性が大きな価値だった。初めから安パイ確定の船越英一郎とは、やはり大きく違う気がする。

そして柳沢秀夫は、NHK職員として答えにくい問題に対しても逃げずに対峙して来た。生放送ではハプニングが避けられないが、長いジャーナリスト経験から発言も的確だ。台本をきっちりこなす、どこから見ても優等生の阿部渉アナとは、ハプニング対応能力が違いすぎる。

しかも『あさイチ』は、視聴率20%超の朝ドラに直結したことで、3人の存在感を多くの人に認知してもらう機会に恵まれた。いわばお試し視聴の機会に恵まれ、次第に評価を上げていったのである。

仮に『ごごナマ』のMC3人が想定以上に素晴らしかったとしても、それを認知してもらう機会が乏しい。苦戦必至と見るが如何だろう。

どの局から視聴者を奪うのか?

視聴率競争は、限られたパイの分捕り合戦だ。

現状視聴率1~2%台の状況からスタートする『ごごナマ』は、視聴率を上げるために裏番組から視聴者を奪ってこなければならない。

では今の午後1~3時台を俯瞰してみよう。

60~70代は2~3割がテレビを見ている。50代は1~2割、30~40代女で1割強、他は数パーセントというのが現状だ。視聴者は極めて限られている。

まず1時台で40~50代女を最もとり、20~30代に至っては過半を占めるのが日テレ『ヒルナンデス』だ。しかも60~70代にも人気がある。

ちなみに高齢者にはNHKが強いはずだ。確かに夜帯はそうだが、午後帯は日テレ・テレ朝・TBSに後れをとっている。しかも10~50代に至ってはほとんど見られていないのが実態だ。

これが2時台の『ミヤネ屋』となると、ほぼ全世代で日テレの占有率が高まる。いっぽうNHKは、60~70代男女でも数字がとれず、『午後のロードショー』で古い映画を流すテレビ東京といい勝負になっている。

つまり最強の日テレから客を引き抜くのは至難の業。

ドラマの再放送で一定の数字を維持するテレ朝からも容易ではない。『ごごナマ』のコンセプトは、ドラマを見たい人の心に届かないだろう。

映画ファンをかき集めるテレ東も同様とすると、残るはTBSとフジとなる。ところが両局の合計視聴率は午後1時台で10%、2時台で6%ほどしかない。

仮に両局から1%ずつを奪えたとしても、新番組は3~4%台。前途は多難と言わざるを得ない。

どこに向かうべきか?

以上は視聴率を狙う番組としては“茨の道”という分析だが、別の視点からは異なる道が見える。

もともと『ごごナマ』の方向性は、「その日、視聴者が一番知りたい情報を、ホットな現場からの中継や旬の人物を招いたトークなどを交えて、多角的に届ける」だった。「NHKの番組データを活用し“お役立ち情報”を取り出す」「視聴者からの疑問や悩みに答える」「外国人目線で地域の魅力を再発見する」などのコーナーも予定されている。

そうであるならば、この路線を徹底し、今までにない番組を創造したらどうだろうか。

考え方は“放送だけに拘らない”だ。

「いったん放送を捨て」、番組が目指す道を「使えるものは何でも使い」「とことん極め」られたなら、放送としても成功できるのではないかという考え方である。

大切なのは、“視聴者が一番知りたい情報”“お役立ち情報”を“多角的に届ける”にある。

“一番知りたい情報”を扱うなら、その日のメインテーマは原則前日夜に決めて欲しい。“ホット”で“ビビッド”な情報は、決して何日も前から用意したものではない。かっちり出来上がった台本に従った進行で提示できるものでもない。

“役に立つか否か”は視聴者が決めればよい。NHKは選択肢を複数示すことで、視聴者の満足を狙うべきだ。

そして短時間にしっかり取材されたものを“多角的に”出すために、“番組データを活用”する道が生きて来る。

具体的には、こんな感じだ。

夕方決められたテーマが、放送やネット上で発表される。

そのテーマに従い、制作陣は過去の番組データから、認識を番組ホームページにタイムラインにして流していく。

視聴者はそれらに投票したり、意見を述べたりする。

これらが当日のお昼までに番組素材として醸造され、具体的なコーナーが出来上がる。このネット上のやりとりや議論から、多様な意見が決まり、コメンテイターも絞られて行く。

ネットを使う視聴者は、このプロセスに参加するなり目撃するなりして、その結果が番組としてどう料理されるかを放送で楽しむことが出来る。ネットを使わない視聴者も、広い議論から凝縮された番組内容ゆえに、放送だけでも十分楽しめる品質となっているはずだ。

これを徹底すると、これまでにはないユニークな番組となり、強い日テレからだろうと視聴者が流れて来る可能性が出る。

NHKには通信と放送を連携させた、“新たな世界を切り開く”先導役が期待される。

従来の放送の中だけでの“椅子取りゲーム”に奔走することが求められているわけではない。

“午後ナマ戦争”という厳しい状況を逆手にとって、誰もやったことのない画期的な番組に挑戦してもらいたいものである。