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ソフトバンク育成新人に「ダイヤの原石」見つけた! 足はイチロー、打撃は柳田!?

田尻耕太郎スポーツライター

本多、赤星(元阪神)を上回るタイム

12月2日、ソフトバンクは育成ドラフトで指名した8人の新入団選手の会見を、福岡市内のホテルで行った。

報道陣にはそれぞれの選手のプロフィールやアンケートを記した用紙が配られる。正直、育成新人となるとアマ時代のプレーなどまったく見たことも聞いたこともない選手がほとんど(自分の勉強不足でしょうが…)。なので、この資料は彼らを知る重要なツールなのだ。

育成1巡目の幸山一大外野手(富山第一高校)は「中学時代、数学の成績オール5」。野球とは直接関係ないが、周りの記者仲間と『へぇー』と思わず感心。育成3巡目の山下亜文(小松大谷高校)は、悔しい思い出に「高校3年夏の決勝」を挙げた。今夏の石川県大会、大きな話題となった8点差をひっくり返されてサヨナラ負けしたチームのエースなのである。

パラパラと紙をめくる。思わず手が止まった。これは…!! とんでもない逸材を見つけた。育成第6巡目入団の金子将太(群馬・大間々高校)である。

何に驚いたかというと、高校通算35本塁打にして、50m5秒7という記録の持ち主なのだ。この快足がどれだけ凄いのか。インターネットで調べて、その数字を引っ張り出してみると、驚きの結果が明らかとなった。

ソフトバンクを代表する俊足プレーヤー本多雄一(盗塁王2度)は50m6秒ジャスト。巨人で代走のスペシャリストとされている鈴木尚広が5秒89、かつて5年連続盗塁王に輝いた赤星憲広(元阪神)でさえ5秒79なのだ。

経験不足で育成。だからこそ底なしの可能性が

では、なぜそんな選手が育成なのか。やはり理由はあった。じつは野手歴がまだ1年にも満たない。子供の頃からずっとピッチャーだった。だが、昨年の試合で相手打者の頭部にデッドボールを当ててしまい、その後コントロール難に陥ってしまったのだ。高校の監督の勧めもあり、今年春から外野手に転向したという。もともと打撃は好きだったらしいが、それでも通算35本塁打は大したもの。さらに「プロを意識していることを監督に伝えると、ならば木製バットで打て、と言われたので2年生の秋以降は公式戦以外の試合で木のバットを使っています」と話してくれた。通算本塁打のうち10本は木のバットで打ったという。

「欲張りかもしれませんが、足はイチロー選手<ちなみに若手時代は50m5秒7~9だったとか>、打撃は柳田選手(ソフトバンク)のような選手になりたいです」

ところで、大間々高校という学校も僕は知らなかった。それを正直に本人に告白すると、「でしょうね」と思わず苦笑い。

「じつは部員の数を言うのも恥ずかしいんですが、今の3年生を入れて12名しかいなかったんです。3年生が引退して残ったのは2年生の4名のみ。1年生は当初居たんですが、みんな辞めてしまってゼロなんです」

プロを輩出した野球部がまさかの存続危機! 「僕が活躍することで、少しでも部員が増えれば…。頑張ります」。自分の為、そして母校の為にも活躍を誓った金子将太。このダイヤの原石、ちょっと注目してみたい。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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