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かつて甲子園を沸かせた“ジャイアン”白根が嬉しい公式戦初ホームラン!

田尻耕太郎スポーツライター

甲子園史上最も劇的なエラーの”ヒール”役

【3月21日(土・祝) ウエスタン公式戦 ソフトバンク×広島 雁の巣】

春のセンバツ甲子園が開幕した3月21日。この日行われたウエスタン・リーグで、かつて高校野球を賑わせた若鷹・白根尚貴が嬉しい「公式戦初ホームラン」を記録した。雁の巣球場での広島戦。「6番三塁手」でスタメン出場した第1打席、相手先発の中村恭の真ん中ストレートをジャストミートすると、打球は左翼席後方の防球ネットに突き刺さる大きな一発となった。

昨年の夏に「スポーツナビ」の連載コラムで彼を紹介したところ(「甲子園を沸かせた“ジャイアン”白根の現在 鷹詞~たかことば~」)、想像以上の反響があって正直驚いた。やはり「甲子園史上最も劇的なエラー」である意味“ヒール役”となってしまった彼の知名度は相当なものである。

島根・開星高時代は投げれば149キロの剛腕投手、打てば通算40ホーマーの強打者としてならしたが、プロでは打者一本で勝負すると決めた。将来のスラッガーとして期待されたが、今季がもう4年目。この一発に辿り着くまで、本当に長かった。

入団すぐに「トミー・ジョン」 今季から育成に

振り返れば、入団早々に故障が発覚。右肘靭帯の損傷で「トミー・ジョン手術」を受けた。長いリハビリの中、野球が出来ないストレスから高校時代には105キロもあった体重が(公称は98キロだったらしいが)、この年だけで75キロにまで落ちたという。現在は90キロ近くまで体重が戻り、昨年は3軍で93試合に出場し、打率.297、10本塁打、45打点の成績を残した。痩せ細った頃は「打球が飛ばない」と悩んでいただけに2桁本塁打を放った際には本当に嬉しそうにしていた。しかし、プロと対戦する2軍では2年目が2打数ノーヒット、3年目が7打数ノーヒットとさっぱりで、昨シーズンをもって球団からは戦力外通告を受けてしまった。今季からは「背番号123」の育成選手として再スタートを切っているのだ。

背水の今シーズン、白根は3月の教育リーグで猛アピールした。公式な成績を調べることは出来なかったが、打率は4割を超えているはず(間違っていたらスミマセン)。白根本人も「調子いいですよ」と笑顔を見せていた。3月17日にウエスタン・リーグが開幕すると「8番三塁手」で先発。4打数2安打と活躍。「公式戦初ヒット」でアピールすると、次の試合では「7番三塁手」、そしてこの日は6番打者と着実に評価を上げている証だ。

先日は「この調子がいつまで続くか…、続けばいいんですけどね」と冗談っぽく笑っていた白根。野球ファン期待のプレーヤー。もっと堂々と胸を張って、次の一発、その次も一発とまだまだ実績を積み重ねていってほしい。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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