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「杉内2世」と呼ばれた男――坂田将人が巨人2軍相手に5年目公式戦初勝利!

田尻耕太郎スポーツライター

失点は2ランのみ。7回2安打の快投

【7月25日 ファーム交流戦 ホークス7-5ジャイアンツ 雁の巣】

何の迷いもなく左腕を振り抜いた。ホークスの先発サウスポー、坂田将人がヤングジャイアンツ打線を手玉に取った。5回までは1安打ピッチング。6回に味方失策絡みからピンチを迎え、巨人の1番・橋本到に風に乗った当たりを左翼スタンドに運ばれたが、それ以外はほぼ危なげない内容。巨人は1番の橋本をはじめ2番・寺内崇幸、3番・中井大介と1軍経験者の並ぶ打線だったが、7回2安打2失点の好結果を残して先発の役目を十分に果たした。

入団直後から「杉内になれる」

ホークス坂田将人投手(背番号120)
ホークス坂田将人投手(背番号120)

福岡出身の地元選手。2010年ドラフト5位指名を受けて祐誠高校からプロ入りした。入団すぐの新人合同自主トレから光るモノを見せていた。キャッチボールの時から投球フォームが流れるように美しく、ボールの回転もとても良かった。少し小柄な体格もあり、「体をしっかり鍛えて、下半身がどっしりしてくれば、杉内(俊哉=現巨人)のような投手になれる」と評判になった。

1年目はその片鱗をうかがわせるように、3軍ながらも2桁勝利をマークしてみせた。

しかし、2年目の2012年に坂田は左肩を痛めた。全く投げられない。秋に手術を受けたが、「なぜか手術後の方が痛くて…。顔も洗えないほどでした」と語ったことがある。

「医者からはかなり程度の重たい故障だと言われ、手術しても完全に復帰できるかは分からないと言われました。でも、僕はやるしかないと思い、手術に踏み切りました」

「もう不安はない」プロ5年目で初の2軍公式戦を経験

2013年は1年間ずっとリハビリだった。そのオフに支配下登録を解消され、育成枠に降格となった。それでも、昨年になってようやくマウンドに戻ってきた左腕は、「もう肩の不安はなくなりました」と笑顔を見せる。

今年6月28日のドラゴンズ戦(ナゴヤ)で、プロ5年目にして初めてウエスタン・リーグ公式戦、つまり2軍のマウンドに上がった。しかも先発だ。「秋のフェニックスリーグで投げる機会はあったので、変な緊張感とかなかったですけどね」。それでも「お客さんの数は違いますね、やっぱり」と振り返る。この試合は5回5安打3失点。勝敗はつかなかった。

支配下枠復帰への思い

そして今日が2度目の“公式戦”先発だった。2軍の初勝利など、他に大きな記事になることはないだろう。たかが2軍の一勝、されど坂田には大きな一勝である。

今季中に育成選手が支配下登録されるための期限は7月31日と、もう目前に迫っている。

「諦めていません。でも、正直厳しいのは分かっています。7月末がダメならば、オフの契約の時に2桁の背番号を提示してもらえるように、僕は頑張っていくだけです」

分厚い巨大戦力に風穴を開けるべく、坂田が旋風を巻き起こしてみせる。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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