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「野茂投法」と決別――“モノノフ”石川柊太「いつか、ギータさんと」

田尻耕太郎スポーツライター
ホークス2年目右腕、石川柊太の気迫あふれる投球

張本がダメ押し2ラン 香川OGは大木が連日活躍

9月3日(木)、福岡ソフトバンクホークス3軍と四国アイランドリーグplusの定期交流戦が雁の巣球場で行われ、ホークスは香川オリーブガイナーズ(香川OG)と対戦した。

香川OG   001000003 4

ソフトバンク 02020120× 7

<バッテリー>

【OG】エドワーズ、田村、太田――有山、赤松

【H】石川、金無英、星野、吉本、北方、伊藤大――栗原

<本塁打>【H】張本 【OG】宗雪

【戦評】

ホークスが前日に続き香川に連勝。チームとしては5連勝と好調だ。

打線が攻撃の手を緩めず得点を重ねた。2回に6番・勧野の先制犠飛と9番・曽根のセーフティスクイズで2点を奪うと、4回には2番・大滝の2点打、6回は1番・古澤のタイムリーで追加点。そして7回は5番・張本が今季3軍で3発目となる2ランを放ってダメ押しした。

先発の石川は5回1失点の好投。その後5人の継投で逃げ切った。

香川は勝つか引き分ければソフトバンク杯の優勝が決まったが持越し。1番・大木は2安打の活躍。前日の3安打に続き存在感を示した。一方で4番の中川は2日連続で4タコ3三振と振るわなかった。先発のエドワーズは力のある球を投げ込むも、抜け球も目立ち5回4失点(自責2)と課題を残した。

9月3日 ソフトバンク×香川、動画1(ホークス公式Ustream)

9月3日 ソフトバンク×香川、動画2(ホークス公式Ustream)

石川、8月以降4先発で防御率0点台

2年前の育成ドラフト1巡目右腕、石川柊太のピッチングを久しぶりに見た。今年は2月の春季キャンプで右肘を痛め、シーズン序盤はリハビリに時間を費やした。

実戦復帰後もなかなか観戦する機会がなかったが、8月には先発で3試合に投げて1勝2敗ながら、計19回2/3を投げて防御率0.92と安定していた。オフィシャル球団誌「月刊ホークス」が選ぶ3軍月間MVPにも輝いた。この日は5イニングを投げてソロでの1失点のみ。被安打3、奪三振5、そして無四死球が光った。

野茂との決定的違いは股関節

上体を捻らないフォームに
上体を捻らないフォームに

なにより驚いたのは投球フォームが変わっていたこと。昨年までは、上体をぐいっと捻りその反動を使って投げ込む「トルネード投法」の使い手だった。ホークス入団時もそのフォームが話題となり、やはり「野茂英雄の再来」などと言われた。

石川いわく今年の春先にリハビリから復帰を目指す過程で投球フォーム改造に着手したとのこと。

「僕は野茂さんのように股関節に柔らかさがないので、体の上下のブレも大きく、さらに肩や肘に負担がかかっていました」

1年目の昨季は右肩を痛めて2度もリハビリ行きとなっていた。そして今年は肘。復帰目前になり強く投げると、また痛む。肩の不調にも繋がる寸前までいった。それで決意した。

「リハビリの斉藤学コーチとも相談して肘を下げて投げることにしました。すると不思議と肘の痛みはなかったんです」

「横から投げているのでは、と」

トルネードで投げていた時は、最頂点のところで右手でボールを叩いて投げ下ろすイメージだった。「最初はサイドスローで投げているのでは」と思ったらしいが、実際はスリークオーターよりもまだオーバースローに近い投げ方だ。

「球の角度はつくし、スピードも変わらない。何よりスライダーのコントロールが良くなりました」

この日の投球は「あまり良くなかった」というが、それでも「途中からは修正も出来た」と納得顔。「毎日が充実しているし、順調です。ずっと3軍なのでできれば早く2軍で投げたいです」と前を向いた。

燕エースの「ライアン」小川よりも”良い”ボール

創価大学時代は1学年先輩に、現在のヤクルトのエース小川素弘がいた。そのため下級生の頃は出番に恵まれなかったが、コーチからは「本当に良いボールを投げるのは、小川よりもオマエだ」とハッパを掛けられていた。それほどの好素材の右腕である。

また、大の“モノノフ”を公言しており、以前にインタビューした時には「あーりん寄りのハコ推しです。ホークスで”モノノフ“といえばギータさんですが、1軍と3軍なのであまり話すことがない。どんどんアピールして、ギータさんと一緒にプレーできるようになって、ももクロトークで盛り上がりたいです(笑)」と大きな夢(?)を語っていた。

今後もアピールを続けていくのみだ。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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