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前ソフトバンク金無英、“恩師”のいる楽天入りが決定!

田尻耕太郎スポーツライター

ファンの前で「公開合格通達」

15日、楽天の秋季キャンプにテスト参加していた前ソフトバンクの金無英投手が合格を勝ち取った。同日に梨田昌孝新監督がファンの前で「公開合格発表」を行い、前広島の栗原健太らとともに朗報を聞いた。

鷹から鷲へ。金無英にとっては、いいチームへの移籍となるのではなかろうか。

楽天の1軍投手部門を担当する森山良二コーチは、金無英がプロ入り前に所属していた独立リーグ「福岡レッドワーブラーズ」の当時監督だった人だ。

森山コーチと出会い、鼻っ柱を折られた

当時、福岡RWが練習していたグラウンド。森山監督自ら小石を拾っていた
当時、福岡RWが練習していたグラウンド。森山監督自ら小石を拾っていた

以前に取材したメモを引用する。

金無英は15歳の時に故郷のプサンを離れて来日し、山口県の早鞆高校に進学した。甲子園出場はなく、福岡県の第一経済大学(現・日本経済大学)へ。1年生の冬に「一回死ぬ気で取り組んでみようとトレーニングをして、ひと冬で体重を10キロ以上増やした」という肉体改造のおかげで球威が増し、ドラフト候補として名が挙がるようになった。しかし、大学4年時に右肩を痛めて指名は見送られた。

「怪我はしていたけど、希望を持ってテレビを見ていた。愕然として、もう野球は辞めようと考えました」

失意の金無英に手を差し伸べたのは、その翌年から四国アイランドリーグに参戦することが決まっていた「福岡レッドワーブラーズ」だったのだ。

「森山さんとの出会いが、僕を作ってくれた」

金無英は、鼻っ柱を叩き折られた、と右手でしぐさを見せながら話した。

「右肩さえ治ればすぐプロから声がかかると考えていました。だからランニングをしていても、ちょっと辛くなると『足が痛い』と言って止めていた。要するに甘かったんです。でも、そんな気持ちを、森山さんにはすぐに見破られました。プロで選手としても活躍して、指導者の経験もある人の言葉なのですごく説得力がありました」

どこかに残っていた学生気分は取り払われ、「プロになる」という原点を思い出した。レッドワーブラーズでは抑えとして35試合に登板して17セーブをマーク。防御率0.41と文句なしの成績を残し、2008年のドラフト6位でホークスから指名を受けたのだった。

「あの1年が大きかった。福岡レッドワーブラーズには本当に感謝しています。今はなくなってしまい(09年シーズン後から活動休止状態)、本当に寂しい限りです」

2012年には開幕16試合無失点

ソフトバンクでもリリーバーとして活躍した。2012年には開幕から16戦連続無失点をマーク。この年は自己最多の29試合に登板して、2014年までは3年連続でシーズン20試合以上登板を果たした。

2015年は1軍登板なし。そして戦力外通告を受けた。プロ野球の厳しさも見た。

森山コーチと二人三脚で再び輝きを。今月末で30歳。野球人生、まだまだこれからだ。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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