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竜の攝津? ドラ育成右腕の岸本淳希、先輩吉見ら合同トレで大変身!

田尻耕太郎スポーツライター

豪華メンバーと福岡で自主トレ

一番右が岸本。右から千賀、岩田、吉見
一番右が岸本。右から千賀、岩田、吉見

目の前に、一瞬、ホークスエース右腕の攝津正がいるような錯覚を覚えた。

ドラゴンズの岸本淳希投手が投球練習を行っていた。

まるで別人だ。竜のエース右腕吉見一起をはじめドラゴンズ岩田慎司、ホークス千賀滉大、バファローズ中島宏之、イーグルス今江敏晃、マリーンズ荻野貴司らそうそうたるメンバーがそろった福岡県八女市、久留米市での自主トレ合宿に16日から参加した。初日からさっそくピッチングを行った。1月にしては力のある球だ。だが、フォームを見ると、違和感を覚えずにはいられなかった。

セットポジション。左足を上げると軸足側に上体が傾いてしまう。投げに行く。体重移動が上手く出来ていない。地肩の強さだけに頼って投げているように感じた。

左手の使い方で、投球フォームが激変した

笑顔でVサイン
笑顔でVサイン

合同トレで指導と体のケアを行う鴻江寿治トレーナー(KSA代表)は体を触った際に「肩周りがパンパンに張っていた。あれでは故障につながってしまう」と感じたという。鴻江トレーナーはその人それぞれの体、骨格にあったフォームを作り上げていくことに長けており、岸本には左手の使い方をアドバイスしていた。

「もともとは右肘を上げるときに、左肘もぐっと上げる感覚で投げていました」

新フォームでは、意識は左肘ではない。左手首をぐっと手前に曲げて、体にブレーキをかけるのである。

よく前に突っ込みすぎるなと言われるが、岸本は左の骨盤が閉じているタイプ。投げに行く際に体重移動をしても、体が前に流れにくいのである。

「僕は前に突っ込んでいっても、突っ込みすぎない体と言われました」

思い切って前に突っ込んでいい。その体の移動に、左手で急ブレーキをかける感覚。

その瞬間にパワーが生まれる。右腕は自分から振りにいくのではなく、勝手に振れる。無駄な動きや力は省かれる。故障はしにくくなる。また、左手を意識しただけで、足を上げた際の悪癖も消えた。

「今までは全力で腕を振って、やっといいボールが行くような感じでした。今は軽く投げているような感覚なのに、腕がしっかりと振れていて、球もパーンと行くんです」

吉見からも「変わった」

攝津のフォームに似ているように見える
攝津のフォームに似ているように見える

後輩のピッチングを見守る吉見も「変わった」と頷く。

そして、投球フォームの中に出来る一瞬の“間”が、ホークスの攝津にそっくりなのである。なんとなく顔も似ており、吉見をはじめ自主トレ参加メンバーはみんな「攝津さんがいる」と大いに盛り上がった。

「今まで言われたことはないです(苦笑)。嬉しいですよ、すごい投手の人に例えてもらえるのは」

目指すは、オープン戦までに支配下登録

岸本は福井県出身。2013年育成ドラフト1位で敦賀気比高校からプロ入りした。高卒育成ながら1年目にファームで抑えを任され、21試合3勝1敗6セーブ、防御率0.77と活躍。2年目の昨季は2勝5敗2セーブ、防御率5.71と成績こそ落としたが、34試合登板はチーム1位。期待されている証を残した。

「今季が3年目。毎年ですが、勝負の年です。どんどんアピールをして、開幕前、いやオープン戦前にも支配下登録を勝ちとれるようにしたいです」

20日に合同自主トレを打ち上げて名古屋に戻った。3季連続Bクラスからの逆襲を誓うドラゴンズの秘密兵器となるのを、楽しみにしている。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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