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柳田悠岐「世界の王」超えの異常ペース。開幕11戦連続四球

田尻耕太郎スポーツライター
福岡ソフトバンクホークス・柳田悠岐外野手

待望の今季初タイムリー

【4月7日(木) ホークス8-17マリーンズ ヤフオクドーム】

やっと出た。

得点圏打率「.000」とこれでオサラバだ。

7日のマリーンズ戦(ヤフオクドーム)で、福岡ソフトバンクホークスの柳田悠岐外野手が今季初タイムリーを放った。8回裏で7対13と試合の大勢は決まった展開とはいえ、柳田にとっては貴重な一打となった。球場に残ったホークスファンも大いに沸いた。

自身もチームも開幕ダッシュに失敗

開幕から4カードが終わったが、V大本命と言われたソフトバンクはこの日で引き分けを挟み3連敗。3勝6敗2分と開幕ダッシュに失敗した。シーズンは始まったばかりだが、現在5位と低迷している。

柳田は、そんな苦しむチームの象徴となっている。

昨季の首位打者がまさかの打率.194。本塁打1、打点はこの日でようやく2つ目だ。

日本記録を超えるシーズン221個ペース

だが、代わりに12球団断トツで1位の成績がある。フォアボールだ。

その数17四球。11試合連続でフォアボールを記録している。シーズン換算で221四球となり、王貞治ホークス球団会長が現役時代1974年にマークした158個(130試合)のプロ野球記録をはるかに上回る。

我慢、我慢…。工藤公康監督やコーチからはそんな言葉が毎日のように聞かれる。7日の試合前練習では、工藤監督が柳田に長い時間声をかけるシーンもあった。

その内容は不明だが、工藤監督に試合前に話を聞くと、このように話した。

「シーズンが始まったばかりでこんな攻め方は本来はない。短期決戦や、シーズンの後半ならば、その年に結果を残している打者に対して『四球でOK』という場合もあるけど。それだけ一流という証」

工藤監督、藤井コーチ「責任を背負うな」

また、藤井康雄打撃コーチは柳田に「責任を全部背負うな」と声を掛けていた。

6日の試合、満塁機に打席に立った柳田は明らかに力んでいた。いつもは左脇を小刻みに動かしながらリズムをとるが、その打席ではバットがピタッと止まったまま。上半身に力が入っているように見えた。

それについても工藤監督が、言葉を継ぐ。

「背負わなきゃいけない部分もある。でも、それを1人で背負うことはない。打“線”なんだから」

そして、こんな攻め方が1年間ずっと続くことはない、とも言った。

7日、今季初タイムリーを放って一塁に立った柳田だが、試合展開もあり厳しい表情のまま。そして納得のいく打撃ではなかったのか首を傾げていた。

いまは苦しい。しかし、柳田には天真爛漫な笑顔が似合う。強打者の宿命を乗り越えた先に、さらにとんでもなく成長した柳田の未来があるはずだ。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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