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高校時代は公式戦2勝のみのドラフト上位候補左腕ら、叩き上げの好素材たちが揃う関甲新学生野球

高木遊スポーツライター
ドラフト上位候補に挙がる新潟医療福祉大の笠原祥太郎

はじめまして。2016年4月からYahoo!個人に参加させていただくことになりました。スポーツライターの高木遊です。主に大学野球、中学硬式野球、高校野球を取材しているので、第1回目は大学野球を取り上げます。

※()内は学年・出身高校

高校時代は公式戦わずか1勝のドラフト候補左腕

今回紹介するのは、埼玉、群馬、栃木、茨城、山梨、長野、新潟の大学19校(3部制)が加盟する関甲新学生野球連盟の好選手たちだ。

このリーグの特徴は、高校時代には決して有名ではなかった選手、埋もれていた選手たちが、各校個性豊かな指揮官のもとで成長し、力をつけていくことが挙げられる。過去には安達了一内野手(オリックス/上武大出身)、岡島豪郎外野手(楽天/白鴎大出身)、牧田和久投手(西武/平成国際大出身)らを輩出。2012年春には、上武大が全日本大学野球選手権を制し日本一に輝くなどレベルの上昇も著しいリーグだ。

まず、今年のドラフト候補で上位候補に挙げるプロ球団スカウトもいる好左腕が新潟医療福祉大(創部4年目)の笠原祥太郎投手(4年・新津)だ。

笠原祥太郎
笠原祥太郎

出身の新津高は1984年春に甲子園出場しているものの、笠原がエースとなった1年秋以降の公式戦は4季連続初戦敗退。3年春と最後の夏こそ1勝を挙げたが、2回戦で甲子園に出場した新潟明訓を追い詰める好投をするも勝利目前でサヨナラ負け(4対5)を喫し2回戦で高校野球人生を終えた。

実はこの時に新潟明訓を率いていたのが、現在新潟医療福祉大を率いる佐藤和也監督だった。だが当時は、「僕が最後の夏(監督退任)を公言していたので、選手が緊張しているだけだと思っていました」という。

しかし、その後一般入部してきた笠原の投球を見て「そうじゃなくて、本当に好投手だったんだなって(笑)。思わぬ授かりものです」と話すように、現在では上位進出に欠かせない大黒柱となっている(2016年春季リーグ4月16日現在で、21イニング無失点中で3戦3勝)。

ヒジを柔らかく使ったフォームから最速146km/hのストレートに、タテに割れるカットボール(雑誌等では縦スライダーと言われているが本人の中ではカットボールだそう)などを織り交ぜる。

視察したスカウトは「馬力を感じるし、球数が多くなっても長いイニングを投げ切るタフさがある」(A球団スカウト)「一つひとつのボールのレベルが高く、まだまだ伸び盛り」(B球団スカウト)と一様に高い評価を受けている。

今後のリーグ戦はもちろんのこと、今年7月に行われる日米大学野球では第1戦(7月12日)、第2戦(13日)が地元・ハードオフエコスタジアム新潟で行われるだけに、そこでの勇姿も期待したくなる。

高校時代は下位打線を打つことが多かった“華のある”遊撃手

狩野行寿
狩野行寿

野手で注目したいのは、平成国際大の狩野行寿遊撃手(4年・川越工/かりの・ゆきかず)。

川越工時代は決して小柄ではない(現在179cm)が、2番や9番を打っていた打者で最高成績は埼玉県大会4回戦。そんな無名の選手だったが、平成国際大を率いる大島義晴監督が、肩の強さに注目した。「肩の強さは長打力に比例する」という持論のもと、打撃面での伸びシロに期待し獲得。

「現在のアマチュア球界でグラブさばきの上手い選手は多くいますが、狩野のようにしっかり足を使って捕球ができる選手は少ない」と大島監督が高く評価する球際に強い守備に加え、打撃もその目論見通り急成長。3年春には打率.378を記録し首位打者に輝き2本塁打も放つなど、今では4番を任せられるまでになった。

4月16日に行われた上武大戦では、初回に四死球やミスが続発し8点を奪われる苦しい展開となったが、主将代行として気持ちを切らさず味方に声をかけ続け、再三にわたる好守や力強い長打を放ち、チームを鼓舞したのも好印象だった(最終的には8対14で敗戦)。

MAX157km/hの“3番手投手”も

この16日の試合では、長打力が売りでシーズン前にプロ志望と話していた上武大の長澤壮徒外野手(4年・甲府工※高校時代は遊撃手、昨年は二塁手、今季は右翼手)と山本兼三一塁手(4年・日本航空)の2人に加え、1年時からスタメンマスクを被る吉田高彰捕手(2年・智辯学園)に本塁打が飛び出した。

また上武大の2番手として登板した185cm右腕・西村雅暉投手(1年・熊本国府)が勢いのある140km/h台中盤のストレートを連発し、大器の予感を漂わせた。

さらに白鴎大の191cm右腕・中塚駿太投手(4年・つくば秀英)が先週10 日の関東学園大戦で157km/hを記録した。現在は、制球力が安定せず、左右の二枚看板に継ぐ“3番手右腕”であるが、ついに大器覚醒の予感がある。

185cmの長身から140km/h台中盤のストレートを投げ込む西村雅暉
185cmの長身から140km/h台中盤のストレートを投げ込む西村雅暉
先日、157km/hを計測した中塚駿太
先日、157km/hを計測した中塚駿太

このように高校時代は無名でも大学で力をつけた好素材が切磋琢磨する関甲新学生野球リーグにも、ぜひ注目をしていただけると嬉しい。

《関甲新学生野球連盟の主な2016年ドラフト候補》※プロ志望の選手のみ

()内は出身高校'

◎上武大

山下仁投手(須磨翔風)

山本兼三一塁手(日本航空石川)

長澤壮徒外野手(甲府工)

◎白鴎大

田村圭投手(国学院栃木)

中塚駿太投手(つくば秀英)

大山悠輔内野手(つくば秀英)

◎平成国際大

狩野行寿遊撃手(川越工)

◎新潟医療福祉大

笠原祥太郎投手(新津)

取材・文・写真=高木遊

取材協力=関甲新学生野球連盟

スポーツライター

1988年10月19日生まれ、東京都出身。幼い頃から様々なスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、ライター活動を開始。大学野球を中心に、中学野球、高校野球などのアマチュア野球を主に取材。スポーツナビ、BASEBALL GATE、webスポルティーバ、『野球太郎』『中学野球太郎』『ホームラン』、文春野球コラム、侍ジャパンオフィシャルサイトなどに寄稿している。書籍『ライバル 高校野球 切磋琢磨する名将の戦術と指導論』では茨城編(常総学院×霞ヶ浦×明秀日立…佐々木力×高橋祐二×金沢成奉)を担当。趣味は取材先近くの美味しいものを食べること(特にラーメン)。

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