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ヨーロッパの難民危機

高橋和夫国際政治学者/先端技術安全保障研究所会長

最近の難民の急増には、いくつかの背景がある。まずシリアの内戦があげられる。難民の中で最大のグループがシリア人であるからだ。なぜ、この時期に突然にシリア難民がヨーロッパに向かい始めたのだろうか。三つの要因が指摘できる。一つは、難民の増大に、国際的な支援の方が対応していないという現実がある。内戦前のシリアの総人口は2200万人ほどと推定されているが、その過半数が難民化している。日本の人口比に当てはめれば6000万人以上が難民化している計算になる。難民は、故郷を離れたもののシリア国内に留まっている国内難民と周辺諸国に流出した難民に二分できる。ヨーロッパに押し寄せているシリア人の難民の大半は、シリアの周辺諸国に逃れていた難民であろう。最大の難民受け入れ国はトルコであり、200万を収容している。既にトルコ政府は50億ドルを難民支援に支出した。しかし、増大する難民への対応に苦慮している。しかもヨーロッパ諸国を始め国際社会からの支援は十分ではない。難民たちがヨーロッパへと動き出した背景である。ヨルダンにしてもレバノンにしても、人口の何割にもあたる難民を受け入れており、その負担にあえいでいるのが現状である。しかも、この二つの国はパレスチナ難民をも多数受け入れている。その負担の重さが想像できよう。

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国際政治学者/先端技術安全保障研究所会長

国際情勢をわかる言葉で、まず自分自身に語りたいと思っています。北九州で生まれ育ち、大阪とニューヨークで勉強し、クウェートでの滞在経験もあります。アメリカで中東を研究した日本人という三つの視点を大切にしています。映像メディアに深い不信感を抱きながらも、放送大学ではテレビで講義をするという矛盾した存在です。及ばないながらも努力を続け、その過程を読者の皆様と共有できればと希求しています。

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