サウジアラビア、アラブ首長国連邦、トルコの中東三か国歴訪中の安倍総理への助言

まず2011年の東北の震災の際に三国の政府から、そして民間団体から寄せられた人道援助と復興支援に感謝の念を伝えたい。

イスラムの二大聖地メッカとメディナを抱えるサウジアラビアにおいては、日本においてイスラム教徒が急増し、モスク建設ラッシュが起こっている事実に言及したい。また日本在住のイスラム教徒が東北震災後の支援に立ち上がった事実にも触れたい。

サウジアラビア国王が伝統の維持と近代化への要請という二つの潮流の中で努力している姿に共感と敬意を表明したい。

アラブ首長国連邦においては、人的資源の開発に関しての日本の協力を強調したい。同時に日本が支援し日本が教えるという上からの視線ではなく、日本がアラブ首長国連邦の驚異的な経済発展から学ぶという姿勢を示したい。政府の大胆な投資と外資の導入などで成功したドバイの経験はアベノミクスの掲げる目標と通じるものがあるだろう。だがドバイの成功を賞賛するにあたっては、アブダビとのライバル関係に留意したい。アブダビに関しては、非在来エネルギーの開発や環境へ配慮した都市建設などに注目し、日本もその経験から学ぶという態度で望みたい。

トルコにおいては、 まずはトルコのエルドアン政権の経済運営に敬意を表したい。インフレを押さえ込み、長期的な安定軌道へと経済を導いた手腕を評価したい。

第二にクルド人との和解努力に対しても敬意を評したい。これまではトルコ共和国は、自らをトルコ人国家と規定し、トルコ人以外は国内に存在しないという建前をとってきた。国内の少数派を無視してきたわけだ。クルド人が人口の四分の一を占めるという事実にもかかわらずである。この建前と現実の矛盾がトルコ共和国を苦しめてきた。具体的には、クルド人武装勢力PKK(クルディスターン労働者党)の蜂起が1980年代から続いていた。ヨーロッパ諸国におけるトルコに対する人権蹂躙の批判の根拠は、こうした矛盾に満ちたクルド政策であった。より正確にはクルド政策の欠如であった。

エルドアン政権はPKKとの交渉に踏み切り、クルド人の存在を認め、また独自の民族としての文化的な表現を許してきた。そして3月にはPKKとの停戦協定へと漕ぎ着けた。トルコは、国家としてのアイデンティティーの再定義という身を焼くように厳しい過程の最中にある。エルドアン政権の勇気ある取り組みに真摯な敬意を表したい。

さらに中東、コーカサス、中央アジアにおけるトルコと日本の協力を議題としたい。たとえばトルコとの共同でのイラク北部のクルディスターン自治政府への支援などを論じたい。トルコの財界は建設業界を筆頭にイラク北部のクド人自治地域での経済発展で実績を築き、その繁栄から大きな利益を上げてきた。日本の対イラクODAをトルコの建設業界との協力で実施するなどのスキームを推進したい。同様な協力関係を中央アジアにおいても進展させたい。

さらに中東和平問題においてもトルコとの連携を深めたい。基本的には国内政治の力学からアメリカはイスラエルのヨルダン川西岸地区への入植を容認してきた。日本としてはEU諸国そしてトルコなどと連携して、パレスチナ自治政府の支援、イスラエルの入植活動への粘り強い反対、そして中東和平再開のために影響力を行使するようにとのアメリカへの働きかけに当たりたい。

またシリアからの難民の多くの受け入れているトルコに対する国際社会からの支援を訴えたい。日本も、それなりの貢献を表明すべきである。

最後にイランの核開発問題の平和的な解決に向けて日本とトルコで歩調を合わせたい。トルコも日本も、過去にイランの濃縮ウランを加工のために受け入れる提案を行った経緯がある。そしてトルコの提案は、イラン側の同意の取り付けに成功した。結局アメリカが新たな制裁を発動して、この動きは水泡に来たのだが。現在のイランとP5+1の交渉を側面から支援する上でも、日本とトルコの問題の平和的解決に寄与したいとの意思表明は重要であろう。また日本のイランへの関心の強さを訴えるために、トルコ訪問時に日本とトルコ二国の協調したイランへの継続的な復興支援を強調したい。アメリカが反対しにくい人道的な関与こそが、この難しい時期における日本とイランの関係を守る一助となるだろう。

トルコをいかに日本が重視しているかを示す真摯な言動により、都知事の誤解を招いた発言のマイナスを取り戻したい。