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「質の高い質問」をした議員は誰か--今国会「国会議員質問力評価」1位から70位までの全議員名を発表

高橋亮平日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

2014年予算委員会の「国会議員質問力評価」最終結果報告まとまる

万年野党“結党”大会で、国会議員の質問数や議員立法数、質問主意書数など活動量による評価とともに、質問の「質」についても三ツ星議員の表彰を行った。表彰されたのは、NPO法人「万年野党」の行った、「国会議員質問力評価」の上位議員だ。

1月から続いた通常国会も、今月で会期末を迎える事になる。今回は、この「国会議員質問力評価」の最終結果について報告しながら、今国会の「質の高い質問」を考えるキッカケにしてもらいたいと思う。

今回のこの「国会議員質問力評価」の対象となったのは、今年の1月から始まり、来週で閉会となる2014年通常国会(第186国会)の会期冒頭および本予算審議冒頭の衆参予算委員会各2日間の計8日間。衆議院予算委員会は1/31・2/3・2/10・2/12の4日間、および参議院予算委員会については2/5・2/6・3/3・3/4の4日間に質問した70議員となっている。

評価者は、主観的になりがちな「質」の評価を出来る限り客観的にするため、

1)同僚国会議員による評価

2)関係省庁の職員・元職員(匿名の評価者を事務局にて選考)による評価

3)政策専門家(評価者を事務局にて選考)による評価

4)一般有権者(当会会員)による評価

の4つのカテゴリーの評価者により、多角的な目での評価とした。

各評価者は、委員会傍聴、TV中継・動画視聴などの方法により質疑の模様を視聴した上で、

1)質問するテーマの選定が適切か

2)質問技術のレベルは高いか

というそれぞれの要素ごとに、特に良い=5、良い=4、普通=3、良くない=2、特に良くない=1の5段階で評価した。

またさらに、評価の理由についてコメントも自由記載しており、合わせて紹介していこうと思う。

上位には各党の政調会長、政調会長代理など党の政策担当者が並ぶ

今回の「国会議員質問力評価」で、第1位になったのは、自民党政調会長代理でもある元官房長官の塩崎恭久 衆議院議員の1月31日の予算委員会での質問。10点満点の評価で、一般の評価で9.3点と1位となったほか、政策専門家の評価も9.2点で3位、官僚・元官僚の評価も9.0点で3位といずれも高く、国会議員からの評価が7.8点の4位と少し落ちるものの総合で堂々の第1位となった。

主な意見を紹介しておくと、「全体像が把握しやすい独自資料作成」(会員)、「限られた時間で、経済政策の重要論点を網羅。与党ながら、政府の方針の不明確な部分をきっちりと確認」(官僚)、「政府に正しい方向でコミットさせる質問手法はベテランとして練れている」(専門)といったものなどがあった。

第2位は、結いの党政調会長の柿沢未途 衆議院議員の2月3日の質問だった。国会議員の評価で8.0点の1位となったほか、官僚・元官僚の評価が9.3点の2位、政策専門家の評価が9.0点の4位、一般の評価も8.3点の4位と安定して高得点を獲得して総合で2位となり、「総額ありきの補正予算の問題点を、具体例を挙げつつ的確に指摘」(官僚)、「基金積み増しに依存し財政規律が弱まっているという点を具体例により提起し大臣に検証をコミットさせたのは評価」(専門)などと評価された。

第3位は、みんなの党幹事長の水野賢一 参議院議員の2月6日の質問だ。官僚・元官僚の評価は満点の10.0点だった。政策専門家の評価も9.5点の1位だったほか、一般の評価が8.8点の2位と高得点だった。一方で、国会議員の評価だけが5.7点の43位と極めて低かったため、総合で3位となってしまった。「規制改革、電力政策、天下りにつき、政府の方針を厳しく追及」(官僚)、「政府側説明の矛盾・問題を質疑の中で的確に明らかにした」(専門)などと高く評価された。

第4位は、共産党副委員長兼政策委員長の小池晃 参議院議員の3/4日の質問だった。政策専門家の評価では9.5点と同点だが1位となった。官僚・元官僚も9.0点の3位、一般の評価も8.3点の4位と高く、国会議員の評価が6.0点の27位と少し低いものの、総合で高い評価となった。「集団的自衛権につき、(立場は別として)論点を明確にする良い質問」(専門)、「模範的野党質問。答弁する理事者たちを困らせ、一定の成果も導いた」(官僚)と高く評価された。

第5位は、みんなの党政調会長の中西健治 参議院議員の3月4日の質問。「日本郵政顧問の退任につながった質問」(専門)、「予算査定への追及など、論理的でよい質問」(官僚)と評価され、官僚・元官僚の評価が9.0点の3位、政策専門家の評価が8.5点の5位、一般の評価が8.0点の7位、国会議員の評価も7.0点の12位となった。

第6位から第10位までの顔ぶれは・・・

第6位は、みんなの党代表の浅尾慶一郎 衆議院議員の2月12日の質問。「論理的に関係大臣らにつめよって総理にコメントを求める質問技術は高い」(官僚)と評価され、官僚・元官僚の評価が8.5点の6位、政策専門家の評価が8.3点の7位、一般の評価が8.0点の7位、国会議員の評価も7.5点の7位と安定した評価を得て、第6位となった。

第7位は、共産党の佐々木憲昭 衆議院議員の2月3日の質問。一般の評価が8.5点の3位と極めて高く評価された他、「様々な資料や省庁レクなど、十分な準備を行い自ら問題意識をもって、質疑に臨んだことが伺える」(専門)などと、政策専門家の評価も5位、官僚・元官僚の評価も8.0点の7位と高く、国会議員の評価も7.9点の20位と評価され、総合で7位となった。

第8位は、民主党最高顧問の岡田克也 衆議院議員の1月31日の質問。「外務大臣としての経験を元に、問題意識を具体的に指摘」(会員)などと一般の評価が8.2点の6位と評価された。国会議員の評価が7.5点の7位、政策専門家の評価が7.5点の9位だった他、「特定秘密法という追及の余地あるテーマなのに、政府を追及しきれていない」(官僚)と官僚・元官僚の評価が7.3点の13位と厳しかった。

第9位は、維新の会幹事長代行の松野頼久 衆議院議員の2月12日の質問。国会議員の評価が共に7.5点の7位、政策専門家の評価が7.7点の8位、官僚・元官僚と一般の評価が7.0点の9位と安定した評価を得て9位となった。「何度か指摘された問題だが、基金予算を積んで使い残しているなどの問題指摘」(専門)などと評価された。

第10位は、結いの党代表の江田憲司 衆議院議員の2月12日の質問。国会議員の評価が8.0点と、全体を通じての1位だった他、一般(9位)、官僚・元官僚(12位)、政策専門家(13位)と共に7.0点と評価され10位となったが、「いつもと比べ、質問としてはやや弱かった」(官僚)という声も上がった。

10位までの議員は、質問の「質」における「三ツ星議員」として、「万年野党“結党”大会」で表彰した。

「質」の評価が低かった議員は何が悪かったのか

文字数の関係もあり、全てを紹介する事はできないが、どういう質問がどう評価されているかを知っていただくために、下位5人についても紹介しておく事にする。

今回対象となった70人の議員の質問のうち、第66位となったのは、民主党の前田武志 参議院議員の2月5日の質問。最も評価が高かったのは国家議員の評価で6.4点で70人中25位と比較的高い評価を受けた。しかし一方で、官僚・元官僚の評価は4.0点で63位、政策専門家からの評価は、「老人クラブの政治談議を聞いているような印象」(会員)、「テーマ設定の問題意識がよくわからない」(専門)との評価もあり、4.0点で63位、一般の評価は3.0点の70位と厳しい評価だった。

第67位は、社民党の福島みずほ 参議院議員の3月4日の質問。国会議員の評価が5.5点の52位だったが、それ以外は、「集団的自衛権を扱っているが、同じ論点を何度も繰り返し、感情的に叫ぶだけ。小池議員と比べ、事前準備・質問技術の差が明らか」(専門)などと専門家の評価は4.0点の61と厳しい評価。官僚・元官僚の評価も4.0点の63位、一般の評価も4.0点の65位となった。

第68位は、自民党の宮腰光寛 衆議院議員の2月10日の質問。一般の評価が4.3点で60位、政策専門家の評価では「政府広報のような印象」(専門)など4.0点で61位、国会議員の評価も4.0点で62位、官僚・元官僚の評価も4.0点で63位だった。

第69位は、維新の会の石原慎太郎 衆議院議員の2月12日の質問。国会議員の評価は5.5点で44位と比較的悪くなかったが、一般の評価は4.0点の65位、官僚・元官僚の評価は3.0点の70位、政策専門家の評価も3.3点で70点、「言論としても古臭く、国会でこうした議論をする価値はない」(専門)との厳しい意見もあった。

第70位は、維新の会の中野正志 参議院議員の2月6日の質問だった。一般の評価は4.3点で60位、官僚・元官僚の評価は4.0点で63位、国会議員の評価は3.9点で65位、政策専門家の評価は3.7点で68となり、コメントもなかった。

11位〜65位の結果は、以下の通り

11位:有田芳生(民主・参・2/5)、12位:山田宏(維新・衆・2/3)、13位:桜内文城(維新・衆・2/3)、14位:長妻昭(民主・衆・1/31)、15位:西田実仁(公明・参・3/4)、16位:海江田万里(民主・衆・2/10)、17位:古川元久(民主・衆・1/31)、18位:大熊利明(みんな・衆・2/3)、19位:佐藤正久(自民・参・2/5)、20位:原口一博(民主・衆・1/31)、21位は同点で、中谷元(自民・衆・1/31)、中田宏(維新・衆・2/3)、長妻昭(民主・衆・2/10)、大串 博志(民主・衆・2/12)、西田昌司(自民・参・3/4)、26位:魚住裕一郎(公明・参・2/6)、27位:松沢成文(みんな・参・2/6)、28位も同点で、足立信也(民主・参・3/3)、那谷屋正義(民主・参・3/3)、30位:安井美沙子(民主・参・2/5)、31位:石井啓一(公明・衆・1/31)、32位:岡田克也(民主・衆・2/10)、33位:野田聖子(自民・衆・1/31)、34位:鈴木克昌(生活・衆・2/12)、35位:櫻井充(民主・参・3/3)、36位:上田勇(公明・衆・2/10)、37位:村岡敏英(維新・衆・2/3)、38位:仁比聡平(共産・参・2/6)、39位:若松謙維(公明・参・3/4)、40位:藤井孝男(維新・衆・2/12)、41位:阪口直人(維新・衆・2/3)、42位:脇雅史(自民・参・2/5)、43位:佐藤正夫(みんな・衆・2/3)、44位:東徹(維新・参・2/6)、45位:片山虎之助(維新・参・3/4)、46位:羽田雄一郎(民主・参・2/5)、47位:笠井亮(共産・衆・2/12)、48位:杉田水脈(維新・衆・2/3)、49位:畑浩治(生活・衆・2/3)、50位:鴨下一郎(自民・衆・2/10)、51位も同点で、古屋範子(公明・衆・2/10)大島敦(民主・衆・2/10)、53位:浜田和幸(改革・参・2/6)、54位:島尻安伊子(自民・参・2/5)、55位:山谷えり子(自民・参・3/3)、56位:吉田忠智(社民・参・2/6)、57位:大家敏志(自民・参・2/5)、58位:薬師寺みちよ(みんな・参・3/4)、59位:高市早苗(自民・衆・2/10)、60位:篠原孝(民主・衆・1/31)、61位:小池勝也(民主・参・3/3)、61位:荒井広幸(改革・参・3/4)、63位も同点で、中山成彬(維新・衆・2/12)、伊達 忠一(自民・参・3/3)、山本順三(自民・参・3/3)と並ぶ。

詳細は「国会議員質問力評価」2014年予算委員会版<最終結果>を見ていただきたい。なお、国会での質疑等、議事録は「国家会議録検索システム」で議員名、日時等で簡単にすべて検索できる。

是非、有権者のみなさん、また、国会議員のみなさんにも、上位議員の質問や、下位議員の質問を見ていただきながら、また、別の視点から国会質問を評価してもらいたい。

また、万年野党では、今回の「国会議員質問力評価」などでも上位にランクインしている様な「政策通」国会議員や政策分野の関係者などをゲストに、政策について語り合う「政策カフェ」も行っている。

こうした場所にも是非、ご参加いただきたいと思う。

特定非営利活動法人「万年野党」

Facebook: /yatoojp

Twitter:  @yatoojp

事務局長 高橋亮平

Facebook: /ryohey7654

Twitter:  @ryohey7654

日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、神奈川県DX推進アドバイザー、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員。26歳で市川市議、全国若手市議会議員の会会長、34歳で松戸市部長職、東京財団研究員、千葉市アドバイザー、内閣府事業の有識者委員、NPO法人万年野党事務局長、株式会社政策工房研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員等を歴任。AERA「日本を立て直す100人」に選ばれた他、テレビ朝日「朝まで生テレビ!」等多数メディアに出演。著書に『世代間格差ってなんだ』(PHP新書)、『20歳からの社会科』(日経プレミアシリーズ)、『18歳が政治を変える!』(現代人文社)ほか。

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