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地方政治における政党の地域特性: 都道府県別政党割合ランキング

高橋亮平日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

地方議員1万5千人以上を選ぶ統一地方選挙

いよいよ統一地方選挙も12日投開票の前半戦がスタートした。

こうした状況でも、多くの方々にとっては、「政治なんて誰がやったって変わらない」といったところだろうか。「政治不信」で「政治離れ」が進んでいると言われる中、さらに、そもそも地方自治に関心が薄いことを考えれば、「自分たちには関係ない事」と考える人も多いのかもしれない。

前回の2011年統一地方選挙においては、44の道府県議会議員選挙や13の知事選挙など、1,797選挙の約58.0%にあたる1,042選挙が実施され、4年前の統一地方選挙では全国に37,302人いる地方政治家の内15,841人が選ばれた。

統一地方選挙とは、これだけ多くの政治家を一気に選ぶ、国民にとって非常に影響の大きい出来事である点を共有いただければと思う。

平成の大合併によって、1999年から2006年の間に、自治体の数は約3,000から約1,800に激減した。2003年時点との比較でも、約62,000人以上いた地方政治家の数は、この平成の大合併と時期を同じくして約2/3に、さらにその後も定数削減の流れの中で、2014年には約33,000人まで大きく減った。

図表1:地方政治家(知事・市区町村長・地方議員)総数の推移

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図表2:地方政治家(知事・市区町村長・地方議員)の所属党派別人数の推移

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図表1と図表2を見比べてみると、地方政治家総数の減少の推移と、無所属議員の減少の推移のグラフは、極めて似た形をしており、こうした地方政治家の数の減少の多くは、実際には、圧倒的多数だった無所属の議員数の減少とほぼ重なっており、政党の議員数にはほとんど影響していないことが分かる。

逆に言えば、「地方政治といえば無所属」という常識も少し変わりつつあり、政党の公認を取る議員の割合が増えてきているとも言える。

図表3:政党公認地方政治家(知事・市区町村長・地方議員)の数の推移

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総数としては、圧倒的に無所属議員が多いため、どの政党もドングリの背比べといった形だが、無所属議員と諸派の議員を除いて、政党所属議員だけで政党ごとにその推移を見ると、そのトレンドが見えて来る。

議員総数が減ってきていることが大きく影響しているのだが、2003年と2014年との比較で自民は3,502人が3,011人に、公明も3,397人が2,926人に、共産については4,140人から2,679人まで一気に減っており、社民党は664人が323人に半数以下に激減した。

図表4:統一地方選の年の新興政党の地方政治家(知事・市区町村長・地方議員)の数の推移

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一方、図表4で見ると、2003年に約1,000人だった民主党の地方政治家は、次の統一地方選のあった2007年の年末には、約1,400人、次の2011年には約1,500人と選挙の度に増え続けている。前回の統一地方選挙のあった2011年と言えば、東日本大震災の年であり、その年の9月までが菅政権、9月以降が野田政権という時期であり、こうしたデータを見ると、震災直後の統一地方選挙では、民主党議員は前回時よりも約100人も議員を増やしている様に見える。

2009年に結党したみんなの党は、2011年が初めての統一地方選挙になり、300人弱の地方議員を誕生させている。

意外に思う方もいるかもしれないが、維新の党はもちろん、日本維新の会も統一地方選挙後の2012年に結党したため、統一地方選挙としては、2015年が初めてとなる。一方で、2010年に立ち上げた大阪維新の会は諸派の一部としてカウントされている。

地方選挙の場合、国政選挙のようにドラスティックに新たな政党の議員が増えるという機会は少ないが、ただ、それだけに、逆に政党の地方組織をつくることは難しく、政党にとっては、党の基盤を作っていくためにも、この統一地方選挙が4年に1度しかない貴重な機会になる。

本来なら地方課題で投票をするべき地方選挙だとは思うが、こうした側面から地方政治を見ることによって、興味や関心を持ってもらえればと思う。

都道府県ごとに各政党の割合を見ていくとご当地の特徴が分かる

こうした地方政治における各政党による割合を、都道府県ごとの首長と議員を含む地方議員数に占める各政党の割合で見てランキングしてみると、それぞれの政党や地域の特徴も見えてきた。

図表5:都道府県別政党割合ランキング

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まず、自民から見ていこう。最も多かったのが富山県で36.25%を占めているのだが、それでも自民の割合は1/3強でしかない。2位の石川県では1/4程度にまでなっており。4位5位でも10%台、47位の長野県では1%しかいないのだ。実際には自民党を支持している議員が無所属として活動することになるからだ。

無所属が全て自民党系や保守系というわけではないが、無所属が最も多い山梨県では86.12%をも占めている。

逆に、無所属の少ない地域には東京都、大阪府、神奈川県、京都府と都市部が並んでおり、東京都では自民と無所属を足しても過半数に行かない。

野党第1党の民主党が最も多いのも東京都となっており、無所属議員が少ない地域と同様に、以下、神奈川県、京都府、大阪府と大都市圏が並ぶ。

民主が少ない地域には長野県、群馬県、高知県、沖縄県と並び、山梨県にいたっては民主議員がゼロになっている。つまり、国政で民主を応援している地方議員は、無所属や他政党、諸派などにいることになる。こうした事も地方議会と政党の関係が分かりにくいところと言える。

公明・共産は、どちらも関東・近畿の都市部に多く、公明は大阪府で2割強、次いで東京都、埼玉県、神奈川県、兵庫県とならび、共産は京都府で2割弱を占め、次いで大阪府、東京都、埼玉県、滋賀県と並ぶ。

大阪にいたっては、公明共産で3割も占めており、都構想の住民投票も控え、維新との関係がどうなるかも注目となる。逆に少ない地域で見ると、公明が東北・北陸で少ないのに対し、共産は四国・九州で少ないというのも特徴的だと思う。

次に維新についてだが、国政とくに衆議院では1割程度を占めるものの、データ上は、最も多い大阪でも0.64%、31府県で1人もいないということになっている。維新の議員がここまで少ない理由は大きく2つある。1つは維新の党の元となった日本維新の会が結党したのが2012年であり、前回の統一地方選挙の後だったこと。もう1つが、現在もとくに大阪には、維新の党ではなく大阪維新の会に所属している議員が多くいるため、データ上は諸派にカウントされていることなども影響している。維新については、とくに大阪での結果に注目が集まるが、逆に関西圏以外では規模はわからないものの確実に増えることが予想できる。

最後に社民だが、実際に議員がいないのは9県しかなく、富山・岩手などでは公明なみに議席があるということなどが分かる。

さて、全都道府県の政党割合を紹介して今回は終わりにしたい。統一地方選もすでに前半戦がスタートしている、ぜひ有権者の方々には投票に行ってもらいたいと思う。

図表6:都道府県別政党割合一覧

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日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、神奈川県DX推進アドバイザー、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員。26歳で市川市議、全国若手市議会議員の会会長、34歳で松戸市部長職、東京財団研究員、千葉市アドバイザー、内閣府事業の有識者委員、NPO法人万年野党事務局長、株式会社政策工房研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員等を歴任。AERA「日本を立て直す100人」に選ばれた他、テレビ朝日「朝まで生テレビ!」等多数メディアに出演。著書に『世代間格差ってなんだ』(PHP新書)、『20歳からの社会科』(日経プレミアシリーズ)、『18歳が政治を変える!』(現代人文社)ほか。

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