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<第三次安倍内閣の国会議員活動データランキング>防衛相が三冠。政策通と言われる議員たちは?

高橋亮平日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

第二次安倍内閣の様に女性の活躍はなかったが、第三次の重点政策は見えてくる

10月7日、内閣改造が行われ、第三次安倍内閣の閣僚の顔ぶれが決まった。

振り返ると第二次安倍内閣の内閣改造が行われた2014年9月の際には、『新大臣の国会質問回数1,2位は女性! 安倍改造内閣の新閣僚を、国会での議会活動データでランキング』と題してコラムを書いた。

今回の第三次安倍内閣においても同様に新閣僚について国会での議会活動データでランキングを行ってみたが、第二次の際の様な女性の活躍は見えないが、いみじくも第三次安倍内閣の重点政策も見えてくる様で面白い。

政府はもちろん自民党内でも秋の臨時国会を行わない方向も話し合われている様だが、政権の新たな政策を国民に対してしっかり説明し、議論するためにも、国会を開き新たな閣僚で挑んでもらいたいものだ。

これまでも「国会議員三ツ星データ」として、国会議員の活動データを元に「三ツ星国会議員」を紹介する他、質問回数・議員立法提出回数・質問主意書提出回数などを全くしていない「オールゼロ議員」なども紹介してきたが、今回は、内閣改造を受けて、選ばれた閣僚たちの国会議員としての国会での活動データについて紹介したいと思う。

先日9月27日に閉会となった189通常国会については、現在集計中であり、188国会も3日間の特別国会であったため、今回は182国会から昨年末の衆議院総選挙前の187国会までの2013年・2014年データで、紹介していく事にしたい。

まず、国会での質問回数についてだ。衆参両院の中で、最も国会質問を行ってきた議員について見ていきたい。

第3次安倍内閣での最多質問議員は防衛相。2位は沖縄・北方担当相、3位は文部科学相

第3次安倍内閣の閣僚の中で最多質問だったのは182国会から187国会までの間に30回もの質問をした中谷元 防衛相(衆・高知2)だった。この間に30回という質問回数は、閣僚に限らず自民党内全体で見ても2位に当たる回数であり、衆議院全体でも71位と極めて積極的に国会内で活動していた事が分かる。

次いで質問回数が多かったのが、8回で島尻安伊子 沖縄・北方担当相(参・沖縄)。参議院議員なので単純比較はできないが、この回数は参議院全議員中154位に当たる。

次いで3位が馳浩 文部科学相(衆・石川1)が7回で衆院172位、4位が塩崎恭久 厚生労働相(衆・愛媛1)が5回で220位、5位が石破茂 地方創生担当相(衆・鳥取1)で4回(253位)、6位が遠藤利明 五輪担当相(衆・山形1)で3回(287回)。

7位は2回(衆320位・参233位)で4人、河野太郎 国家公安委員長兼行政改革担当相(衆・神奈川15)、高市早苗 総務相(衆・奈良2)、公明の石井 啓一 国土交通相(衆・比北関東)、岩城光英 法相(参・福島)が並び、ここまでが今回の閣僚のBest10となる。

ちなみに質問1回(衆363位・参254位)は3人、高木毅 復興相(衆・福井3)、森山裕 農林水産相(衆・鹿児島5)、丸川珠代 環境相(参・東京)、残りは質問0回となる訳だが、そもそも閣僚の場合、国会質問に立つ事ができない事を説明しておかなければならないほか、野党に比べて議員数の多い与党ではなかなか質問すら順番が回ってこないといった状況がある事も加えておきたい。

質問時間では1位:防衛相、2位:地方創生担当相、3位:厚生労働相

衆議院では質問回数のほかに質問時間についてもデータを取っているので見てみると、質問回数とは少し順位が異なってくる。

これは、回数は少ないものの1回1回の質問時間が長い質問を任されていた事を示すものになる。

1位は質問回数でも1位だった中谷元 防衛相(衆・高知2)が335分(134位)で独走。

2位は回数こそ少なかったが、石破茂 地方創生担当相(衆・鳥取1)が213分(158位)、3位は塩崎恭久 厚生労働相(衆・愛媛1)が205分(160位)、4位が高市早苗 総務相(衆・奈良2)が156分(191位)、5位が馳浩 文部科学相(衆・石川1)で140分(209位)と並び、ここまでが100分を超えた。

以下、6位が石井啓一 国土交通相(衆・比北関東)が85分(279位)、7位が遠藤利明 五輪担当相(衆・山形1)47分(339位)、8位が高木毅 復興相(衆・福井3)39分(354位)、9位が河野太郎 国家公安委員長兼行政改革担当相(衆・神奈川15)33分(359位)、10位が森山裕 農林水産相(衆・鹿児島5)29分(371位)と並ぶ。

参議院についてはデータがないので対象外になる。

ここまで、質問回数や質問時間といった国会議員データで今回の第三次安倍内閣の閣僚たちのこれまでの国会での活動を見てきたが、みなさんはどう感じただろうか。

“政策通”と言われている議員の印象や、「意外にあの議員がこんなに活動を」といった印象もあるかもしれない。

メディアが伝える印象と異なる見方をする一つの参考になればと思う。

“政策通”にもつながる議員立法を提案数最多は、防衛相・五輪担当相・経済産業相

2013年・2014年の2年間で、1度でも議員立法を提案した事のある議員は、衆議院では議員定数480人中204人、参議院は議員定数242人に対して91人しかいない。

立法府と言われる議会ではあるが、必ずしもどの議員もが立法活動を行っている訳ではないのだ。

しかもこの人数すら議員立法発議者として名前を連ねている議員でしかなく、実際には、この全ての議員が必ずしも議員立法の実務に関わっているわけではないことを考えると、「立法府」と言われながらも、実際に議員立法に携わっている議員は、本当に少ない事が分かる。

ただ、こうした中で、与党にいながら真面目に議員立法を提出している議員もおり、今回の第三次安倍内閣の中では、最も多くの3回の提出を行っているのが、中谷元 防衛相(衆・高知2)と、遠藤利明 五輪担当相(衆・山形1)、林幹雄 経済産業相(衆・千葉10)の3名だった。議員立法提出回数3回というのは、与野党を通じても積極的に活動している議員であり、全衆議院議員中の61位と非常に限られた積極的に議員立法も行ってきた議員である事が分かる。

この議員立法提案数については、次いで2回が、馳浩 文部科学相(衆・石川1)、高市早苗 総務相(衆・奈良2)で96位。

1回が塩崎恭久 厚生労働相(衆・愛媛1)、石破茂 地方創生担当相(衆・鳥取1)で128位と、政策通と言われている議員たちも多く含まれている。

最後に、NHKの国会中継などで見られるような口頭による質問とは別に、紙面によるもう一つの質問、質問主意書についても紹介しておきたい。

質問主意書は、議長に提出され承認を受けたのち、内閣に送られ、内閣は7日以内に文書による答弁書で答弁する事となっており、やむを得ず期間内に答弁できない場合でも理由と答弁できる期限を通知しなければならない事になっているものだ。

質問時間のように制限のないこの質問主意書の提出だが、残念ながら19人全閣僚が1度も行っていなかった。

今回は、こうしたメディアでは必ずしも報道されない国会議員の国会での活動についても関心を持ってもらおうと、内閣改造のタイミングで、閣僚にスポットライトを当てて、記事を書いてみた。

今年1月26日から245日に渡って行われた189通常国会が9月27日にようやく終えた。

このデータについても、また分析して、みなさんにご紹介できればと思っている。

【参考資料】<第三次安倍内閣閣僚の国会活動データ>

(衆議院)

▽首相=安倍晋三(山口4区) 質問時間数0分(413位)・質問回数0回(413位)・議員立法提出回数0回(205位)・質問主意書0回(63位)

▽副総理兼財務相=麻生太郎(留 福岡8区)質問時間数0分(413位)・質問回数0回(413位)・議員立法提出回数0回(205位)・質問主意書0回(63位)

▽総務相=高市早苗(留)質問時間数156分(191位)・質問回数2回(320位)・議員立法提出回数2回(96位)・質問主意書0回(63位)

▽外相=岸田文雄(留 広島1区)質問時間数0分(413位)・質問回数0回(413位)・議員立法提出回数0回(205位)・質問主意書0回(63位)

▽文部科学相=馳浩(石川1区)質問時間数140分(209位)・質問回数7回(172位)・議員立法提出回数2回(96位)・質問主意書0回(63位)

▽厚生労働相=塩崎恭久(留 愛媛1区)質問時間数205分(160位)・質問回数5回(220位)・議員立法提出回数1回(128位)・質問主意書0回(63位)

▽農林水産相=森山裕(鹿児島5区) 質問時間数29分(371位)・質問回数1回(363位)・議員立法提出回数0回(205位)・質問主意書0回(63位)

▽経済産業相=林幹雄(千葉10区) 質問時間数0分(413位)・質問回数0回(413位)・議員立法提出回数3回(61位)・質問主意書0回(63位)

▽国土交通相=石井啓一(公明 比例北関東)質問時間数85分(279位)・質問回数2回(320位)・議員立法提出回数0回(205位)・質問主意書0回(63位)

▽防衛相=中谷元(留 高知2区)質問時間数335分(134位)・質問回数30回(71位)・議員立法提出回数3回(61位)・質問主意書0回(63位)

▽官房長官=菅義偉(留 神奈川2区)質問時間数0分(413位)・質問回数0回(413位)・議員立法提出回数0回(205位)・質問主意書0回(63位)

▽復興相=高木毅(福井2区)質問時間数39分(354位)・質問回数1回(363位)・議員立法提出回数0回(205位)・質問主意書0回(63位)

▽国家公安委員長兼行政改革担当相=河野太郎(神奈川15区)質問時間数33分(359位)・質問回数2回(320位)・議員立法提出回数0回(205位)・質問主意書0回(63位)

▽経済再生担当相=甘利明(留 神奈川13区)質問時間数0分(413位)・質問回数0回(413位)・議員立法提出回数0回(205位)・質問主意書0回(63位)

▽1億総活躍兼女性活躍兼拉致問題担当相=加藤勝信(岡山5区)質問時間数0分(413位)・質問回数0回(413位)・議員立法提出回数0回(205位)・質問主意書0回(63位)

▽地方創生担当相=石破茂(留 鳥取1区)質問時間数213分(158位)・質問回数4回(253位)・議員立法提出回数1回(128位)・質問主意書0回(63位)

▽五輪担当相=遠藤利明(留 山形1区)質問時間数47分(339位)・質問回数3回(287位)・議員立法提出回数3回(61位)・質問主意書0回(63位)

(参議院)

▽法相=岩城光英(福島)質問回数1回(254位)・議員立法提出回数0回(92位)・質問主意書0回(67位)

▽環境相=丸川珠代(東京)質問回数1回(254位)・議員立法提出回数0回(92位)・質問主意書0回(67位)

▽沖縄・北方担当相=島尻安伊子(沖縄)質問回数8回(154位)・議員立法提出回数0回(92位)・質問主意書0回(67位)

<副大臣等>

(衆議院)

▽内閣官房副長官=萩生田光一(東京24区)質問時間数96分(261位)・質問回数4回(253位)・議員立法提出回数4回(40位)・質問主意書0回(63位)

▽復興副大臣=長島忠美(新潟5区)質問時間数0分(413位)・質問回数0回(413位)・議員立法提出回数2回(96位)・質問主意書0回(63位)

▽内閣府副大臣=高鳥修一(新潟6区)質問時間数102分(255位)・質問回数18回(116位)・議員立法提出回数0回(205位)・質問主意書0回(63位)

▽内閣府副大臣=松本文明(比例東京)質問時間数17分(392位)・質問回数1回(363位)・議員立法提出回数0回(205位)・質問主意書0回(63位)

▽総務副大臣=土屋正忠(東京18区)質問時間数203分(161位)・質問回数21回(104位)・議員立法提出回数4回(40位)・質問主意書0回(63位)

▽法務副大臣兼内閣府副大臣=盛山正仁(兵庫1区)質問時間数118分(230位)・質問回数5回(220位)・議員立法提出回数1回(128位)・質問主意書0回(63位)

▽外務副大臣=木原誠二(東京20区)質問時間数63分(313位)・質問回数4回(253位)・議員立法提出回数0回(205位)・質問主意書0回(63位)

▽外務副大臣=武藤容治(岐阜3区)質問時間数86分(276位)・質問回数4回(253位)・議員立法提出回数0回(205位)・質問主意書0回(63位)

▽財務副大臣=坂井学(神奈川5区)質問時間数26分(377位)・質問回数1回(363位)・議員立法提出回数0回(205位)・質問主意書0回(63位)

▽文部科学副大臣=義家弘介(神奈川16区)質問時間数229分(152位)・質問回数5回(220位)・議員立法提出回数0回(205位)・質問主意書0回(63位)

▽文部科学副大臣兼内閣府副大臣=冨岡勉(長崎1区)質問時間数79分(288位)・質問回数3回(287位)・議員立法提出回数1回(128位)・質問主意書0回(63位)

▽厚生労働副大臣=竹内譲(公明 比例近畿)質問時間数117分(233位)・質問回数7回(172位)・議員立法提出回数1回(128位)・質問主意書0回(63位)

▽厚生労働副大臣=とかしきなおみ(大阪7区)質問時間数50分(333位)・質問回数3回(287位)・議員立法提出回数0回(205位)・質問主意書0回(63位)

▽農林水産副大臣=伊東良孝(北海道7区)質問時間数63分(313位)・質問回数3回(287位)・議員立法提出回数1回(128位)・質問主意書0回(63位)

▽農林水産副大臣=齋藤健(千葉7区)質問時間数139分(213位)・質問回数6回(186位)・議員立法提出回数0回(205位)・質問主意書0回(63位)

▽経済産業副大臣=鈴木淳司(愛知7区)質問時間数116分(234位)・質問回数6回(186位)・議員立法提出回数0回(205位)・質問主意書0回(63位)

▽経済産業副大臣兼内閣府副大臣=高木陽介(比例東京)質問時間数86分(276位)・質問回数3回(287位)・議員立法提出回数3回(61位)・質問主意書0回(63位)

▽国土交通副大臣=土井亨(宮城1区)質問時間数31分(365位)・質問回数1回(363位)・議員立法提出回数0回(205位)・質問主意書0回(63位)

▽環境副大臣=平口洋(広島2区)質問時間数13分(404位)・質問回数1回(363位)・議員立法提出回数0回(205位)・質問主意書0回(63位)

▽環境副大臣兼内閣府副大臣=井上信治(東京25区)質問時間数0分(413位)・質問回数0回(413位)・議員立法提出回数0回(205位)・質問主意書0回(63位)

▽防衛副大臣兼内閣府副大臣=若宮健嗣(東京5区)質問時間数16回(397位)・質問回数1回(363位)・議員立法提出回数0回(205位)・質問主意書0回(63位)

(参議院)

▽内閣官房副長官=世耕弘成(和歌山)質問回数0回(281位)・議員立法提出回数0回(92位)・質問主意書0回(67位)

▽復興副大臣=若松謙維(比例)質問回数28回(55位)・議員立法提出回数0回(92位)・質問主意書0回(67位)

▽内閣府副大臣=福岡資麿(佐賀)質問回数5回(189位)・議員立法提出回数1回(55位)・質問主意書0回(67位)

▽総務副大臣兼内閣府副大臣=松下新平(宮崎)質問回数3回(215位)・議員立法提出回数0回(92位)・質問主意書0回(67位)

▽財務副大臣=岡田直樹(石川)質問回数4回(208位)・議員立法提出回数0回(92位)・質問主意書0回(67位)

▽国土交通副大臣兼内閣府副大臣兼復興副大臣=山本順三(愛媛)質問回数5回(189位)・議員立法提出回数0回(92位)・質問主意書0回(67位)

日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、神奈川県DX推進アドバイザー、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員。26歳で市川市議、全国若手市議会議員の会会長、34歳で松戸市部長職、東京財団研究員、千葉市アドバイザー、内閣府事業の有識者委員、NPO法人万年野党事務局長、株式会社政策工房研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員等を歴任。AERA「日本を立て直す100人」に選ばれた他、テレビ朝日「朝まで生テレビ!」等多数メディアに出演。著書に『世代間格差ってなんだ』(PHP新書)、『20歳からの社会科』(日経プレミアシリーズ)、『18歳が政治を変える!』(現代人文社)ほか。

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