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議員活動データで見る「民進党」の意外な実力 国民の”選択肢”となれるか?

高橋亮平日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

「民主党」は、なぜここまで嫌われたのか?

民主党と維新の党が合流した新党の名称が「民進党」に決定した。

世界の多くの国で社会状況や経済状況などによって政権が選択されていることを考えると、日本の政界に「選択肢」となる政党を用意しておくのは、国民本位で考えた場合、非常に重要なことだと思う。

民主党の岡田代表が、参院選に向けた選挙予想データを見て、民主党のあまりの不人気に驚き、今回の「改名」を決意したと噂されている。だが、事実はともかく、私の周りで聞く限りにおいても、「民主党」や「菅直人」というワードは、その存在以上に、国民の間での評価が低くなっている印象を受ける。

その理由については、「政権運営が果たせなかった」、「菅総理の震災対応が悪かった」などと指摘されるが、実際のところ、どの政策で誤ったのかについては、いまひとつよく分からない。

先日、「消費増税に転じさえしなければ、もう少し政権を維持できたのではないか」という意見をもらった。結局のところ、国民の懐を直撃する「増税」を行ったことがキーだったのかもしれない。

ただ、世代間格差の是正を求めてきた立場から見ると、持続可能な社会システムへの転換のためには、「増税」は社会保障改革と同じく大きな要素である。したがって、個人的には、菅総理、野田総理時代の英断や、実際に増税に踏み切った安倍総理については一定の評価をしている。

ただ、国民からしてみれば、自分たちの懐を痛める重大事をマニフェストにも掲げず、一気に増税へと転じた様は、まさに「裏切り」と感じたことだろう。また、その背景には財務省が描いたシナリオがあり、「脱官僚」を謳って政権を取った民主党の方針とは大きく異なる印象を受けたに違いない。

このあたりが、国民に痛みを強いながらも最後まで方針を貫いたことで支持率を保ち続けた小泉政権と大きく異なる点ではないだろうか。

しかし、この間に広がった民主党への失望は、国民の過度な期待にも原因があったように思う。2009年の政権交代時から、多くの方と話をする中で、「そんなことマニフェストで言ってたっけ?」と思うことが頻繁にあった。

また多くの誤解があった点として、選挙向けの「バラマキ政策」が随所に見られたこと、政権末期になって頻繁に言われるようになった「財源の明示」がなかったことも、見る人が見れば最初から分かっていたことだ。

【民主党政権政策Manifesto2009】

[file:///Users/ryohey7654/Downloads/manifesto_2009.pdf file:///Users/ryohey7654/Downloads/manifesto_2009.pdf]

ちなみに、世代間格差是正の立場から各政党マニフェストを精査した「若者度評価」においても、当時の民主党は、公明党どころか自民党よりも評価が低かった。

【各政党マニフェスト若者度評価(ワカモノ・マニフェスト)】

http://www.youthpolicy.jp/wp-content/uploads/2009/08/wakamonohyoukaweb.pdf

誤解を恐れず単純化して言えば、「だから民主党はもう信じない」というのもまた、「良く調べれば分かっていたことを、イメージに先導され過剰に期待した結果」とも言える。国民の民主党に対する過剰な評価もまた、イメージに先導されていた要素が強いのではないか、と思うわけだ。

こうした現象は、決して民主党に限った話ではない。経済政策一つを取ってみても、現在の安倍政権に対する評価が過剰に高い、という人はいないだろうか。

再び騙されることのないよう、表面的なイメージに流されず、しっかりと政策の中身を見て評価する必要がある。

「民進党」は国民の期待を受けて羽ばたけるのか?

1998年4月に結党された時点では、民主党の支持率はわずか3.0%だった。ちなみに2016年3月の最新の支持率は8.9%なので、この時を思えば、現在でもまだ3倍近い支持があることになる。

図表1:民主党結党以来の政党別支持率の推移

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結党4ヵ月後の8月には15.7%、選挙時の2000年7月には一時的には17.2%まで支持率は上がるが、基本的には一桁台が続いた。2003年11月に19.9%になって以降は、2004年7月に24.8%、2009年7月に26.4%、9月に34.6%で政権交代に成功し、直後の10月には39.7%で最高値を記録した。

その後は下降を続け、2014年7月には4.8%まで落ち込み、底を打ち、そこから少し回復して現在に至る。

ちなみに最新の2016年3月時点の支持率は、自民党37.9%に対して、民主党は8.9%、維新の党にいたっては0.2%しかない。単純計算で2党を足しても9.1%にしかならないわけだが、民主党が自由党と合併したいわゆる「民友合併」の際も、民主党9.2%、自由党1.0%しかなかったはずが、合併直後には約2倍の19.9%まで上昇している。

「騙されないように」と書いたばかりではあるが、「民進党」が、国民の期待の受け皿をどうつくるかによって、その後の評価は大きく異なってくるはずだ。その意味でも最初のイメージは最も重要な要素であり、単に名称変更にならないその「中身」と「陣容」の変化にも大きく期待したい。

衆議院では平均の2~3倍以上の仕事をしている民進党議員

国民の失望を買って大きく嫌われることになった民主党だが、中には優秀な議員も数多くいる。個人的な主観でお伝えしたい部分もあるのだが、今回は、あくまで客観的なデータ(189国会)をもとに紹介することにしたい。

まずは衆議院から。

図表2:衆議院議員一人当たり平均活動データ(189国会)

質問回数 議員立法 質問主意書

平均     4.8  0.4  1.0

民進平均  10.8  1.4  2.8

うち元民主 10.2  1.3  2.7

うち元維新 12.9  1.9  3.2

全衆議院議員の一人当たりの活動データの平均値は、国会質問回数が4.8回、議員立法提案件数が0.4件、質問主意書の提出件数は1.0件。

これに対して、民進党所属議員の一人当たり平均は、会質問回数が2.3倍の10.8回、議員立法提案件数が3.5倍の1.4件、質問主意書の提出件数も2.8倍の2.8件と、すべての活動データが平均の2倍から3倍以上であることが分かった。

内訳をみると、元維新の党所属議員は、会質問回数が12.9回、議員立法提案件数が1.9件、質問主意書の提出件数も3.2件と、さらに活躍していることも分かった。

図表3:衆議院議員活動データ政党別割合(189国会)

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昨年の通常国会である189国会時点のデータでは、合併して「民進党」となった民主・維新両党議員が、国会質問回数で43.8%、議員立法提案件数で68.3%、質問主意書は54.0%と他の政党を圧倒する結果となった。

ちなみに国会質問回数では、2位が共産党の15.0%、3位が自民党の14.6%、議員立法提案件数では、2位が自民党の10.6%、3位がおおさか維新の会の10.1%、質問主意書では、2位が無所属などその他の所属議員40.7%、3位は社民党の2.1%だった。

参議院では国会質問回数は平均以下。議員立法・主意書は2倍

参議院は状況が少し違った。

図表4:参議院議員一人当たり平均活動データ(189国会)

質問回数 議員立法 質問主意書

平均     9.9  0.5  1.8

民進平均   9.4  0.9  3.7

うち元民主  8.3  0.7  4.4

うち元維新 24.8  3.8  0.3

国会質問回数では、民進党の一人当たり平均が9.4回と全議員平均の9.9回を下回った。元民主党議員の平均8.3回で、一方の元維新の党議員の平均は24.8回と元民主議員の約3倍だった。

議員立法提案件数については全体平均0.5件に対して、民進党平均は0.9件と2倍近かった。ここでも元民主党議員が平均0.7件なのに対して、元維新の党所属議員は3.8件と、5.2倍の件数だった。

質問主意書提出件数に関しては、全体平均1.8件に対し民進党平均が3.7件と2倍以上なのだが、これまでと逆に元維新の党議員は平均の1/6の0.3件と極めて少なく、一方で元民主党議員は4.4件と圧倒的な多さだった。

図表5:参議院議員活動データ政党別割合(189国会)

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政党割合で見ると、議員立法件数は民進党が50.0%、質問主意書に至っては59.9%と他党を圧倒したが、質問回数については、1位ではあったものの24.2%だった。

ちなみに国会質問回数では2位が無所属などその他の23.7%、3位が自民党の13.5%、議員立法提案件数では、2位がその他の22.8%、3位が自民党の8.8%、質問主意書についても、2位が無所属などその他の所属議員の24.8%、3位は次世代の党の9.0%だった。

こうした国会での活動データで見ると、民進党議員たちはかなり活躍していることが分かる。

議員立法発議件数は全議員中トップ10が全て「民進党」

個々の議員の活躍についても見ていきたい。

まず衆議院からだが、民進党衆議院議員中で最も国会質問回数が多かったのは、全議員中でも2位だった元維新の井出庸生 議員(長野3)が41回でダントツだった。次いで2位が30回で高井崇志 議員(維新・比中国)、3位が山井和則 議員(民主・京都6)の26回、4位が玉木雄一郎 議員(民主・香川2)の24回、5位が井坂信彦 議員(維新・兵庫1)の23回と並んだ。

山井議員は質問主意書でも18件で5位、玉木議員は議員立法でも9件で3位、井坂議員は27件で4位と、いずれもと2部門でベスト10に入った。

今回、2部門でベスト10に入ったのは、他に、質問回数が23回で5位、質問主意書が43件で1位だった緒方林太郎 議員(民主・比九州)、質問回数が20回、質問主意書が39件で2位だった初鹿明博 議員(維新・比東京)がいる。

また、女性では、質問回数20回で、阿部知子 議員(民主・比南関東)と、山尾志桜里 議員(民主・愛知7)が10位に入った。

特に驚いたのは、議員立法発議件数の全議員中ベスト10が全て民進党議員だったことだ。質問回数でもベスト10に4人、質問主意書についてもベスト10に7人と、こうしたデータの上位を民進党議員が占めた。

また、議員立法発議件数のベスト3は、今井雅人 議員(維新・比東海)が11件で1位、柿沢未途 議員が(維新・東京15)が10件で2位、江田憲司 議員(維新・神奈川8)が9件で3位と、3人入ったのをはじめ、質問回数でもベスト3に元維新議員が2人、質問主意書でもベスト3に2人と、維新出身議員の活躍が目立った。

図表6:衆議院 民進党質問回数ランキング(189国会)

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図表7:衆議院 民進党議員立法件数ランキング(189国会)

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図表8:衆議院 民進党質問主意書件数ランキング(189国会)

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参議院では議員立法も質問主意書もベスト3を「民進党」が独占

参議院の質問回数では、1位が寺田典城 議員(維新・比例)の28回、2位が柴田巧 議員(維新・比例)の25回、同点3位で24回の石橋通宏 議員(民主・比例)と小野次郎 議員(維新・比例)が並んだ。

議員立法発議件数でも柴田議員が5件で3位、小野議員が9件で2位となり、そろって2分野でのランクインとなった。

参議院では2分野でランクインした議員が多く、他にも、質問主意書の提出件数が73件で全議員中でも1位だった小西洋之 議員(民主・千葉県)と53件で2位だった藤末健三 議員(民主・比例)が、質問回数でも共に16回で6位に入ったほか、質問主意書が24件で4位だった大久保勉 議員(民主・福岡県)が議員立法でも2件で7位に入った。

女性の活躍も目立った。

質問主意書が30件で3位だった牧山ひろえ 議員(民主・神奈川県)と3件で10位だった徳永エリ 議員(民主・北海道)が共に質問回数でも15回で10位に入って2分野でランクインしたほか、質問主意書提出件数が7件で9位に西村まさみ 議員(民主・比例)、3件で10位に神本美恵子 議員(民主・比例)も入った。

参議院では議員立法発議件数と質問主意書提出件数、いずれも全議員の中のベスト3が全て民進党議員であったほか、質問主意書の民進党中のベスト10が全て民主党出身議員というのも特徴的だった。

今回、あらためて「民進党」に着目してみたが、民進党の中にも、国会を代表するような能力の高い、また熱い志を持った議員がいる。先入観を持たずに、今後の日本の行く末を考えた際に、国民の「選択肢」となる政党に、国民全体で育てていくとともに、私たち自身も有権者として育っていかなければならないのではないか。

図表9:参議院 民進党質問回数ランキング(189国会)

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図表10:参議院 民進党議員立法件数ランキング(189国会)

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図表11:参議院 民進党質問主意書件数ランキング(189国会)

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日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、神奈川県DX推進アドバイザー、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員。26歳で市川市議、全国若手市議会議員の会会長、34歳で松戸市部長職、東京財団研究員、千葉市アドバイザー、内閣府事業の有識者委員、NPO法人万年野党事務局長、株式会社政策工房研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員等を歴任。AERA「日本を立て直す100人」に選ばれた他、テレビ朝日「朝まで生テレビ!」等多数メディアに出演。著書に『世代間格差ってなんだ』(PHP新書)、『20歳からの社会科』(日経プレミアシリーズ)、『18歳が政治を変える!』(現代人文社)ほか。

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