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バスケ王国アメリカ。今の強さは10年前の苦い経験を糧に生まれた

青木崇Basketball Writer
3連覇を果たしたアメリカ(写真:ロイター/アフロ)

グループ戦で辛勝という試合もあったが、リオ五輪でのアメリカ3連覇は大方の予想どおり。決勝でセルビアを30点差で破るあたりは、他国との間に力の差があることを示すものだった。

2002年の世界選手権で6位、2004年のアテネ五輪で銅メダルに終わったアメリカは、2006年からジェリー・コランジェロが最高責任者、マイク・シャシェフスキー(コーチK)がヘッドコーチという体制をスタート。キャンプで競争させての選手選考など、チーム作りに必要なプログラムを構築し、継続させることで強いアメリカを取り戻そうとした。新体制にとって最初の国際大会となった2006年の世界選手権では、アテネで苦い経験をしたレブロン・ジェームス、ドウェイン・ウェイド、カーメロ・アンソニーを軸に、NBAと違うFIBAのスタイルで戦うことを受け入れ、時差対策も怠らないなど、きちんと準備してきたつもりだった。

しかし、今から10年前の2006年9月1日、さいたまスーパーアリーナで行われた準決勝で、アメリカは96対101でギリシャに敗北。コーチKが先月「あれはコーチ人生の中で最も落胆した」と振り返った試合の敗因は、ギリシャのハイピック&ロールに対し、ディフェンスで止める術がなかったことに尽きる。チーム・ケミストリー(調和)の構築を重要視していたアメリカだったが、相手チームのスカウティングで準備不足を露呈した。

その反省を踏まえ、北京五輪の予選となるアメリカ大陸選手権を前に、アメリカは世界各地のバスケットボールに精通していたピストンズの国際スカウト(当時)だったトニー・ロンゾーニを招聘。国際大会に出てくる代表クラスの選手であれば、個々の強みや弱み、プレイにおける癖を熟知していた。そんなロンゾーニが相手コーチが持つ戦略を含めたスカウティングレポートを作成し、それを基にコーチ陣がゲームプランを立て、すばらしい能力を持つ選手たちがコート上で遂行する。これらをきちんとできれば負けないことは、北京五輪、2010年の世界選手権、ロンドン五輪の結果で証明された。

2014年のワールドカップでは、バルセロナとアトランタで五輪の銅メダルを獲得した元リトアニア代表のアルトゥラス・カルニショバスがロンゾーニの後を引き継ぎ、リオ五輪はロケッツのジャーソン・ロサスが担当。グループ戦で対応に苦しんだセルビアの司令塔、ミロス・テオドシッチを決勝で9点、3アシストに限定させたのは、正にスカウティングの賜物であり、勝つための入念な準備してきた証と言えるものだった。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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