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昨シーズンの鬱憤を晴らし、Bリーグ開幕戦で本領を発揮した富樫

青木崇Basketball Writer
仙台との開幕戦に快勝後、笑顔で取材に対応する富樫(写真:アフロスポーツ)

昨年夏、出場機会が限定されることが決定的となったイタリアのディナモ・サッサリとの契約を解除した富樫勇樹は帰国後、千葉ジェッツでプレイすることを決断。しかし、シーズン途中で解任されたジェリコ・パブリセビッチコーチの戦術にプレイスタイルがフィットしないため、ベンチを温める時間も多かった。しかし、今シーズンから指揮を振るう大野篤史コーチの「ポイントガードだからゲームメーカーになれ、とは言っていない。彼を起点にバスケットをやりたい」という言葉どおり、ジェッツは仙台89ersとの開幕戦で富樫を最大限生かすオフェンスを展開していた。

富樫の持ち味はペネトレイトからのフローター、3Pラインの数mうしろからでも決められるシュートレンジの広さなど、167cmというサイズの不利をカバーできる得点力だ。3年前の秋田ノーザンハピネッツ在籍時に何度も対戦している89ersの志村雄彦が「やられすぎました」と振り返ったように、7分38秒を皮切りにわずか3分18秒間で3本の3Pシュートを決めるなど、富樫は第1クォーターだけで11点をマーク。ジェッツが21対9と主導権を握り、19点差で快勝する原動力となった。

第2クォーター以降シュートの当たりが止まったと言え、ピック&ロールからチームメイトの得点を何度もクリエイト。第4クォーター4分33秒にヒルトン・アームストロングが叩き込んだダンク、1分19秒に原修太が決めた3Pシュートは、富樫の強みであるピック&ロールからのアシストで生み出されたものだった。バスケットボールで最も単純なプレイと言われながらも、ピック&ロールはディフェンス対応が非常に難しいプレイ。クイックネスを武器にする富樫がボールを保持し、元NBA選手のアームストロングがスクリーンをかける役となって展開されるピック&ロールは、まちがいなくジェッツの大きな武器になるだろう。

「ある程度自由を与えてもらっているので、本当にやりやすいし、ヒルトンはピック(スクリーン)がうまい」と語ったように、今シーズンの富樫は、昨シーズンのフラストレーションを晴らすような活躍が今度も期待できそう。そして、希望している海外でプレイを実現させるためにも、スコアリングガードとして強烈なインパクトを残さなければならないことは、自身がいちばんわかっている。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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