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津山がB1で直面した迷いとの戦いは、レベルアップするためのプロセス

青木崇Basketball Writer
今季中盤から持ち味を発揮できない状況に直面中の津山 (C)B.LEAGUE

福岡大附大濠高から大学に進まず、琉球ゴールデンギングス入りでプロのキャリアをスタートした津山尚大は、シュート力を武器に昨季のbjリーグ制覇に貢献。しかし、プロ3シーズン目となる今季は、レベルの上がったB1で能力を発揮できない試合も増え、出場時間10分以下が2月以降で4回を数える。伊佐勉コーチは、「スコアする能力はチームでも1、2位だと思います。どんどんアグレッシブに、変な話、ミスしても全然いいと思いますし、やってもらいたいなと思います」と語る一方で、津山を迷わせてしまっていると口にしていた。迷っている原因は何か? と津山に聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「点を取れることは去年から証明できたと思うんですけど、今年は3シーズン目ですし、ガードの要素も少しずつ加えていかないと、チームとしても戦力アップにならない。ピック&ロールを多く使ってチャンスを作れと言われたときに、千葉(ジェッツ)戦の土曜日はまあうまく作ることができたと思うんです。2日目にもチャンスを作れと言われましたが、逆に点を取りに行くことを忘れている時間帯があって、チャンスを作れと言われて迷いましたね」

3月12日の横浜ビー・コルセアーズ戦、2Q中盤からの約2分半で3P2本を含む8点を奪った時間帯は、津山らしい思い切りのよさが見られ、チームが前半最大で15点のリードを奪う原動力となって勝利に貢献。それでも、「正直自分が全然満足していないし、スリーはノーマークならば決めるものと自分の中で思っているので、あのスリー2本も速攻からのレイアップも仲間に演出されたプレイだった。自分自身チャンスを作れていなかったから、満足はしていないですね」と、津山は納得していない。

3Pシュートには絶対に自信を持っている津山 (C)B.LEAGUE
3Pシュートには絶対に自信を持っている津山 (C)B.LEAGUE

迷いの要因を突き詰めていくと、持ち味である積極的に得点を狙うときと、チャンスを作ることのバランスを保つことの難しさに直面しているのは明らか。また、今季の琉球ではボールを運ぶ機会が少ないため、なかなかリズムをつかめないまま試合が進んでいるようにも見える。ボールをもらった瞬間にアタックする姿勢をもう少し見せたらという問いに対しては、「アグレッシブに行くことが必要だと僕も思いますけど、それを若さだから思い切りがいいねと言われるのではなく、状況判断がいいねと言われるプレイ、状況判断にこだわったプレイがしたいです」と返答する。しかし、それをコート上で表現するには、一貫した出場時間を得られていない現状だとなかなか厳しい。

伊佐コーチからミスを怖がるなとアドバイスされていると言う津山だが、「プレイタイムが刻み刻みのときって、やっぱり(ミスが)怖いですよね。凡ミスしたら交代させられるじゃないかという恐怖心はあります」と、消極的なプレイに陥りやすい現状を理解している一方で「それに打ち勝っていかないとプレイタイムをもらえない」という危機感も持っている。向上させなければならない課題は? と改めて質問してみると、シュートが打ちやすい位置でもらえるかというオフボールの動きとともに、「ミスの恐怖心に勝つことですね」と口にする。

琉球は岸本隆一が不動の先発ポイントガードとして存在するだけでなく、今季から渡辺竜之祐も加入。津山が出場時間を得るためには、チーム内の競争で成果を出していくしかない。現在直面している迷いとの戦いは、スコアリング・ポイントガードとして強烈な存在感を示し、Bリーグのミッションである「世界に通用する選手やチームの輩出」を実現した選手となるためのプロセスでしかない。横浜戦後の「責任と自信を持ってどんどんプレイさせてあげたい」という伊佐コーチの言葉は、津山に対して今も大きな期待を寄せている証。今季の残り15試合とその間の練習は、20歳になった津山の将来を左右する可能性を秘めた重要な時期と言っていいだろう。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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