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度重なる公営競技での違法賭博:ファンは不買も辞さぬ構えで臨むべき

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

この問題は先日のエントリで取り上げたばかりなのですが、また公営競技における違法賭博問題が発覚した模様です。以下、東スポより転載。

園田競馬厩務員が馬券購入で逮捕

http://www.tokyo-sports.co.jp/nonsec/social/531286/

兵庫県警尼崎東署は15日、競馬法違反(馬券購入)容疑で、園田競馬場所属の厩務員、小原正伸(こはら・まさのぶ=50、山本和之厩舎)を逮捕した。昨年12月、ネット投票で地方競馬の馬券を計5万8100円分購入した疑い。尼崎東署によると所属厩舎の競走馬が出走したレースの馬券も複数含まれていた。

昨年12月といえば、先にご紹介した北海道ばんえい競馬場で騎手および厩務員による同様の違法な馬券購入問題が発覚した月です。元々このばんえい競馬場の事件自体が前代未聞の大不祥事であったワケですが、その大騒動の最中、園田競馬場においても同様の違法な賭博行為が発生していたというのは、もはや看過できない状態にあるといえましょう。

これは先のエントリでもご紹介した事ですが、我が国の各公営競技法は競技関係者が自らの所属する競技の投票券を購入することを明確に禁じています。これは、競技の公平性を担保し、またファンからの信用失墜を防止する為の業界人としての倫理規定です。逆にこれを守れないとなれば、ファンからは即、八百長行為の存在が疑われてしまうワケで、ただ単に「不届き者を罰せよ」では業界的には済まされない問題であると言えます。

ところが、昨年発覚したばんえい競馬での問題対応は、競技施行者である帯広市も、そしてそれを監督する立場にある農水省も、一連の問題はあくまで不届きな個人による法令違反行為であり、運営側には瑕疵責任がないという立場を貫いています。以下は、当問題を扱った帯広市議会での答弁内容。

平成28年1月15日 帯広市議会 産業経済委員会

◆5番(熊木喬委員)

こういった事件が起きて監督官庁へこの防止策というものを出されて、帯広市のこの防止策というのは私の感じるところによりますと、これは帯広の危機管理能力というのが問われてると思うんですよね。その中で果たして今の内容で監督官庁である農林水産省がどのような判断をされるのかなというふうに正直言って不安を感じます。そういった中で、例えば今回のこういった不祥事に対しペナルティーという可能性はないのでしょうか。

◎佐藤徹也ばんえい振興室長

今回の競馬法違反の疑いの関係で、農林水産省から帯広市に対する処分ということでございますが、私ども農林水産省の監督課から伺っているところでは、今のところ今回の事案が帯広市のそういった瑕疵といいますか、そういったものであるということではないということから、開催の自粛だとかそういったペナルティーについては今のところ考えていないということで伺っております。

一方で、上記帯広市議会における審議の中では、一部議員から「騎手や厩務員の待遇が悪いからこのような問題が発生するのだ」などとして、逆に彼らの待遇改善を要求するという謎な行動も行われています。

北海道の地場産業たる競馬関係者というのは実は同地において妙な発言力を持っているのも事実でありまして、恐らくその辺の意向を受けた議員による発言であろうとは容易に想像されます。ただ、一連の不正を糾弾し、再発防止策の徹底を求める審議の中、「返す刀」で関係者の待遇改善を要求するのは、幾らなんでも「スジ悪」な論法。流石にこれには「盗人に追い銭」批判を受けても仕方がないのではないかなと個人的には思います。

◆5番(熊木喬委員) 経験値と言われたらそれまでなんですけどね。

それで、一部の報道で騎手、厩務員の待遇に触れるというものがございました。今回のこの一連の不祥事に対してその待遇面という報道もございましたけれども、主催者としてそれをどのように認識されているのかを伺いたいと思います。

◎石田智之ばんえい振興室主幹 今回の勝馬投票券の購入制限違反の疑いということは、競馬界におきまして前代未聞の重大な不祥事であるということで認識しており、また重く受けとめてございます。今回の待遇に関して、私どものほうでは今時点では待遇が悪いからこういうような事案が発生したというような認識ではございません。以上でございます。

◆5番(熊木喬委員) わかりました。

帯広の認識としては、今の調教師さん、厩務員さん、そういった関係者の待遇について、決して低いと思っていないという御答弁でよろしいんでしょうか。(「いや、違います」「そうは言ってない」と呼ぶ者あり)

そういった中で、これまで何度かこのばんえい競馬の存続についてお話をさせていただく中で、生産馬の確保ということを何度か質問させていただきました。そういった面では今回さまざまな問題になっておりますけれども、厩務員、騎手、そういった中のそういった人材の確保ということも必要になってこようかと思っておりますけれども、そういった意味でかなり帯広の関係者は年齢的に高いというようなお話も聞いたことがございますけれども、この人材の育成、若手の育成を行うには、先ほども申し上げましたけれども、待遇といったものがある程度見直しも必要になってくるのかな、そういった将来的な希望ですとかというものがない限り、なかなかそういった職についていただける方がいないということで、そういった中でこの12月の補正予算の中で報償費等も組まれたわけでございますけれども、その内容等について例えば騎乗手当ですとか調教手当といったものも含まれたものというふうになっているのかお伺いしたいと思います。

◎石田智之ばんえい振興室主幹

このたびの12月補正で3,000万円を増額させていただいておるところでございます。この内訳といたしまして、賞金で1,399万4,000円の増額、このほかに調教奨励金といたしまして一律500円の増額、騎乗奨励金一律1,000円の増額、厩務員奨励金を1レースごと1人当たり700円ずつ増額しております。(「給料が安いから事件が起こったという部分をもっと説明したら」と呼ぶ者あり)

先ほど説明不足がございました。私どもの考えといたしましては、今回の不祥事に関しましては厩舎関係者の処遇が悪いということで事件が起きたという認識ではないという考えでございます。以上でございます。

一方、先からの繰り返しになりますが、競馬法が定める競馬関係者の投票券購買の禁止は、競技の公平性を担保し、ファンからの信用失墜を防止する為の業界人としての倫理規定であり、単に「不届き者を罰せよ」では業界的には済まされない問題です。

一連の問題に対して行政や議会側がこのような対応に始終するのであれば、残された選択肢はファン側からこのような不正行為に対して「ノー」を突きつけるしかない。競馬ファン側は不買運動も辞さない構えで一連の問題に対して、監督官庁および施行者に対してプレッシャーをかける必要があると言えるでしょう。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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