Yahoo!ニュース

すべてのギャンブラーに朗報:外れ馬券「システム投資以外」でも経費-東京高裁

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

多くのギャンブラーにとって、朗報が届きました。以下、時事通信より転載。

二審は経費算入認める=外れ馬券、北海道の男性勝訴―東京高裁

http://news.yahoo.co.jp/pickup/6198632

競馬の外れ馬券の購入費を経費と認めず、6年間で所得税など約1億9400万円を追徴課税したのは違法だとして、北海道の男性が国に課税処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が21日、東京高裁であった。

菊池洋一裁判長は、訴えを退けた一審東京地裁判決を取り消し、男性側の逆転勝訴を言い渡した。外れ馬券購入費の経費算入をめぐっては、最高裁が昨年3月、「購入期間や回数、頻度などを総合考慮して判断する」との基準を示し、コンピューターの自動購入ソフトを使っていたケースで算入を認めていた。

外れ馬券に関しては、昨年3月に大阪在住の男性が最高裁より「経費算入化」を認める判決を得ていましたが、当時の判断はコンピュータによる解析を使用しシステム的な投票手法を用いたことが、証券市場におけるシステム投資と同一の性質ものとして判断された「特別な事例」として扱われたものでありました。

一方、今回の北海道在住の男性が東京高裁において獲得した判断は、先の大阪の男性が行っていたシステム投資的な手法を用いない場合においても、「独自のノウハウをもって網羅的な取引を行い、恒常的に所得を得ている」場合には外れ馬券が経費に算入しうるというものであり、この判断は多くのギャンブル愛好家に対しても適用できる可能性があるものとなります。(但し、前提としてそこから「恒常的な所得を得る」ことの証明が必要なので、ヘボギャンブラーには適用されないが)

更に言えば、当然ながらこの経費算入の考え方は競馬以外の全てのギャンブルにも適用しうるものとなるワケで、ギャンブル愛好家の皆様はこれから先の「賭け」に関しては、いざという時に支払いが証明できるようにその履歴を残しておくことが吉。公営競技ならば窓口購入ではなく電子投票を行う方が良いですし(但し、電子投票履歴は、規約上、一定期間しか保持されないのでプリントアウトでの独自保存が必要)、パチンコなら各台計数システムを利用した方が後の納税面においては有利になる可能性がある。海外カジノにおいても、クラブ会員システムへの登録を行っているプレイヤーに関しては、事業者側から「Win/Loss Statement」と呼ばれる年間収支の証明が発行可能な場合があります。(加えて、現地で所得税を払っている場合は外国税額控除が受けられる)

昨年争われた大阪在住の男性の裁判を先例に見ると、ほぼ間違いなく国税局は最高裁まで裁判を争うものと思われ、これで判決が確定するとは思いませんが、全てのギャンブル愛好家にとって朗報となるこの裁判の経過に引き続き注目して参りたいと思います。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

木曽崇の最近の記事